· 

事例記事 食品輸出 原産地証明書 船積み後発行の落とし穴

  

「船が出てしまった後で、原産地証明書を取り忘れたことに気づいた……」

  

「今からでも発行してもらえるのだろうか?」

  

「もし間に合わなかったら、高い関税をそのまま払うしかないのか?」 

 

初めて食品輸出に挑戦するとき、船積みの準備に追われて後回しになりがちなのが「特定原産地証明書」の手配です。 

 

特定原産地証明書とは、輸出する商品が「日本製である」と公的に証明する書類のことです。

 

要するに、「この商品は日本で作られましたよ」と証明する一枚の紙です。 

 

この書類があると、EPA(経済連携協定=国同士の貿易ルールを定めた取り決め)を活用して、輸入国での関税を大幅に下げることができます。

 

バイヤーのコスト、ひいては自社の成約率を左右する、とても重要な書類です。 

 

【この記事でわかること】 

 

・特定原産地証明書を船積み後に発行してもらうことが、なぜリスクなのか 

 

・海外の税関での「関税還付(払いすぎた関税を返してもらうこと)」が、なぜ期待できないのか

 

 ・書類の不備を事前に防ぐための、専門家活用の方法

 


1.ご相談内容


 

 ■ 船が出てからの「取り忘れ」発覚

 

先日、日本からの食品輸出者の方より、切実なご相談をいただきました。

 

「ベトナム向けに食品を輸出しました。バイヤーから『関税を下げたいので原産地証明書を用意してほしい』と言われていました。ところが、船積みのバタバタで申請をすっかり忘れてしまい、気づいたときには商品はすでに出航してしまっていたのです。今からでも遡って発行(遡及発行)してもらうことはできますか……?」

 

「遡及発行」とは、船積みが終わった後でも、さかのぼって証明書を発行してもらうことです。

 

EPAを使ってバイヤーに喜んでもらおうとしていた矢先のトラブル。

 

担当者の方にとって、胃の痛い状況です。

 


2.課題


 

■ マニュアルを読んでも答えが見つからない

 

ご相談者の方は自力で解決しようと、日本商工会議所(原産地証明書の発行窓口)のマニュアルを読み込んだそうです。

 

しかし、通常の申請フローは詳しく書かれているものの、「船積み後にどうすればいいか」という遡及発行の具体的な手順や可否については、すぐには見つけられなかったとのことでした。

 

 

EPAの協定は国ごとにルールが細かく分かれており、実務経験がないと判断が非常に難しいのがこの「遡及発行」なのです。

 


3.対応


 

■ 日本商工会議所へ直接確認

 

まず、現状を正確に把握するため、日本商工会議所の窓口へ直接電話で問い合わせを行いました。

 

原則として、証明書は「船積みまで」に取得するのが鉄則です。

 

ただし、緊急時の救済措置として、多くの協定では船積み後でも「遡及発行」として証明書を発行できる仕組み自体は存在します。

 

しかし、遡及発行された証明書が、バイヤーの住む国の税関でスムーズに受け入れてもらえるかどうかは、また別の問題です。

 


4.結果


 

■ 還付申請から半年、いまだ「返金なし」

 

結局、その場では「大丈夫ですよ」という明確な答えは得られませんでした。

 

海外バイヤーを通じて輸入国の税関に問い合わせてもらいましたが、「ケースバイケースだ」「書類を見てみないとわからない」といった、あいまいな返事しか返ってきません。

 

最終的に、現地では一旦「通常関税(EPA適用前の高い税率)」で納税して通関を済ませ、後日、遡及発行された証明書を提出して差額を取り戻す「還付申請」を行うことになりました。

 

 

しかし、還付申請から半年が経過した現在も、バイヤーのもとへお金は戻ってきていません。

 


5.注意点


  

■ 船積み後発行は「イレギュラー対応」と心得る

 

実務上の重要な注意点をお伝えします。

 

特定原産地証明書の遡及発行は、EPAなどの各協定において「認められてはいるものの、基本的には想定外のイレギュラー対応」です。

 

手続きに少しでも不備があれば、「遡及発行」のスタンプが押された証明書を提出しても、現地の税関で受け付けてもらえないリスクが常に付きまといます。

 

 

「特定原産地証明書は、船積み前に必ず取得しておくこと」。これに尽きます。

 


6.行政書士としての視点


 

■ ダブルチェックの体制を整える

 

今回のケースを振り返ると、「船積み前の書類チェック体制」に課題がありました。

 

船積み時は、インボイス(請求書)の作成、検疫の手配、バイヤーへの連絡など、担当者は非常に忙しくなります。

 

そのような時こそ、フォワーダー(輸送を手配する業者)や行政書士のような外部の専門家に、船積み書類の最終チェックを依頼することをおすすめします。

 

 

第三者の目が入るだけで、こうした「うっかりミス」は大幅に減らすことができます。

 


7.食品商社勤務時代の経験から見た注意点


 

■ 税関が「還付」を嫌う理由

 

私が食品商社に勤めていた頃の経験から言えることがあります。

 

「輸入国の税関は、関税の還付手続きをとても嫌います。」

 

還付には膨大な事務作業が発生しますし、一度徴収した税金を返すことは、税関にとって好ましいことではありません。

 

そのため、審査が極端に長引くことがよくあります。

 

還付されるとしても半年、あるいは1年先になるのが当たり前です。

 

キャッシュフロー(手元の資金繰り)を考えれば、還付は最初から「期待しない」方が無難です。

 

繰り返しになりますが、船積み前に原産地証明書を入手すること。

 

これに尽きます。 

 


まとめ・次のステップ


 

いかがでしたでしょうか?

 

今回の事例から学べる教訓はシンプルです。

 

 

EPAの恩恵を確実に受けるなら、船が動く前に証明書を手にすること。」

 

 

もし、「自社で原産地の判定ができるか不安だ」「遡及発行の手続きが必要になってしまったが、どう進めればいいかわからない」という場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

食品輸出の専門家として、協定ごとの遡及ルールの確認から、商工会議所への申請代行、バイヤーとの交渉アドバイスまで、貴社の海外ビジネスを実務面から丁寧にサポートいたします。

 

関税の損失は、一瞬のミスで生まれます。

 

確実な手続きで、海外市場への挑戦を成功させましょう。まずはお問い合わせください。

 

お問い合わせは、下記からお願いします。

 

24時間以内に回答いたします。

 

行政書士には守秘義務がありますので、お問い合わせが公開されることはありません。