「アメリカのバイヤーと成約間近だが、通関で荷物が止まらないか不安だ……」
「魚の切り身にパン粉付き、乾燥品。それぞれ必要な書類が違うのだろうか?」
「メーカーのFDA登録は確認したが、商社として他に何を準備すべきかわからない」
初めてのアメリカ輸出に挑む食品商社の販売部長様、その不安はとても正しい感覚です。
アメリカは、食品の安全基準が世界トップクラスに厳しい国です。
なかでも水産物は、一般的な食品よりもさらに細かいルールの対象になります。
この記事を読むことで、米国税関(CBP)とアメリカの食品安全を管轄する機関・FDA(食品医薬品局)、この2つのハードルをクリアするための「書類の準備方法」がわかります。
書類の不備による「全量廃棄」という最悪の事態を防ぎ、バイヤーからの信頼を積み上げていきましょう。
【この記事でわかること】
✓ 加工の度合いによって変わる、水産物ならではの品目分類(HSコード)と規制の注意点
✓ 船積前に必ず済ませておく「FDA事前通知(Prior Notice)」のルール
✓ 通関をスムーズにする「衛生証明書」と「HACCP(食品衛生管理の仕組み)」の連携
1.結論:まず、FDA登録、HSコードを確認する
アメリカへの水産物輸出を成功させるポイントは、大きく3つです。
1つ目は、製造・加工・保管に関わるすべての施設が有効なFDA登録を持っていること。
2つ目は、商品の加工度に合った正確なHSコード(品目番号)を把握すること。
3つ目は、出荷のたびにFDAへ事前通知(Prior Notice)を行うこと。
商社の立場では、仕入先メーカーが「水産物HACCP」というアメリカの食品衛生ルールを守って製造していることを書類で証明できるよう、事前に準備しておくことが欠かせません。
2.概要・手続きの流れ
■ 概要
アメリカに食品を輸出するとき、必ず関係してくるのが「バイオテロ法」と「食品安全強化法(FSMA)」という2つの法律です。
これらに基づいて、次の3つのルールが適用されます。
【施設登録(Facility Registration)】
食品を製造・加工・梱包・保管するすべての施設は、FDAへの登録が必要です。
メーカーはもちろん、商社が自社倉庫で保管や梱包を行う場合、その倉庫も登録の対象になります。
【事前通知(Prior Notice)】
荷物がアメリカに到着する前に、出荷ごとに「何を、どこから、どこへ送るか」をFDAへ報告しなければなりません。
【水産物HACCP(Seafood HACCP)】
アメリカに輸入される水産物は、FDAが定めたHACCP(ハサップ)というルールに従って製造されている必要があります。
HACCPとは、食品の製造工程で発生しうる危険を管理するための仕組みのことです。
また、今回の3商品——「切り身(冷凍)」「パン粉付き(冷凍)」「乾燥品(常温)」——は、それぞれHSコード(品目番号)が異なります。
コードによって関税率や必要な書類が変わるため、ここを間違えないことが重要です。
■ 手続きの流れ
販売部長として、社内担当者や仕入先メーカーと連携しながら進めるべき5つのステップを解説します。
【ステップ1】商品の「HSコード(品目番号)」をバイヤーと一緒に確認する
HSコードとは、輸出入される商品を世界共通のルールで番号に分類したものです。
水産物は加工の度合いによって分類が変わります。
①魚の切り身(冷凍)
原則として、第3類(0304項など)に分類されます。
②パン粉をつけた切り身(冷凍)
パン粉を付けて「加工」されているため、第16類(1604項など)の「魚の調製品(加工食品)」に分類される可能性が高くなります。
③乾燥させた切り身(常温)
第3類(0305項など)に分類されます。
このコードを間違えると、関税率が変わるだけでなく、FDAのチェック項目もズレてしまい、通関が止まる原因になります。
必ず現地(アメリカ側)の税関に事前確認してもらうよう、バイヤーに依頼しましょう。
【ステップ2】メーカーのFDA登録番号の「有効性」を確認する
仕入先メーカーからFDA登録番号(11桁)を受け取るとき、次の2点を必ず確認してください。
①登録は更新されているか
FDA登録は、偶数年の10月1日〜12月31日の間に更新が必要です。
この更新を忘れていると、番号は失効しています。「番号はある=有効」ではありません。
②施設情報は最新か
FDA登録には、施設固有の識別番号(UFIなど)の登録も必要です。
住所や担当者などの情報が古いままになっていないか、メーカーに「施設登録のコピー」を提出してもらい、内容を確認しましょう。
【ステップ3】日本側で「衛生証明書」などを取得する
アメリカ向けの水産物輸出では、商品の種類やアメリカ側の要求に応じて、農林水産省や水産庁から「衛生証明書」や「施設認定」を受ける必要があります。
冷凍の切り身やパン粉付き製品は、認定を受けた施設で製造されていることが条件になる場合が多いです。
メーカーが認定を維持しているかどうか、また証明書の写しを早めに入手しておくことが大切です。
【ステップ4】FDAへ「事前通知(Prior Notice)」を行う
荷物が日本を出る前に、オンラインでFDAへ事前通知を行います。
通知が完了すると「確認番号(Confirmation Number)」が発行されます。
この番号は、アメリカでの輸入申告に必須です。
インボイス(送り状)などの船積書類にも、この番号を正確に記載してください。
【ステップ5】船積書類(インボイスなど)を仕上げる
インボイスには、品名だけでなく、次の情報を英語で正確に記載します。
・製造者のFDA登録番号
・製造施設の正式名称と住所
・ステップ1で確認したHSコード
これらの情報が書類間で一致していないと、FDAのシステムでエラーとなり、貨物が港で止まるリスクが高まります。
3.よくあるミス・注意点
現場で実際に起きやすい失敗をまとめました。
【「パン粉付き」をただの魚として申告してしまう】
パン粉を付けた製品は、アメリカでは「加工食品」として扱われます。
魚の種類だけでなく、パン粉の原材料(アレルゲン表示など)に関するラベルのルールにも対応しなければなりません。
分類を間違えると、申告不足や輸入停止につながる可能性があります。
【アメリカの輸入者が持つ「FSVP(外国供給業者検証プログラム)」への理解不足】
食品安全強化法(FSMA)により、アメリカの輸入者は「日本のメーカーが安全に作っているか」を確認する義務を負っています。
水産物HACCPが適用される商品は、FSVPの対応が一部免除されます。
ただしその代わりに、バイヤーから「HACCP計画書」や「衛生管理記録」の提出を求められることがあります。
これにすぐ対応できないと、商談が止まってしまいます。
事前にメーカーから資料を取り寄せておきましょう。
【放射性物質に関する規制の確認漏れ】
品目や産地によっては、放射性物質に関する証明書が必要になる場合があります。
農林水産省のウェブサイトなどで、最新の輸入規制情報を定期的に確認してください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
アメリカへの水産物輸出は、日本の食品商社にとって大きなチャンスです。
その一方で、法規制の複雑さは他の品目と比べてもひときわ高いのが現実です。
正確なHSコードの把握、FDA登録の有効性確認、タイミングを逃さない事前通知。
この3点を商社が主導して管理することで、初めて安全な海外展開が実現します。
「自社の商品に、どのHSコードが当てはまるのかわからない」
「メーカーから受け取ったFDA登録書類に不備がないか確認してほしい」
「事前通知の手続きを専門家に任せたい」
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