「これまで獲れた魚をそのまま売っていたけれど、これからは切り身の冷凍パックや、フライ用のパン粉付き、天日干しの干物なども自社で製品化して売りたい」
水産加工への新規参入を検討されている経営者の方から、このようなご相談をよくいただきます。
水産物の加工は、魚に付加価値をつけて利益率を高める、素晴らしいビジネスチャンスです。
しかし、いざ始めようとすると、こんな疑問が出てきます。
「保健所の許可は必要なの?」
「切り身と干物では、取るべき許可が違うの?」
2021年に食品衛生法が大きく改正され、水産物の取り扱いルールも変わりました。
この記事を読むことで、あなたの新しいビジネスにどの許可が必要かが明確になります。
自信を持って開業準備を進めることができます。
【この記事でわかること】
・「生の切り身」と「パン粉付き・干物」で必要な許可の違い
・2021年の法改正で新しくできた「水産製品製造業」という許可について
・加工品を販売するすべての事業者に義務付けられる「HACCP(ハサップ)」の基本
1.結論:鮮魚も加工品も売るなら「水産製品製造業」許可
まず、結論をシンプルにお伝えします。
▶ 生の切り身(冷凍含む)を包装して売る場合
→「魚介類販売業」の許可が必要です。
▶ パン粉をつけたものや干物を製造・包装して売る場合
→「水産製品製造業」の許可が必要です。
ポイントがひとつあります。
「水産製品製造業」の許可を取得すれば、同じ施設で生の鮮魚も販売できます。
その場合、別途「魚介類販売業」の許可を取る必要はありません。
つまり、加工品も鮮魚も売りたいなら、「水産製品製造業」をひとつ取れば足りる、ということです。
2.概要・手続きの流れ
■概要:許可が必要かどうかを判断する「3つのケース」
水産加工で許可が必要かどうかは、「どこまで加工するか」で決まります。
【ケース①】生の切り身(冷凍品)の場合
魚を三枚におろしたり、切り身にして冷凍・包装する場合。
この作業は、食品衛生法上では「鮮魚介類の販売」の範囲に含まれます。
つまり、「魚を売っている」とみなされるわけです。
必要な許可:魚介類販売業
【ケース②】パン粉をつけた切り身(冷凍品)の場合
切り身に衣(パン粉)をつけると、「単なる鮮魚」ではなく「加工食品」とみなされます。
調理の準備がされた「惣菜の半製品」に当たるからです。
必要な許可:水産製品製造業
【ケース③】天日干しの干物の場合
天日干しは「水分を調整・乾燥させる加工工程」を経ています。
そのため、こちらも「加工食品」としての扱いになります。
必要な許可:水産製品製造業
補足:法改正前との違い
2021年の改正以前は、「干物製造業」などの許可が自治体ごとにバラバラに存在していました。
現在は国が定める「水産製品製造業」という共通の許可に統一されています。
全国どこでも同じルールで手続きできるようになりました。
■手続きの流れ
水産加工の許可を取得するまでの手順を、4つのステップで説明します。
【ステップ1】保健所への事前相談
施設の改装や機材の購入をする前に、必ず管轄の保健所に相談に行きましょう。
図面があれば持参すると、話がスムーズです。
「切り身だけでなく、干物やパン粉付きも作りたい」と正確に伝えることが大切です。
何の許可が必要かを、担当者に確認しましょう。
【ステップ2】施設の設備づくり
水産製品製造業の許可を取るには、施設の設備基準を満たす必要があります。
代表的な基準は以下の2つです。
・原材料の処理スペース:
洗浄・解凍・乾燥などのための専用スペースが必要です。
・冷蔵・冷凍設備:
製品を適切な温度(冷蔵は10℃以下、冷凍は-15℃以下など)で管理できる設備が必要です。
【ステップ3】申請書の提出と現地検査
施設が完成する数日前に、保健所へ申請書を提出します。
その後、保健所の担当者が施設を訪問します。
シンクの数、手洗い場の構造、作業スペースの区画などが基準を満たしているかチェックされます。
【ステップ4】HACCPに基づく衛生管理のスタート
許可を取得したら、「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理」が義務になります。
HACCPとは、食品の安全を守るための衛生管理の仕組みのことです。
食品を扱うすべての事業者に義務付けられています。
具体的には、以下のような記録を日々残す必要があります。
・原材料を受け取ったときの鮮度確認
・冷凍庫の温度記録
・乾燥工程の時間管理
記録を蓄積していくことが、万が一のトラブル時にも事業者を守ることにつながります。
3.よくあるミス・注意点
【注意①】「採取業」との勘違い
漁師さんが自ら獲った魚を、未加工のまま(丸ごとの状態で)売る行為は「採取業」に当たります。
この場合は、保健所の許可や届出は不要です。
しかし、包丁を入れて切り身にした瞬間、または干物に加工した瞬間に「営業」とみなされ、許可が必要になります。
「獲って売るだけ」と「加工して売る」の間には、明確な線引きがあります。
【注意②】ラベル(食品表示)の不備
加工品を包装して販売する場合、食品表示法に基づいた正しいラベルの表示が義務です。
表示が必要な主な項目は以下の通りです。
・名称・原産地
・冷凍品の場合:「解凍した旨」の記載(必要な場合)
・パン粉付き製品(加工食品)の場合:原材料名・アレルギー・栄養成分表示など
ラベルの不備は、後から指摘されることも多いポイントです。早めに確認しておきましょう。
【注意③】「魚介類販売業」だけで干物を作ってしまう
「魚屋の許可(魚介類販売業)を持っているから、干物を作って売っても大丈夫だろう」
このような自己判断は危険です。
干物の製造・販売には「水産製品製造業」の許可が必要です。
魚介類販売業だけでは対応できず、無許可営業とみなされるリスクがあります。
【注意④】不要な許可まで申請してしまう
先ほどの「概要」でもお伝えした通り、「水産製品製造業」の許可を取得すれば、同じ施設での鮮魚販売(魚介類販売業)は免除されます。
知らずに両方申請してしまうと、手間も費用も余分にかかります。
事前に保健所で確認しておくことが重要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
水産加工のビジネスを始めるにあたって、まず押さえておくべき区分けはこちらです。
・生の切り身(冷凍含む)を売る → 魚介類販売業
・干物・パン粉付きなどの加工品を売る → 水産製品製造業
・両方売りたい → 水産製品製造業ひとつでOK
「自分の計画している施設で、本当にこの加工ができるのかな?」
「HACCPの計画書をどう作ればいいのか、専門的なアドバイスがほしい」
水産業から加工業へのステップアップには、専門的な知識と煩雑な手続きが伴います。
当事務所では、水産加工の許可申請はもちろん、法改正に対応したHACCPの導入支援まで、トータルでサポートしております。
新しいチャレンジを確実なものにするために、まずはお気軽にご相談ください。
水産加工の営業許可やHACCP対応でお困りの方は、当事務所へお問い合わせください。
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