海外の魅力的な食品を、日本に輸入して販売したい。
そう考えたとき、多くの方がこんな壁にぶつかります。
「何から始めればいいのか、まったくわからない」
「どんな法律が関係してくるのか、見当もつかない」
食品の輸入販売は、雑貨や衣類などの輸入と比べて、手続きがとても複雑です。
知らずに進めると、取り返しのつかない損失につながることもあります。
当ブログではこれまで、食品衛生法やラベル表示など、個別のテーマに絞って詳しく解説してきました。
「でも、まず全体像を知りたい」
そういったリクエストを多くいただいたため、今回は食品輸入の全体像を体系的にまとめた「完全ガイド」をお届けします。
この記事を最後まで読むことで、食品輸入というビジネスを「自分ごと」として具体的にイメージできるようになるはずです。
【この記事でわかること】
この記事では、
・ 買付先(仕入先)探し
・買付(仕入)交渉
・買付(仕入)契約
・輸入船積み
・海上保険(損害保険)の付保
・船積書類の手配
・輸入通関手続(ここが最重要!)
・販売先との売付契約
・商品の受け渡し
・代金回収
を解説します。
【食品商社勤務経験者からのアドバイス:実務のポイント】
検疫と食品届をクリアすることが最大の関門。
クリアするためには、輸入先から「使える」有効な書類を入手すること。
目次
1.結論:日本に輸入できるかの事前調査がすべて
■ 結論:食品輸入で、最も大事なことは何か
最初に答えをお伝えします。
「日本の法律に適合するかどうかを、輸入の『前』に徹底的に調べ尽くすこと」
これが、食品輸入で成功するための絶対条件です。
海外でごく普通に食べられている食品であっても、日本の厳しい安全基準に適合しないケースは珍しくありません。
たとえば、添加物の種類や使用量、残留農薬(農薬が作物に残っている量)のルールは、国によって大きく異なります。
もし商品が日本に到着してから「これは輸入できない」と判明した場合、商品の廃棄や積み戻し(返品のこと)といった多大な費用が発生します。
事前の準備が、ビジネスの成否を決めるのです。
■ この記事は、つぎようなかたに向けて書きました
「海外の美味しいお菓子を、日本に広めたい」と考えている輸入商社の担当者の方
「海外の珍しい原材料を使って、新しい飲料や加工食品を作りたい」食品メーカーの方
「農産物や調味料を直輸入して、自分のお店で提供・販売したい」個人事業主の方
ひとつ、大切なことをお伝えします。
食品輸入のルールは、輸入する量の多少や、法人か個人かに関わらず、販売や営業目的で輸入するすべての人に等しく適用されます。
「少量だから大丈夫だろう」は通用しません。
たとえ無料のサンプルであっても、不特定多数の方に配布する場合は、正規の手続きが必要です。
まずはこの記事で、あなた自身のビジネスに必要なステップを確認していきましょう。
2.輸入手続きと注意点
■ 手続きの流れと注意点(概要)
【食品輸入の仕組み:全10ステップの流れ】
食品を海外から仕入れ、日本の消費者に届けるまでのプロセスは、大きく10段階に分かれます。
ここでは、全体の流れをつかむことを目的に、要点だけをお伝えします。
ステップ1:買付先(仕入先)探し
まず、魅力的な食品を作っている海外のサプライヤー(供給業者のこと)を探します。
重要なのは「価格が安い」だけで選ばないことです。
日本の厳しい品質要求に応えてくれる、信頼できるメーカーを選定することが、すべての出発点になります。
ステップ2:買付先との買付交渉
価格や数量の交渉はもちろんですが、もうひとつ必ず確認すべきことがあります。
「日本の規制に対応するための書類(原材料表や製造工程表など)を提出してもらえるか」
これを交渉の必須条件に含めておくことが、後のトラブルを防ぐ大きなポイントです。
ステップ3:買付契約(仕入契約)の締結
「インコタームズ」と呼ばれる国際的な貿易条件(送料や保険を誰が負担するかを決めるルールのこと)を定め、契約を結びます。
万が一、輸入検査に不合格となった場合の返品方法や費用負担のルールも、この段階で契約書に明記しておくと安心です。
ステップ4:輸入のための船積み・出荷
食品はデリケートな商品です。温度管理が品質を左右します。
一般的な荷物を運ぶ「ドライコンテナ」か、温度調節ができる「リーファーコンテナ(冷蔵・冷凍コンテナのこと)」か。商品の特性と賞味期限に合わせて、最適な輸送手段を選びます。
ステップ5:海上保険(損害保険)の付保
輸送中の事故や自然災害に備えて、貨物に保険をかけます。
「付保(ふほ)」とは、保険に加入することを指す業界用語です。万が一のリスクに備える、大切なステップです。
ステップ6:船積書類の準備・作成
インボイス(請求書のこと)やB/L(船荷証券:貨物を受け取る権利を証明する書類のこと)といった基本書類に加えて、食品輸入では特別な書類が必要になります。
日本の検疫所(後述)に提出する「原材料表(使用している添加物の化学名称を含むもの)」や「製造工程表」の準備が不可欠です。
これらの書類が不足していると、検査が大幅に遅れる原因になります。
ステップ7:輸入通関手続き(ここが最大の難所です)
貨物が日本に到着したら、税関への申告の前に「他法令(たほうれい)」と呼ばれる各省庁の審査を受ける必要があります。
要するに、税関以外のさまざまな機関のチェックを受けるということです。
食品の場合、主に次の2つがあります。
