「アメリカに自社の商品を輸出したいけれど、何から手をつければいいかわからない」
「取引先から『FDA登録を済ませてほしい』と言われた。でも、英語の専門用語ばかりで何のことかさっぱり……」
「手続きを間違えて、商品がアメリカの港で差し止められたらどうしよう……」
アメリカという巨大な市場を前に、こうした不安を感じるのは当然のことです。
日本酒の酒蔵、菓子・調味料・加工食品のメーカー、その経営者・販売担当の方も、同じ不安を感じながら最初の一歩を踏み出しています。
この記事では、アメリカへの輸出手続きを専門とする行政書士が、「FDA登録とは何か」という基本から、実務でつまずきやすいポイントまでをわかりやすく解説します。
この記事を「案内板」として使いながら、関連する個別記事もあわせてご確認いただくことで、アメリカ輸出の全体像がつかめるようになります。
【この記事でわかること】
この記事では、
・FDA登録とは
・対象となる事業者
・対象となる食品
・日本酒輸出との関係
・FDAエージェント(代理人)
・更新手続き
・Prior Notice
を解説します。
【食品商社勤務経験者からのアドバイス:実務のポイント】
FDAエージェント(代理人)を指定する(見つける)ことからFDA登録がスタートします。
その後の成約を見通せるので、バイヤーに紹介していただくのがベストです。
目次
1.結論:アメリカ輸出ではFDA登録は必須
2.FDA登録の流れ
3.どんな事業者が対象か
4.対象商品
5.日本酒は必要か
6.FDAエージェント(米国代理人)
7.更新
8.Prior Notice とは
9.よくあるミス・関連記事・よくあるご質問
10.実務記事
11・事例記事(ケーススタディ記事)
まとめ・次のステップ
1.結論:アメリカ輸出ではFDA登録は必須
まず、結論からお伝えします。
日本酒・加工食品・菓子・調味料などをアメリカに輸出する場合、その食品を作ったり保管したりする「施設」を、あらかじめFDAに登録することが法律で義務付けられています。
登録するのは「商品」ではなく「施設」です。工場や倉庫など、食品を扱う場所そのものを登録します。
もし登録のない施設で作られた食品をアメリカへ送ると、現地の港に届いても通関できません。差し止めや廃棄になることもあります。
アメリカ輸出を成功させるための、最初の、そして最大の条件。それが「FDA施設登録」です。
2.FDA登録の流れ
■ FDA登録とは:アメリカ市場への「通行証」
FDA(U.S. Food and Drug Administration)は、アメリカの政府機関です。日本語では「連邦食品医薬品局」といいます。
日本でいえば、厚生労働省と農林水産省の一部を合わせたような役割を持つ機関です。食品や医薬品の安全を厳しく管理しています。
2002年に制定された「バイオテロ法」という法律により、アメリカで消費される食品を扱う全ての施設には登録が義務付けられました。
食品事故が起きたとき、どこで作られたものかをすばやく追跡できるようにするためです。
登録のない施設からの輸入は、アメリカの法律上「禁止行為」とみなされます。
■ 手続きの流れ:4つのステップ
FDA登録を済ませて実際に商品を出荷するまでには、大きく分けて4つのステップがあります。
ここでは概要をご紹介します。各ステップの詳しい解説は、個別記事でご確認ください。
【ステップ1】DUNS番号の取得
FDA登録には、施設を特定するための9桁の企業コード「DUNS番号(ダンズ番号)」が必要です。
この番号に登録されている「英語の社名・住所」と、FDAへの申請情報が1文字でも違うと、登録が却下されます。最初の土台となる重要なステップです。
【ステップ2】米国代理人(U.S. Agent)の選定
アメリカ国外の施設が登録する場合、アメリカ国内に住んでいる「米国代理人」を必ず1人指定しなければなりません。
米国代理人は、FDAから連絡が来たときの窓口です。査察(立ち入り検査)の調整も行います。輸出の「命綱」ともいえる存在です。
【ステップ3】2年に1度の登録更新
