「自社製品の原料を海外から直接輸入したいけれど、添加物や残留農薬の基準が多すぎて、どこから調べればいいのか見当もつかない……」
初めての食品輸入を任された食品メーカーの購買部長様、こんにちは。
食品輸入の手続きを専門とする行政書士です。
食品メーカーにとって、原料の直接輸入はコスト削減や独自性確保のための大きなチャンスです。
しかし、日本の「食の安全」を守るためのルールは非常に厳しく、特に添加物や残留農薬の基準は、雑貨や衣類の輸入とは比べものにならないほど細かく定められています。
「ひとつひとつ自力で調べていたら、いくら時間があっても足りない」というお悩みはもっともです。
でも、安心してください。
プロやベテランの輸入担当者は、すべての基準を丸暗記しているわけではありません。
効率よく調査を進めるための「手順(型)」を知っているだけなのです。
この記事を読むことで、膨大な基準の中から「自社が輸入したい商品に必要な情報」だけをピンポイントで調べる方法がわかります。
まずは、この記事のポイントを確認しましょう。
【この記事でわかること】
✓ 海外メーカーから入手すべき「調査を劇的に効率化させる2大書類」
✓ 膨大な農薬基準を絞り込む「ポジティブリスト制度」の使い方
✓ 検疫所の相談窓口を活用して、確実な答えを得る方法
それでは、順番に解説していきます。
1.結論:検疫所の事前相談を活用する
■ 結論(最初にお伝えします)
最も効率的で確実な方法は、次の2つです。
① 海外のサプライヤー(仕入れ先)から、正確な「原材料表」と「製造工程表」をまず入手すること。
② それを持って、検疫所(国が設置する食品輸入の審査機関)の無料相談窓口を活用すること。
要するに、「自力で膨大なリストと格闘するのではなく、書類を揃えてプロに相談する」ことが近道です。
日本の法律(食品衛生法など)に適合しているかどうかは、輸入する「前」に調べ切ることがビジネス成功の絶対条件です。
そのための最短ルートは、公的な相談機関と専門家を賢く活用することにあります。
2.概要・手続きの流れ
■ 概要(なぜ、そこまで厳しいのか)
日本の食品輸入において、なぜ添加物や残留農薬の調査がこれほど重要なのか、背景を整理します。
1. 食品添加物のルール
日本では、使用できる添加物は国が認めたもの(指定添加物)だけに限られています。
要するに、「国のリストに載っていない添加物は使えない」というルールです。
海外では当たり前のように使われていても、日本では禁止されているものがあります。
たとえば「サイクラミン酸(甘味料の一種)」などが代表例です。
こうした成分が少しでも含まれていると、その食品は一切輸入できません。
2. 残留農薬の「ポジティブリスト制度」
以前は「基準が定められていない農薬は、規制されない」という仕組みでした。
しかし現在は「ポジティブリスト制度」が導入されています。
要するに、「すべての農薬に基準を設け、基準を超えて残留している食品は販売禁止」という仕組みです。
基準値を超えていれば、輸入はできません。
3. 輸入者の責任
輸入食品については、輸入者が日本の製造者と同等の責任を負います。
つまり、「知らなかった」では済まされません。
不適合(基準違反)が判明した場合は、輸入者の費用負担で廃棄や返品(積戻し)をしなければならないのです。
このように、非常に厳しいルールが存在するからこそ、「正しい調査の手順」を踏むことが重要です。
■ 手続きの流れ(4つのステップ)
効率よく調査を進めるための、具体的なステップを説明します。
ステップ1:サプライヤーから「2大書類」を取り寄せる
まず、海外のメーカーやサプライヤーに対して、以下の2つの書類を要求してください。
これが、すべての調査の土台になります。
① 原材料表(Ingredient List)
「香料」「着色料」といったおおまかな記載ではなく、具体的な化学名称(例:〇〇色素、〇〇酸ナトリウムなど)と含有量(全体に占める割合)が明記されたものが必要です。
実務のポイント:
筆者が食品商社に勤務していた頃は、各成分の含有量の合計が必ず100%になるよう、サプライヤーに依頼していました。
これにより、「何が、どれだけ入っているか」が明確になります。
② 製造工程表(Manufacturing Process Flow)
