「もし検疫で不合格になったら、どうなるんだろう……」
「『日本で廃棄』と聞いたけど、手続きは? 費用はどれくらい?」
初めて食品の原材料を海外から直接仕入れる担当者にとって、これは本当に怖い疑問だと思います。
商品代金が丸ごと損になるだけでなく、廃棄の費用まで発生するとしたら——。 そう考えると、夜も眠れないという気持ち、よくわかります。
でも、ご安心ください。
「廃棄になる仕組み」と「事前にできる備え」を正しく知っておけば、リスクは大幅に減らせます。
このブログでは、実務経験のある行政書士が、わかりやすくお伝えします。
【この記事でわかること】
✓ 不合格になったときに選べる「3つの対応策」と、それぞれの費用の現実
✓ 廃棄(滅却)の具体的な手続きと、必要な書類
✓ 廃棄費用をゼロにするために、輸入前にやっておくべき3つのこと
1.結論:原則として全額、輸入者負担です
■ 結論(最初にお答えします)
食品衛生法の検査で不合格となった貨物の廃棄費用は、原則として全額、輸入者(貴社)の負担です。
不合格になった貨物は、日本国内に流通させることは一切できません。
輸入者は自らの責任と費用で、次の3つのうちいずれかを、速やかに選ばなければなりません。
・廃棄(滅却)——日本国内で処分する
・積み戻し(返品)——輸出元の国へ送り返す
・用途変更——食用以外の目的に切り替える
いずれも「放置」は認められません。 選択に迷っている時間も、倉庫代として費用がかかり続けます。
2.概要・手続きの流れ
■ 概要:なぜ廃棄という厳しい処置が必要なのか
1. 日本の「食の安全」を守る仕組みがある
厚生労働省の検疫所は、輸入される食品が日本の基準に合っているかを、水際で厳しくチェックしています。
たとえば、こんな理由で不合格になることがあります。
・日本で使えない添加物(例:サイクラミン酸)が入っていた
・農薬の残留量が日本の基準値を超えていた
・細菌やカビ毒に汚染されていた
一つでも引っかかれば、その貨物は「輸入不許可」となります。
2.「廃棄(滅却)」とは何か
「滅却」とは、焼却や破砕などによって、貨物をもとの形に戻せない状態にすることです。
要するに「商品としての価値を完全になくす」ことを指します。
ただ捨てるのではなく、行政(検疫所・税関)の監督のもとで、正式な手順を踏む必要があります。
3. 費用の内訳:思ったより高くなる理由
廃棄には、「捨てる費用」だけでなく、以下のコストが重なります。
・産業廃棄物処理業者への委託費用
・保税倉庫から廃棄場所までの運送費
・廃棄作業への立ち会い人件費
・不合格が判明するまでの保税倉庫の保管料
原材料の量が多いと、これらが合計で数百万円になることも珍しくありません。
■ 手続きの流れ
「食品衛生法違反通知書」が交付された場合、次のステップで対応します。
ステップ1:対応方法を決め、「措置計画書」を提出する
廃棄・積み戻し・用途変更のどれにするかを決め、速やかに検疫所へ「措置計画書」を提出します。
ステップ2:税関へ「滅却承認申請書」を提出する
保税地域(税関の管理下にある場所)にある貨物を廃棄するには、あらかじめ税関長の承認が必要です。
この申請をすることで、原則として関税の支払いが免除されます。
※ この申請を忘れると、捨てる商品に対して関税を払わされることになります。見落としがちな落とし穴ですので、必ず対応してください。
ステップ3:廃棄作業を行い、写真で記録する
税関の承認後、産業廃棄物処理業者が廃棄を行います。
このとき、商品のラベルやロット番号がはっきり写った写真を必ず撮影するよう、業者に指示してください。後の報告に欠かせない証拠になります。
ステップ4:「措置完了報告書」とエビデンスを検疫所に提出する
廃棄完了後、以下の書類を添えて検疫所に報告します。
・滅却申請書の写し
・マニフェスト(産業廃棄物管理票)——廃棄物が適切に処理されたことを証明する書類です
・廃棄作業の写真
これらが揃って初めて、行政上の手続きが完了します。
3.よくあるミス・注意点
ミス1:「積み戻しの方が安い」と思い込む
返品は、相手国が受け取りを拒否したり、往復の輸送費がかさんだりして、結局、日本で廃棄する方が安かったというケースも多いです。
安易に判断すると損失が広がりますので、慎重に比較してください。
ミス2:写真やマニフェストの内容が不十分
「確かに廃棄しました」と口で言うだけでは、検疫所は認めません。
写真は、商品のラベルやロット番号が明確に読めるものでなければ、証拠として認められないことがあります。
ミス3:不合格時の費用負担を契約に入れていない
海外メーカーとの契約に「日本の検査で不合格になった場合の費用負担」を明記していないと、メーカー側に原因があっても、費用を全額こちらが負担することになります。契約書の段階で必ず確認してください。
ミス4:検査結果が出る前に製品化してしまう
「モニタリング検査」という制度では、検査結果が出る前に通関できる場合があります。
ただし、結果が出る前に工場で製品化してしまうと、後から不合格になった場合に「国内に流通した全製品の回収・廃棄」という、会社全体に影響する深刻な事態になります。
【実務のアドバイス】
私自身、食品商社に勤務していたころ、輸入食品が検査不合格となり、実際の廃棄現場に立ち会ったことがあります。
そのときに痛感したのは、「写真とマニフェストは、検疫所だけでなく、自社の経営者にも提出して説明する必要がある」ということです。
廃棄とは、会社の資産を価値ゼロにする行為です。 経営者への説明責任がともなう、非常に重大な事態です。 現場担当者だけで抱え込まず、早めに上へ報告・相談することを強くおすすめします。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
廃棄という事態は、事前の準備一つで、大幅に防ぐことができます。
輸入前にやっておくべき「3つの鉄則」をお伝えします。
鉄則1:原材料表と製造工程表を必ず取り寄せる
海外メーカーから詳細な書類を入手し、何が入っているかを把握しておきます。
鉄則2:検疫所に事前相談する
取り寄せた資料を、検疫所の「輸入食品相談指導室」に持ち込んで、日本の基準に合っているかを事前に確認します。
鉄則3:契約書に「不合格時の費用負担」を明記する
サプライヤーとの契約に、返品・廃棄費用をどちらが負担するかを明確に書いておきます。
この3点を「購買部門のルール」として徹底するだけで、不合格リスクは大きく下がります。
「英文の資料が不十分で、日本の基準に合うかどうか判断できない」
「検疫所や税関への申請をプロに任せて、本業の調達に集中したい」
「もし不合格になってしまったら、どう動けばいいか相談したい」
そんなときは、ぜひ食品輸入の手続きに精通した行政書士にご相談ください。
当事務所では、輸入前の適合性確認から、各官庁への申請代行、不合格時の事後対応まで、トータルでサポートいたします。
確かな準備で、貴社の海外原材料調達を「リスク」から「強み」へ変えていきましょう。
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