事例記事 酒類製造免許 申請のポイント

   

これまで、酒類製造免許(お酒を造るために必要な許可のことです)の仕組みや実務について、お伝えしてきました。

  

今回は、もっと「自社だったらどうするか」をイメージしていただけるよう、実際にあったご相談を例にした「ケーススタディ(事例)記事」をお届けします。 

 

【この記事でわかること】 

 

・審査で特に重視される「次葉5」(事業計画書のこと)の書き方のコツ 

 

・設備を発注する前に知っておきたい、行政手続きの大切なルール 

 

・税務署の担当者だけでなく、その「上司」にも納得してもらうための視点 

 


1.ご相談内容


 

今回のご相談者様は、新しくクラフトビール(小規模で造られるビールのことです)事業を始めようとしている事業者様でした。

 

ご自身で申請の準備を進め、税務署へ書類を提出されました。 

 

ところが、担当者の方から「次葉5(事業計画書)に書かれている収支の数字が、十分に検討されていない」として、書類を一度突き返されてしまいました。

 

 「どう書き直せば免許がもらえるのでしょうか」と、当事務所にご相談くださいました。

 


2.課題


 

(1) よくある誤解

 

「事業計画書(次葉5)は、とりあえず黒字(収入が支出より多い状態のことです)になるように、ざっくり書いておけば大丈夫だろう」

 

このように考えてしまう方が、とても多いのが実情です。 

 

要するに、「数字のつじつまが合えばOK」という誤解です。

 

 

 

(2) ご相談前に悩まれていたこと

 

さらに、この方の場合は事情が深刻でした。

 

すでに製造に使う設備を、メーカーへ「仮発注」(本契約の前段階の予約のようなものです)してしまっていたのです。

 

酒類製造免許は、製造を始める前に取得しておく必要があります。 

 

もし免許が取れなければ、設備にかけたお金が無駄になってしまう……という大きなプレッシャーを抱えておられました。

 

 

 

(3) 実務上の注意点

 

行政手続き(役所に対する申請の手続きのことです)、とくにお酒の免許では、次のことが鉄則です。

 

・税務署の担当者と、一歩ずつ確認しながら進めること 

 

・「やってしまった後」の事後報告を、役所はもっとも嫌うこと

 

つまり、勝手に話を進めるのではなく、事前に相談しながら、担当者の理解を得て進めることが、成功への近道なのです。

 


3.対応


 

まずは、ご相談者様と何度も「壁打ち」(考えを整理するために、何度も話し合うことです)を行い、事業の内容をより具体的にしていきました。

 

申請書の中心となる「次葉5(事業計画書)」には、単なる数字の目標だけでなく、「これから、どのように事業を進めていくのか」という具体的な見通しを、丁寧に書き込みました。

 

特に力を入れたのは、次の2点です。

 

・新しい販路をどう広げていくか、具体的なターゲットを示すこと

 

・既存のつながりやネットワークを、どう活かして売上を確保するのか、根拠を示すこと

 

 

これらをまとめることで、担当者の方が「この事業なら、続けていけそうだ」と判断できるような、説得力のある内容に仕上げました。 

 


4.結果


 

書類を再提出した後も、税務署からは何度か追加のデータ提出を求められました。

 

そのたびに、丁寧かつスピーディーに対応しました。

 

酒類製造免許の標準処理期間(審査にかかる目安の期間のことです)は、原則2か月以内です。 

 

こうした地道な対応が実を結び、無事に免許を取得することができました。

  

その後、登録免許税(免許を受ける際にかかる税金のことです)15万円を期限内に納付し、無事に事業をスタートすることができました。

 


5.注意点


 

 申請書類には、「次葉5」以外にも、記載すべき項目が細かく決められています。

  

たとえば、「製造技術に関する書類」や、「製造に使う設備・容器の明細書(次葉3)」などです。

 

これらはすべて、税務署の担当者が内容を正確に理解し、審査を進めるための材料になります。

 

「相手が読んで、わかりやすいように、丁寧に書く」  

 

この基本を、忘れないようにしましょう。 

 


6.行政書士としての視点


 

役所も、ひとつの組織です。

 

窓口で対応してくれる担当者の方にも、必ず決裁権(最終的に決定する権限のことです)を持つ「上司」がいます。

 

書類を作るときは、「担当者の方が、そのまま上司への説明資料として使える」レベルを目指すことが、鉄則です。

  

担当者の「次のステップ」まで意識して書類を作ることで、審査はぐっとスムーズになります。

 


7.食品商社勤務時代の経験から見た注意点


 

この「相手の組織を意識した書類作り」は、私が食品商社で働いていたときも、まったく同じでした。

 

「この文書は、最終的に誰が読むのだろう?」

 

これを、常に自分に問いかけてみてください。

 

自分だけがわかっている、独りよがりな内容では、ビジネスの場でも、行政手続きでも、相手には伝わりません。

 


まとめ・次のステップ


 

いかがでしたでしょうか?

 

酒類製造免許の取得には、緻密な計画と準備が欠かせません。

 

 

「数字の根拠に自信が持てない」

 

「書類の書き方がよくわからない」

 

こうしたお悩みをお持ちの方は、まずは管轄の税務署への事前相談、または専門家への相談を検討してみてください。

 

当事務所では、事業計画の作成段階から、丁寧にサポートさせていただいております。

 

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