FDA登録は、一度すれば終わりではありません。「西暦の偶数年の10月1日〜12月31日」の間に、必ず更新手続きが必要です。
更新を忘れると、年が明けた1月1日に登録が自動的に無効になります。
【ステップ4】出荷ごとの事前通知(Prior Notice)
商品を発送するたびに、荷物がアメリカに到着する前にFDAへ電子通知を行う必要があります。
ここに施設登録番号を正しく入力しないと、港で荷物が止められます。
3.どんな事業者が対象か
「うちは小さな工場だから関係ないだろう」
「サンプルを数本送るだけだから大丈夫では?」
こうした思い込みは禁物です。
FDAが「食品施設」と見なす範囲は、想像より広くなっています。
・製造・加工業者
食品を実際に造っている工場や酒蔵がこれにあたります。
・梱包業者
食品を容器に詰めたり、ラベルを貼ったりする施設も対象です。
・保管施設(倉庫)
意外と見落とされがちですが、輸出を待つ商品を保管する倉庫も登録が必要です。
自社の倉庫でも、外部の倉庫を借りている場合でも同様です。
また、「商業用サンプル」や「市場調査用サンプル」であっても、FDA登録は例外なく必要です。
貴社の商品が一口でもアメリカ人の口に入る可能性があるなら、それは「登録された施設」で扱われていなければなりません。
4.対象商品
FDAが管轄する「食品」の範囲は非常に広いです。以下のようなものが含まれます。
加工食品:精米、ドライフルーツ、カット野菜、乳製品など
菓子・パン:クッキー、チョコレート、スナック菓子など
調味料・原料:醤油、味噌、ソース、食品添加物など
飲料:清涼飲料水、ミネラルウォーター、アルコール飲料
サプリメント:栄養補助食品
ペットフード:動物向けの飼料
※生肉・一部の肉加工品・卵製品などは、主にUSDA(農務省)という別の役所が管轄します。
ただし、それ以外のほぼすべての飲食物はFDAの管轄と考えて間違いありません。
5.日本酒は必要か
「日本酒はお酒だから、FDAは関係ないのでは?」
よくいただく質問です。
しかし、答えは「関係あります」です。
アメリカの法律上、日本酒は「食品」に分類されます。
たしかに、ラベルの承認や酒税についてはTTB(酒類・タバコ税貿易管理局)という別の役所が担当します。
しかし、「施設の登録」と「輸入前の事前通知」については、FDAのルールが適用されます。
したがって、日本酒の酒蔵も、FDA施設登録を行い、11桁の登録番号を取得することが必要です。
スパークリング日本酒やリキュールなど、種類によってはさらに別の登録(FCE/SID登録)が必要になるケースもあります。
6.FDAエージェント(米国代理人)
日本にある施設がFDA登録を行う場合、アメリカ国内に拠点を持つ「米国代理人(U.S. Agent)」を1名指定することが義務付けられています。
要するに、「FDAと施設の間をつなぐ、アメリカ国内の連絡窓口」です。
米国代理人の主な役割は次の3つです。
① 緊急時の連絡窓口
食品事故などが起きた際、FDAが真っ先に連絡する相手です。
② 査察スケジュールの調整
FDAが日本の工場に立ち入り検査(査察)に来る際、日程調整を仲介します。
③ 再査察手数料の支払い義務
もし施設が「再査察」の対象になった場合、1時間あたり373ドル(2025年度)という費用を支払う法的義務を負うのは米国代理人です。
米国代理人は、ただ名前を貸してもらうだけの形式的な存在ではありません。
いざというときに確実に機能する相手を選ぶことが、輸出ビジネスを守ることに直結します。
7.更新
更新:2年に1回、必ず必要です
FDA登録は、一度済ませれば永久に有効というわけではありません。
西暦の偶数年(2024年、2026年……)の10月1日〜12月31日の間に、必ず更新手続き(継続宣言)を行う必要があります。
この期間内に更新をしなかった場合、登録は翌年1月1日に自動的に「失効(抹消)」されます。
失効に気づかないまま商品を出荷してしまうと、現地で通関が拒否されます。
