「契約は済んでいるのに、原料が入ってこない……」
「天候不順で出荷が遅れると伝えたら、バイヤーから『損害賠償だ』と言われた」
食品メーカーにとって、台風や豪雨による原料不足は避けられないリスクです。
しかし輸出の現場では、「天気が悪かったから仕方ない」という説明だけでは、なかなか納得してもらえません。
【この記事を読むとわかること】
・原料不足で「船積み=船に荷物を積むこと」が遅れたとき、海外バイヤーとどう交渉すればよいか
・コストが増えても「空輸(飛行機での輸送)」に切り替えるべき判断のポイント
・農産物特有のリスクに備える「数量に幅を持たせる条項」の重要性
1.ご相談内容
ある食品メーカーの販売部長様から、ご相談をいただきました。
「自社製品の主な原料であるキャベツが、産地の台風と豪雨で大きく減ってしまいました。海外バイヤーとは、すでに船積み時期を含めた契約を結んでいます。遅らせてほしいとお願いしたのですが、『そちらの転売先ともう契約済みだ。今さら遅れるなら違約金を払ってほしい』と言われてしまいました……」
食品を輸出する際、契約を結んだ後は、その内容を守る責任が非常に重くなります。
特に、転売先(さらに別の会社に売る予定の相手)が決まっているバイヤーにとって、入荷の遅れは自社の信用に直結するため、強い態度になりやすいのです。
2.課題
■ 天候に左右される農産物の宿命
農産物は、工業製品とは違い、天候ひとつで収穫量や品質が大きく変わります。
これを単純に「契約違反(約束を守らなかったこと)」として責められてしまうと、日本のメーカーは「輸出すること自体が怖い」と感じてしまいます。
3.対応
■ 誠実な説明と代替案の提示
私はご相談者の代理人として、海外バイヤーとの交渉に入りました。
ただ「物がありません」と伝えるのではなく、現地の気象データや農協の報告書を示しながら、今回の減産が「不可抗力=人の力ではどうにもできない出来事」に近いことを、丁寧に説明しました。
そのうえで、「今すぐ必要な分はどれくらいか」を一つずつ確認し、優先順位を整理していきました。
4.結果
■ 100万円の損を「信頼」に変える決断
話し合いの結果、どうしても急ぎで必要なロット(出荷の一まとまり)だけを、船便から空輸に切り替えることで合意しました。
空輸は海上輸送に比べて費用がとても高いため、会社としては約100万円の負担増となりました。
しかし、これによりバイヤー側の販売の機会を守ることができ、最も避けたい「契約解除」や「信頼関係が崩れること」を防ぐことができました。
5.注意点
■ 厳密すぎる契約が自分の首を絞める
農産物を原料とする場合、船積みの時期や数量を1キロ単位、1日単位できっちり決めすぎるのは、実は危険です。
自然の状態と、契約書に書かれた細かい条件との間には、どうしても「ズレ」が生まれるリスクがあることを、覚えておく必要があります。
6.行政書士としての視点
■ 契約書に「幅」を持たせる
食品輸出契約に詳しい行政書士としておすすめしたいのは、「数量許容条項」を入れることです。
要するに、「出荷する数量は、契約書に書いた数字よりプラスマイナス10%まで変えてもよい」というルールを、あらかじめ契約書に書いておくということです。
この「幅」があるだけで、原料が不足したときに無理な出荷をしなくて済んだり、逆に原料が多くとれたときに在庫を抱えすぎたりするリスクを、コントロールしやすくなります。
7.食品商社勤務時代の経験から見た注意点
■ 減産・増産の板挟み
私が食品商社にいたころ、農産物を原料とするビジネスでは、いつも「どちらに転んでも怒られる」という状況がありました。
原料が減ると、今回のように「数量が足りない、遅い」とお客様に怒られます。
逆に、天候が良くて原料が増えると、「在庫が積み上がりすぎている」と社内の経営陣や監査担当から怒られます。
このように、「減っても増えても問題になる」という食品ビジネス特有の難しさを理解したうえで、あらかじめバイヤーと「もしものときのルール」を決めておくことが、実務ではとても大切です。
まとめ・次のステップ
いかがでしたでしょうか?
今回は「コストを負担する」という形で解決しましたが、本来は契約の段階で防げるリスクも多くあります。
・契約書に「不可抗力条項」と「数量許容条項」を必ず入れる
・船積みが遅れたときの代替輸送(空輸など)の費用を、誰が負担するかを話し合っておく
・原料の生育状況を、日頃からバイヤーと共有し、早めに「予兆」を伝えておく
「今の契約書で、天候不順のリスクをカバーできているか不安だ」
「バイヤーから厳しい条件を出されていて、契約を見直したい」
そのようなお悩みをお持ちの食品メーカー様は、ぜひ当事務所にご相談ください。
食品輸出の専門家として、現場の実情に合った契約書づくりから、トラブル発生時のサポートまで、貴社の海外ビジネスを全力でお守りします。
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