「アメリカのバイヤーと準備を進めて、ようやくFDA登録までたどり着いた」
「お酒の種類も確認したし、DUNS番号も米国代理人も揃っている」
「あとは英語のサイトに入力するだけ……。でも、もしここで間違えたらどうなるんだろう?」
念願のアメリカ輸出に向けて、着実にステップを登ってこられた日本酒メーカーの販売部長様。
今まさに、パソコンの画面を前にして、「登録」ボタンを押す最後の一歩に足がすくんでいませんか?
アメリカのFDA(連邦食品医薬品局)のシステムは、一度でも間違った情報を登録してしまうと、修正に多大な時間と労力がかかります。
最悪の場合、せっかく決まった商談が通関トラブルで台無しになり、会社のブランドに傷がつくことにもなりかねません。
この記事では、アメリカ輸出手続を専門とする行政書士が、FDA登録の「入力作業」という実務の現場で、プロが必ず確認しているチェックポイントをわかりやすく解説します。
【この記事でわかること】
・登録作業を始める前に、手元に用意すべき「正確なデータ」とは何か
・英語のシステムに入力する際、絶対に「やってはいけない」書き方
・登録完了後に、米国代理人と連携すべき「30日間の時間制限」のこと
1.結論:DUNS番号と米国代理人を確認する
結論から申し上げます。
FDA登録の実務において、最も重要な確認事項は、次の2点に集約されます。
【確認事項①】
「DUNS番号の情報」を、一字一句そのままコピー&ペーストして入力する
まず、「DUNS番号」について、ひとことで説明します。
DUNS番号とは、「企業に割り当てられた9桁の識別番号」のことです。
いわば、会社の「マイナンバー」のようなものです。
FDAのシステムは、入力された社名や住所が、このDUNS番号に登録されている情報と「1文字」でも異なると、即座にエラーとして処理します。
自分では正しく書いたつもりでも、DUNSの情報と少しでも違えば、そこで弾かれてしまいます。
【確認事項②】
米国代理人に「30日以内に承認ボタンを押す」よう、あらかじめ伝えておく
「米国代理人」とは、アメリカ国内で貴社の窓口を務めてくれる担当者のことです。
日本側での入力が終わっても、それだけでは登録は完了しません。
指定した米国代理人が、FDAから届くメールに対して「承認作業」を行わなければ、登録申請は30日後に自動的に破棄されます。
「準備は整った」と思っていても、このルールを知らないだけで、せっかくの輸出資格が消えてしまうことがあります。
2.実務での盲点・現場のホンネ
解説書には書かれていない「現場のホンネ」の部分でつまずくことは、実務ではよくあります。
【盲点①】「英語の住所表記」に、絶対の正解はありません
日本の住所を英語にする際、たとえば「1丁目2番3号」を「1-2-3」と書くか「1-chome 2-3」と書くか、迷われると思います。
ここで重要なのは、「どちらが英語として正しいか」ではありません。
「どちらがDUNS番号に登録されているか」です。
実務の鉄則は、DUNS番号の照会画面を横に開いて、そこにある住所をそのまま「コピー&ペースト」することです。
「読みやすい英語に直そう」と自分の判断で書き換えてしまうと、システム上では「不一致」という致命的なミスになります。
【盲点②】「査察の承諾」という、重みのあるチェックボックス
登録画面の最後のほうに、次のようなチェック項目があります。
「FDAが施設を査察することを承諾する」
これは、単なる形式的な同意ではありません。
アメリカの法律(食品安全強化法:FSMA)に基づき、「いつ査察官が蔵に来ても、受け入れます」という経営上の誓約です。
要するに、「検査をいつでも受けます」と約束するチェックボックスです。
現場では「とりあえずチェックしておこう」となりがちですが、これを拒否すれば即座に輸出禁止(ブラックリスト入り)になります。
販売部長として、その重さを改めて認識しておくことが大切です。
【盲点③】「ログイン情報の管理」というリスクヘッジ
地方の酒蔵では、英語ができる特定の担当者ひとりに登録をまかせきりにする傾向があります。
しかし、その担当者が急に退職してしまい、「IDもパスワードもわからない!」とパニックになるケースが、実務上、非常に多くあります。
対策として、信頼できる専門家(行政書士など)を「権限を持つ担当者」としてシステムに追加し、管理権限を分散させておくことを強くおすすめします。
これが、担当者不在による輸出停止を防ぐ、唯一の備えになります。
3.よくあるミス・注意点
商談を加速させるはずのFDA登録が、逆に足かせにならないよう、以下のミスには厳重に注意してください。
【ミス①】カッコ()やカンマ「,」の有無によるエラー
「Co., Ltd.」のピリオドを忘れたり、「&」を「and」と入力したりするだけで、システムに弾かれることがあります。
人間には同じに見えても、FDAの照合システムは、そのわずかな違いを見逃しません。
また、DUNS番号の情報が古いまま、FDA登録で最新の住所を入力するのは厳禁です。
先にDUNS側の情報を修正してから、それがシステムに反映された後でFDA登録を進める。
この「順番」を守ることが実務の基本です。
【ミス②】米国代理人が「メールを見逃す」という落とし穴
登録申請を送信すると、米国代理人にFDAから「認証用コード」付きのメールが届きます。
バイヤーの知人などに安易に頼んでいると、この英語メールをスパムだと思って放置されたり、クリスマス休暇で1ヶ月見逃されたりすることがあります。
前述の通り、30日以内に代理人が承認しなければ、11桁の登録番号は「無効」になってしまいます。
登録作業の当日は、代理人に「今からFDAのメールが届くので、すぐに対応してほしい」と電話やチャットで直接伝えておく。これが、プロの実務です。
【ミス③】「倉庫」の登録漏れは、通関の現場で発覚する
蔵の登録は完璧でも、出荷前に商品を一時保管する「港の倉庫」が未登録だと、出荷時の「事前通知(Prior Notice)」でエラーになります。
バイヤーから「FDA登録は済んだか?」と聞かれたとき、それは単に蔵の番号だけではなく、「輸出に関わるすべての施設の番号が揃っているか」という意味だと受け止めてください。
まとめ・次のステップ
いかがでしたでしょうか?
FDA登録のサイト入力は、単なる「英語の入力作業」ではありません。
貴社の法令順守の姿勢が問われる、「経営の実務」です。
・DUNS情報を「正解」として、1文字も変えずに入力する。
・米国代理人に、30日間という承認期限を強く意識させる。
・完了後に発行される「PIN番号」とログイン情報は、社内の複数名で厳重に保管する。
この3つを確実に行えば、英語への苦手意識があっても、安全にアメリカ市場へのパスポートを手にすることができます。
商談を本格化させるための、次のワンステップはこちらです。
ステップ1:DUNS番号の最新の登録画面をプリントアウトして、手元に置く。
ステップ2:米国代理人に、登録作業を行う具体的な「日時」を伝えて、待機してもらう。
ステップ3:登録完了画面で「11桁の登録番号」と「PIN番号」が表示されたら、即座にスクリーンショットを撮って保存する。
「自分で入力するのは、やはり不安だ」
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