多額の保管料・廃棄コストが発生するだけでなく、バイヤーからの信頼を失うことにもなりかねません。
「更新し忘れ」は最もよくあるミスの一つです。カレンダーへの登録など、管理の仕組みづくりが重要です。
8.Prior Notice(事前通知)とは
実際に商品をアメリカへ発送する際には、荷物がアメリカに到着する前に、FDAへ電子的に通知を行う手続きがあります。
これを「Prior Notice(プライアーノーティス=事前通知)」といいます。
この通知を行う際、FDA施設登録で取得した「11桁の登録番号」を正確に入力することが求められます。
適切に通知が行われない場合、荷物はアメリカの港で留置されます。
「登録はしたが事前通知を知らなかった」というケースも少なくありません。
登録と事前通知はセットで理解しておきましょう。
9.よくあるミス・関連記事・よくあるご質問
■ よくあるミス:これだけでビジネスが止まります
専門家に相談せず自社で手続きを進めた場合、次のようなミスで輸出がストップするケースが後を絶ちません。
① 更新を忘れて「1月1日に無効」になる
前任担当者が辞めていて、更新時期を誰も把握していなかった——という失敗が非常に多いです。
② 米国代理人と連絡が取れなくなる
バイヤーに紹介された代理人に頼んだところ、取引終了後に連絡が途絶えた。そのまま重要な査察通知を見逃し、「ブラックリスト入り」になった事例があります。
③ 「倉庫は対象外」だと思い込む
工場は登録したのに、出荷待ちの倉庫が未登録で通関拒否——このパターンは意外と多いです。
④ DUNS番号と申請情報の不一致
「Co., Ltd.」を「Co Ltd」と書くなど、スペース1つ・ピリオド1つの違いでシステムに弾かれることがあります。
⑤ 「お酒だからFDAは無関係」という誤解
アルコール飲料も、施設登録はFDAの管轄です。
これらのミスは、多額の保管料や廃棄コストを招くだけでなく、アメリカのバイヤーからの信頼を失うことにもつながります。
■ 関連記事:
・DUNS番号の取得とは?
・米国代理人(U.S. Agent)の選定とは?
・2年に1度のFDA登録更新
・出荷ごとの事前通知(Prior Notice)とは?
■ よくあるご質問(FAQ):
・アメリカではお酒の免許は、輸入と卸売で別々なの?
・商社でもFDA登録は必要か?
・米国代理人の国籍は米国でないとダメ?
・OEM委託先のFDA登録は必要か?
OEM委託先と倉庫はFDA登録必要です
・日本酒にFDA登録は必要か?
・スパーリング日本酒、リキュールに必要なFCE/SID登録とは?
・アルコール25度以上のお酒をアメリカに輸出できるの?
・FDAとFSVPの違いは?輸出のToDoリストはあるの?
・水産物をアメリカに輸出できるの?
・Prior Notice(事前通知)での通知内容は?
10.実務記事
11.事例記事(ケーススタディ記事)
まとめ・次のステップ
いかがでしたでしょうか?
FDA登録には、いくつかの大切なポイントがあります。
✔登録するのは「商品」ではなく「施設」
✔酒蔵もFDA登録が必要
✔米国代理人の選定は慎重に
✔2年に1度の更新を忘れずに
✔事前通知(Prior Notice)とセットで運用する
一つひとつは決して難しいものではありません。
ただ、英語のシステムを使った手続きや、刻々と変わる規制への対応は、日々の業務と並行しながら行うのは容易ではないのも事実です。
アメリカ輸出への挑戦は、正しい知識と準備があれば、決して難しいものではありません。
とはいえ、
「自社の登録が今も有効かどうか確認してほしい」
「DUNS番号の英語表記をどうすればいいか教えてほしい」
「スパークリング日本酒やリキュールに追加の登録が必要か判断してほしい」
といったご相談は、専門家にお任せいただくのが確実です。
当事務所では、FDA登録の新規申請から2年ごとの更新管理、査察対応のサポートまで、輸出商社・製造業者の皆様を専門的な立場からお手伝いしております。
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