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事例記事 食品輸入の異物混入、契約での定義が成否を分ける

  

「輸入した食品に虫が入っていた。すぐに海外メーカーに弁償させたい」

 

「販売先からは激しく怒られているのに、海外のサプライヤーは『そんなの異物じゃない』と取り合ってくれない……」

 

せっかく苦労して輸入した商品に異物が見つかったとき、輸入者が直面する最大の壁が「認識のギャップ」です。

 

日本では当たり前の常識が、海外では通用しないことがあります。

 

この問題を甘く見ると、損害をすべて自社で被ることになりかねません。

 

この記事では、異物混入トラブルで泣き寝入りしないための「契約書の書き方」について、実際のご相談事例をもとに解説します。

 

【この記事でわかること】

 

・日本と海外でこれほど違う「異物」の定義と認識の差

 

・「虫の混入」で海外サプライヤーにクレームが言えない理由

 

・輸入契約書に必ず盛り込むべき「異物の定義」とは何か

 


1.ご相談内容


 

 ■ 販売先からのクレームと、動かないサプライヤー

 

今回ご相談に来られたのは、海外から農産加工品を輸入している事業者様です。

 

日本国内の販売先へ納品したところ、商品の中から「小さな虫」が見つかったと、深刻なクレームが入りました。

 

輸入者様はすぐに海外サプライヤーへ連絡し、返品や返金を求めました。

 

しかし、サプライヤーからの回答は冷淡なものでした。

 

「人体に危害はないので、我々のルールでは『異物』とは認めない。クレームの対象外だ」

 

販売先と海外メーカーの板挟みになった輸入者様が、「どうにかして相手に補償させたい」とご相談に来られました。

 


2.課題


  

■ 「異物」の基準は国境を越えると激変する

 

今回のトラブルの根底には、3つの大きな課題がありました。

 

(1)「異物」の定義が、日本と海外で根本的に異なる

 

海外の認識:

石や金属片などの「硬質」なもの、つまり歯を折ったり喉を傷つけたりするものだけを「異物」と呼ぶのが一般的です。

 

 

日本の認識:

髪の毛・虫・ビニール片など「軟質」なものも含め、「本来その食品に入っていてはいけないもの」はすべて異物とみなされます。

 

 

(2)サプライヤーが「異物」と認めない

 

海外サプライヤーにとって、健康被害が出ない虫の混入は「許容範囲内」です。

 

そのため、日本の感覚で「誠意ある対応」を求めても、相手には伝わりません。

 

 

(3)輸入契約書での定義があいまいだった

 

最も致命的だったのは、輸入契約書に「何が異物にあたるか」の定義がなかったことです。

 

定義がなければ、相手に契約違反を主張することができません。

 


3.対応


 

 ■ 契約書に立ち返った冷静な判断

 

私は契約書を確認しましたが、「異物」に関する具体的な記載はありませんでした。

 

現状の契約内容では、海外サプライヤーに対して法的根拠を持ってクレームを提起し、補償を求めることは難しい。

 

残念ながら、そうお伝えせざるを得ませんでした。

 

そのうえで、次の2点をアドバイスしました。

 

・今回については、「日本の消費者は虫の混入にも非常に敏感であること」をサプライヤーに粘り強く説明し、理解を求める。

 

・次回の契約からは、異物の定義を日本基準に合わせた形で明確に盛り込む。

 


4.結果


 

 ■ 将来の損害を防ぐための「合意」

 

今回は金銭的な補償こそ得られませんでしたが、大きな前進がありました。

 

輸入者様が日本市場の特殊性を根気よく伝えた結果、サプライヤーとの間で次の合意ができたのです。

 

「次回以降の契約では、虫や髪の毛といった軟質の混入も異物と定義し、発見された場合の責任の所在を明確にする条項を盛り込む」

 

これにより、同じことが起きた際には、堂々と契約違反としてクレームを入れることが可能になりました。

 


5.注意点


 

■ 貿易は「契約書がすべて」の世界

 

日本の国内取引では、「これくらい分かってくれるだろう」という暗黙の了解で話が進むこともあります。

 

しかし、貿易実務では「契約書に書かれていないことは、存在しないのと同じ」です。

 

相手に責任を認めさせるには、感情論ではなく、事前に合意した「文書」という根拠が必要です。

 


6.行政書士としての視点


 

法務の観点から言えば、契約書で禁止されていない行為については、相手に「帰責事由(=責任を負うべき理由)」が生じません。

 

「帰責事由がない=クレームの根拠がない」ということです。

 

海外ビジネスは厳しいと感じるかもしれません。

 

しかし、「書かれたルールだけを守る」という点において、海外の方がむしろ契約に対して誠実とも言えます。

 

日本の安全基準や消費者感覚を、あらかじめ契約書という形でサプライヤーに同意させておくことが、最大のリスク対策です。

 


7.食品商社勤務時代の経験から見た注意点


 

私が食品商社にいた頃、まさに農産物への虫の混入でサプライヤーに猛抗議したことがありました。

 

その時の相手の一言は、今でも忘れられません。

 

「農産物を食べながら、ついでに動物タンパク質も取れてラッキーじゃないか。なぜ怒るんだ?」

冗談ではなく、彼らは真顔でそう言いました。

 

彼らにとって、虫や髪の毛は「体調を崩すものではないから異物ではない」のです。

 

このような認識を持つサプライヤーと日本向けの商売をするのは、非常に困難です。

 

だからこそ、「日本の異物基準を正しく理解し、対応できる体制を持つサプライヤー」を厳選し、その約束を契約書でしっかり縛ることが、食品輸入を成功させる絶対条件だと考えています。

 


まとめ・次のステップ


 

いかがでしたでしょうか?

 

異物混入トラブルを防ぐため、まず以下の3点を確認してみてください。

 

・現行の契約書に「異物の定義」が具体的に書かれているか

 

・虫・髪の毛などの軟質異物も含むことを、サプライヤーに明文化させているか

 

・異物発見時の写真提供や、ロット全量への対応ルールが決まっているか

 

 

「自分の契約書で異物混入に対応できるか不安」「海外メーカーへの条件交渉の進め方が分からない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。

 

食品輸入の現場を知る専門家として、契約面から貴社のビジネスをしっかりサポートします。

 

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