原料の洗浄・加熱殺菌の温度や時間・包装工程などが図解されたものです。
「どのような工程で作られているか」を把握することで、添加物の使用目的や工程上の問題点が確認できます。
ステップ2:添加物の「名称」を確認する
取り寄せた原材料表をもとに、使われている添加物の名称を確認します。
ここで大切なのは、輸出国での呼び名ではなく、国際的な名称や化学名で確認することです。
日本の「食品、添加物等の規格基準」に照らし合わせ、指定外(日本で使用が認められていない)のものが含まれていないかをチェックします。
ステップ3:残留農薬の基準値を調べる
農産物やその加工品を輸入する場合は、生産段階でどのような農薬が使われているかをサプライヤーに確認します。
農林水産省や厚生労働省のデータベースを使って、該当する食品の残留基準値(ppm=百万分の一の単位)を調べます。
ステップ4:検疫所「輸入食品相談指導室」に事前相談する(※最重要)
書類が揃い、ある程度の自主調査ができたら、輸入予定の港を管轄する検疫所の「輸入食品相談指導室」へ連絡してください。
ここは、輸入を検討している事業者に対して、無料で相談に乗ってくれる公的な窓口です。
規格基準への適合性(日本のルールをクリアできるか)や、具体的な手続きについて相談できます。
食品衛生監視員(輸入食品の専門の担当官)に書類を直接確認してもらうことで、「この添加物は、日本ではこの使用基準が適用されます」といった、具体的で確実なアドバイスを得ることができます。
実務のポイント:
筆者が食品商社に勤務していた頃は、必ず対面で相談していました。
口頭だけのやり取りより、書類を見せながら話し合うほうが、認識の齟齬(すれ違い)が生じにくく、確実です。対面での相談を強くお勧めします。
3.よくあるミス・注意点
特に気をつけるべき「落とし穴」をまとめました。
・「キャリーオーバー」の添加物を見逃す
要するに「原料に含まれていた添加物が、最終製品にも残っている」状態のことです。
自社が輸入する製品には直接添加していなくても、使用した原料(例:味付け肉のソースなど)に含まれる添加物が、そのまま製品に残存している場合があります。
原料レベルまで遡って確認することが必須です。
・添加物の「使用できる食品の分類」を間違える
たとえば、「この保存料はパン(食パンなど)には使用できるが、菓子パンには使えない」といったように、食品の分類によって使用基準が細かく分かれている場合があります。
「添加物の名前が同じだから大丈夫」とは限りません。
・電話相談だけで済ませてしまう
口頭だけのやり取りでは誤解が生じやすく、後のトラブルの原因になります。
必ず書面(原材料表など)を提示しながら、対面(予約制)またはメールで相談し、記録を残すようにしましょう。
・最新の改正情報を見落とす
添加物や農薬の基準は、頻繁に更新されます。
昨年の調査結果が今年も有効とは限りません。
輸入のたびに最新情報を確認する体制をつくることが大切です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
購買部長様、膨大な基準を目の前にして、「すべてを自分ひとりで完璧に把握しなければ」と気負う必要はありません。
大切なのは、この2点だけです。
① サプライヤーに「日本の厳しい基準をクリアする必要がある」と伝え、詳細な書類を提出してもらう協力体制を築くこと。
② 入手した書類を持って、検疫所の事前相談窓口という「プロの壁打ち相手」を活用すること。
この2点さえ押さえれば、調査のスピードと精度は飛躍的に向上します。
もし、
「海外メーカーとの英語でのやり取りが不安」
「取り寄せた原材料表をどう読み解けばいいかわからない」
「検疫所への説明をプロに代行してほしい」
といった場合は、ぜひ行政書士へのご相談をご検討ください。
当事務所では、輸入前の成分適合性チェックから、検疫所への同行、複雑な輸入届出書類の作成まで、貴社の購買業務を強力にサポートいたします。
確実な事前調査こそが、貴社の新しい原料調達を成功させる唯一の道です。
食品の輸入基準の調査・輸入手続きでお困りの場合は、お気軽にご相談ください。
貴社のプロジェクトが実りあるものとなることを、心より応援しております。
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