深夜にお酒をメインに提供するバーや居酒屋を開業しようと考えているかた、こんにちは。
食品営業許可や、警察署への届出手続きを専門にしている行政書士です。
これまでこのブログでは、営業許可手続きの全体像や、現場で実際に起きているルールについてお伝えしてきました。
今回は、もう一歩具体的に「自分のお店だったらどう動くか」をイメージしていただくために、実際にあった「居抜き物件」特有のトラブルをケーススタディ(事例)としてご紹介します。
この記事を読むと、次の3つがわかります。
・居抜き物件で起きやすい「前オーナーの廃止届」という落とし穴
・トラブルが起きたときに、警察署や大家さんとどう連携すればよいか
・開業の遅れを防ぐために大切な「事前相談」のメリット
1.ご相談内容
先日、居抜き物件でバーをオープンしようとしていた事業者様から、慌てたご様子でご相談がありました。
「警察署に深夜営業の届出書類を持って行ったところ、『前のお店の廃止届が出ていないので、今回の届出は受け取れません』と言われてしまいました。オープン予定日は来週です。どうすればいいでしょうか?」
居抜き物件ならではの、「二重登録」という問題が起きてしまったのです。
要するに、前のお店が「営業をやめました」という届出(廃止届)を出していなかったため、新しいお店の届出を受け取ってもらえなかった、ということです。
2.課題
(1)よくある誤解
「新しく賃貸借契約を結んだのだから、自分のお店の手続きはゼロからスタートできる」と考えてしまうのが普通です。
前のオーナーが、役所の手続き(廃止の届出)をきちんと済ませているかどうかは、ほとんどの方が考えていません。
(2)ご相談前に悩まれていたこと
開業が1日遅れるごとに、見込んでいた売上は入ってきません。
一方で、スタッフの人件費や家賃といった固定費はかかり続けます。
このまま届出を受け取ってもらえなければ、資金繰りが苦しくなってしまう、という不安を抱えていらっしゃいました。
(3)実務上の注意点
深夜酒類提供飲食店の「届出」は、書類をただ持っていけば終わり、というものではありません。
警察署の窓口で内容を確認してもらい、正式に「受理」(受け取ってもらうこと)される必要があります。
さらに、受理された日から数えて10日間(これを「中10日」と呼びます)が経過しないと、営業を始められないというルールもあります。
3.対応
私はすぐに事業者様と一緒に、次の対応を同時に進めました。
【1】警察署への連絡と窓口確認
所轄の警察署の「生活安全課」(こうした届出を担当する部署です)に電話で予約を入れました。
窓口では現在の登録状況を詳しく確認し、どうすれば新しい届出を受け取ってもらえるか、担当の方と相談しました。
【2】大家さんを通じたお願い
警察署には守秘義務があるため、前オーナーの連絡先を教えてもらうことはできません。
そこで物件の大家さんに事情を説明し、前オーナーへ「廃止届(様式第18号という決まった書類です)を、できるだけ早く出してほしい」と伝えてもらうようお願いしました。
4.結果
ありがたいことに、大家さんがすぐに動いてくださり、数日後に前オーナーが警察署へ廃止届を提出してくれました。
それに合わせて、事業者様の届出書類も準備を整えて提出。
予定より10日ほど遅れてしまいましたが、無事にオープンを迎えることができました。
5.注意点
■ 前オーナーの存在は意外な盲点
居抜き物件には、設備や内装をそのまま使えるというメリットがあります。
しかし、「前のお店の役所への登録」という、目には見えないものまで引き継いでしまうことがあるのです。
前オーナーが廃止の手続きを忘れているケースは少なくありません。
これから開業するかたにとって、見落としやすい大きな盲点といえます。
6.行政書士としての視点
今回は前オーナーと連絡が取れたので、ラッキーなケースでした。
もし連絡が取れなかった場合、手続きが数ヶ月単位でストップしてしまうリスクもあります。
こうした事態を防ぐカギは、所轄の警察署への「事前相談」(契約や工事の前に、警察署へ相談に行くことです)を、どれだけ早くできるかにかかっています。
物件の契約前、あるいは内装工事の前に警察署へ足を運んでいれば、「前の登録が残っていますよ」というアドバイスを早めにもらえたはずです。
7.食品商社勤務時代の経験から見た注意点
私は行政書士になる前、食品商社に勤めていました。
その経験から言えるのは、居抜き物件を借りるときは、物理的な掃除だけでなく、「役所関連で残っているもの」もすべてきれいにしておくことが大切だということです。
要するに、前のオーナーの「負の遺産」を残さないことが、スムーズに開業するための絶対条件なのです。
まとめ・次のステップ
いかがでしたでしょうか?
居抜き物件で、深夜にお酒を出すお店を始める場合は、以下のステップを意識してください。
・契約の前に警察署へ行き、前のお店の届出が残っていないか確認する
・大家さんに、「前オーナーの廃止手続き」が済んでいるか確認してもらう
・少しでも不安があれば、早めに専門家へ相談する
「自分のお店の場合は大丈夫だろうか」と不安になった方は、ぜひ一度お問い合わせください。
複雑な書類作成や図面作成はもちろん、こうした「想定外のトラブル」を防ぐお手伝いも含めて、全力でサポートいたします。
皆様の新しい門出が、すばらしいものになるよう、心より応援しております。
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