・植物検疫・動物検疫
野菜や果物、肉製品などが対象です。農林水産省の機関が審査を行います。
・食品等輸入届出
厚生労働省の検疫所に届け出を行い、審査・検査を受けます。食品衛生法(日本の食の安全を守るための法律)に基づく、最も重要な関門です。
これらすべてをクリアして初めて、税関への申告と関税の納税が可能になります。
このステップが、食品輸入で最も時間と知識を要する部分です。
ステップ8:販売先との売付け契約(販売契約)の締結
輸入が完了したら、日本の取引先や消費者に商品を販売するための契約を結びます。
ステップ9:輸入後の商品の受け渡し
税関の許可が下りたら、貨物を倉庫から引き出します。
このとき忘れてはならないのが、食品表示法に基づいた「日本語ラベル」の貼付です。
日本語での原材料表示やアレルゲン表示は、法律で義務付けられています。
ステップ10:販売代金の回収
商品を販売し、代金を回収することで、一連の取引が完了します。
ここまでが、食品輸入ビジネスの一サイクルです。
3.よくあるミス・関連記事・よくあるご質問
■ よくあるミスと注意点
食品輸入を進める中で、初心者が特に陥りやすいミスをまとめました。
事前に知っておくだけで、大きなトラブルを防ぐことができます。
・指定外添加物が含まれていた:
海外では認められていても、日本では使用が禁止されている添加物があります。
代表例はサイクラミン酸(人工甘味料の一種)です。こうした成分が含まれていると、一切輸入することができません。
・衛生証明書の原本がない:
肉、乳製品、フグ、生食用カキなどは、輸出国の政府機関が発行した「衛生証明書」の原本を添付することが義務付けられています。
この書類がないと、輸入審査に進めません。
・「営業目的」の範囲を誤解していた:
「販売するわけじゃないから大丈夫」と考えるのは危険です。
自分のお店で調理に使う場合や、無料サンプルとして配る場合も、輸入届出が必要です。
・日本語ラベルの記載に誤りがあった:
原材料名の表示順、アレルゲン(アレルギーの原因となる成分のこと)の記載(卵・小麦など8品目は表示義務あり)、保存方法の書き方など、非常に細かなルールが定められています。
「なんとなく書いた」では通用しません。
・検疫所への事前相談をしていなかった:
検疫所には「輸入食品相談指導室」という無料の相談窓口があります。
この窓口を事前に活用せずに進めた結果、商品が到着してから不適合が判明するケースが後を絶ちません。
費用ゼロで専門家に確認できる、非常に重要なステップです。
■ 関連記事:
ここまで、食品輸入の全体像を駆け足でお伝えしました。
「自分が扱いたい食品には、どのルールが適用されるのか?」
「書類は具体的に何を用意すればいい?」
そう感じた方は、以下の関連記事一覧でさらに詳しく解説していますので、気になるテーマからお読みください。
・食品届出書
・サンプル輸入
・植物検疫・動物検疫
・事前相談
■よくあるご質問(FAQ):
・食品届出書は個人でも必要?
・HSコードの調べかたは?
・検疫と通関との関係は?
・モニタリング検査、検査命令とは?
・厚生労働省が公表する「違反事例」とは?
・輸入時のラベル表示を作成するには?
・食品を輸入するの保健所の営業許可は必要か?
・添加物や残留農薬の調べかたは?
・健康食品も輸入できるの?
健康食品としての別の調査、相談が必要です
・検査不合格で廃棄となったら、廃棄費用はだれが払うの?
4.実務記事
・実務記事 食品輸入通関のフローチャート、成功への3つの関門
・実務記事 食品輸入 HSコードと事前教示、関税コストを抑える3つの方法
・実務記事 食品輸入 動植物検疫の成功を導く原本と3つの手順
・実務記事 食品輸入 検疫所の事前相談で失敗を防ぐ3つのポイント
・実務記事 食品輸入 品名表示ラベル、2つの役所を使い分ける成功法則
5.事例記事(ケーススタディ記事)
6.比較記事
・比較記事 食品等輸入届出書と営業許可の違い、成功の鍵は2段構え
・比較記事 残留農薬のポジティブリスト、ネガティブリスト2つの違い
・比較記事 サプリメント輸入の成否を分ける「食品」と「医薬品」の違い
・比較記事 指定添加物と既存添加物の違いとは?お菓子輸入の前に知っておきたいこと
まとめ・次のステップ
いかがでしたでしょうか?
「全体の流れはわかった。でも、自社の商品に当てはめると、どうすればいいのかまだ不安……」
「書類の準備や複雑な法律の解釈は、プロに任せたい」
そのようなお気持ちは、とても自然なことです。
食品輸入には、食品衛生法をはじめ、植物防疫法、家畜伝染病予防法、関税法、食品表示法、さらには酒税法や米トレーサビリティ法など、多くの法律が絡み合っています。
これらを一人で把握し、漏れなく対応するのは、専門家でも容易ではありません。
当事務所では、次のようなサポートを提供しています。
・輸入前の原材料チェック
・検疫所への事前相談の同行
・輸入届出書類の作成サポート
・適切な食品表示(ラベル)のアドバイス
多額の廃棄費用やトラブルのリスクを抱える前に、まずは一度、専門家の知恵を活用してみませんか?
食品の輸入手続きや輸入契約でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
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