食品業界の経営者の皆様、こんにちは。
食品補助金の申請から、受給後の実務までを専門にサポートしている行政書士です。
これまで、補助金の全体像や実務のポイントを解説してきました。
今回は、多くの経営者様が「一番の不安」として挙げる「賃上げ要件」について、ある会社様と一緒に乗り越えた事例をご紹介します。
「補助金は欲しい。でも、給料アップを約束するのは経営上のリスクではないか」
そんな悩みを抱えている方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
この記事を読むことで、補助金の賃上げ要件に対するモヤモヤした不安が解消され、前向きに投資を判断できるようになります。
【この記事でわかること】
・補助金の「賃上げ要件」(給料を増やすと約束する条件)の本当の重み。そして、必要以上に怖がらなくていい理由
・設備投資による「効率化」が、どうやって賃上げのための原資(お金のもと)を生み出すのか
・目標に届かなかった場合に備えた「返還免除規定」(条件を満たせなくても、事情によっては補助金を返さなくてよいという仕組み)について
1.ご相談内容
ある食品メーカーの経営者様から、こんな切実なご相談をいただきました。
「最新の自動包装機を導入して、人手不足を解消したい。農林水産省や『ものづくり補助金』(機械や設備を買うお金の一部を国が補助してくれる制度)の活用を考えている。でも、どの補助金にも『賃上げ要件』がついてくる。機械を入れて効率化すれば、残業は減らせると思う。けれど、実際に利益が増えて賃上げができるかどうかは、やってみないとわからない。賃上げの確約は、経営上の大きなリスクではないか?」
2.課題
経営者様が最も悩んでいたのは、「将来がどうなるか分からない」という不安でした。
「今は良くても、数年後に景気が悪くなったら?」
「原材料の値段が、これからも上がり続けたら?」
こうした不安から、公的な書類で賃上げを約束することに、強い抵抗感をお持ちでした。
3.対応
ここからは、どのように解決していったのかをご説明します。
私は経営者様と一緒に、「この投資で、本当に利益が増えて、従業員に給料として還元できるのか?」について、何度も「壁打ち」(相手に話しながら考えを整理し、議論すること)を重ねました。
具体的には、以下の手順で計画を詰めていきました。
・機械を導入することで、削減できる「作業時間」を分単位で計算する
・その分、空いた時間で、これまで手が回らなかった「高付加価値商品」(利益率の高い商品)を、どれだけ多く作れるかシミュレーションする
・その結果増える利益(付加価値額。売上から原材料費などのコストを引いた、会社に残るお金)の中から、無理なく賃上げに回せる金額を逆算する
この議論には、かなり時間がかかりました。
そこで、あえて申請のタイミングを、1回先の「公募」(補助金の申請を受け付ける回)にずらすという決断をしました。
「なんとなく」の計画で提出するのではなく、納得できる根拠をしっかり揃えることを優先したのです。
4.結果
時間をかけて、じっくり作り上げた「事業計画書」(補助金を使って何をするかをまとめた書類)は、無事に採択されました。
その後「交付決定」(補助金を使ってよいという国からのお知らせ)を受けて、現在は機械の導入と補助事業を進めている最中です。
事前に綿密にシミュレーションを行ったおかげで、計画通りに生産性が向上しています。
無理のない範囲での賃上げも、実行できる見通しが立っています。
5.注意点
補助金における賃上げ目標は、「とりあえず書けばいい数字」ではありません。
特に「ものづくり補助金」などの場合、目標を達成できないと、補助金の一部を返すよう求められることもあります。
つまり、「その賃上げは、自社の実力で本当に実行できるのか」を、事前に厳しく見極めることが欠かせません。
6.行政書士としての視点
最も避けたいのは、事業計画書が「絵に描いた餅」(実現できない、絵の中だけの計画)になってしまうことです。
採択されるためだけに、無理な数字を並べてしまうと、後で苦しむのは経営者様と従業員の皆様です。
それでは、事業計画に関わった全員の時間が、無駄になってしまいます。
「背伸びをしすぎない、けれど挑戦的な数字」を一緒に探し出すこと。
これが、プロの伴走者としての私の役割だと考えています。
7.食品商社勤務時代の経験から見た注意点
私は行政書士になる前、食品商社で海外事業などを担当していました。
商社の世界では、「天変地異」(自然災害など予測できない出来事)や政情不安など、「最悪の事態」を想定した、厳しめの売上計画から年間予算を組み立てるのが基本でした。
補助金申請でも、同じことが言えます。
あえて「売上が伸び悩んだ場合」の厳しいパターンをたたき台として作ってみる。
そして、「それでも利益を出すには、どうすればいいか?」を、経営者と従業員が一体となって考える。
このプロセスを経て、みんなが納得した上で決まった「賃上げ計画」こそが、会社を本当に強くする、質の高い計画になります。
まとめ・次のステップ
いかがでしたでしょうか?
賃上げ要件は、経営を圧迫する「枷(かせ)」ではありません。
会社をより筋肉質な体質に変えていくための、「成長の羅針盤(らしんばん)」だと言えます。
また、国も「ビジネスに絶対はない」ことを理解しています。
そのため、天災や赤字転落など、やむを得ない事情がある場合のための「返還免除規定」も、ちゃんと用意されています。
「賃上げ要件が怖くて、申請に踏み切れない」
「自社の決算内容で、どれくらいの目標が妥当か分からない」
そんな経営者様は、ぜひお気軽にご相談ください。
食品補助金のプロとして、貴社の財務状況を分析し、リスクを最小限に抑えながら、採択を目指す「納得できる計画づくり」をサポートいたします。
正しい準備と、覚悟をもって。
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