「海上運賃が上がって、輸出するたびに利益が削られていく……」
「CFR条件で見積書を出しているけれど、このままでは赤字になる。どう値上げ交渉をすればいいの?」
食品輸出に取り組む皆様にとって、自分ではコントロールできない「運賃の上昇」は深刻な問題です。
特に、輸出者が運賃を負担する条件(CFR建て)での取引では、見積もり時の想定と実際の支払額の差が大きなリスクになります。
【この記事でわかること】
・運賃が上がっても利益を守るための「見積書(オファー)の期間設定」
・海外バイヤーとの誤解を防ぐ「船積期間の明記」のポイント
・値上げ合意までの「逆ザヤ期間」を乗り切る実務的なコツ
1.ご相談内容
ある食品輸出者の方から、こんなご相談をいただきました。
「最近の世界情勢で、海上運賃が急に上がっています。
うちはCFR条件(運賃を輸出者が負担する条件)で見積書を出しているので、運賃が上がった分はそのまま自社の損になってしまいます。
今後の見積書では値上げをしなければいけませんが、どう進めればいいでしょうか?」
2.課題
■ 運賃上昇は世界的な流れ
海上運賃は、世界の経済情勢や航路の混雑状況によって大きく変わります。
現在の上昇は世界的な傾向であり、近いうちに落ち着く見通しは立っていません。
CFR条件を選んでいる以上、船積みまでの運賃変動リスクは輸出者が負うことになります。
つまり、「運賃が上がれば上がるほど、自社の利益が削られる」という構造です。
3.対応
■ 見積書に有効期間を明記して、値上げ分を上乗せする
率直に言って、運賃の上昇という外部の出来事を、輸出者一人の力で止めることはできません。
そこで私は、次のようにアドバイスしました。
「見積書に有効期間をしっかり明記した上で、運賃上昇分を適正に上乗せしたCFR価格で再提示(再オファー)しましょう」
値上げ自体は避けられませんが、「いつまで有効な価格か」を明確にしておくことが、後のトラブル防止につながります。
4.結果
■ 数ヶ月かけてバイヤーの承諾を取り付けた
交渉はすぐには終わりませんでした。
世界的な物流コストの現状を丁寧に説明し、「今回の値上げは適正な価格転嫁である」ことを粘り強く伝えた結果、数ヶ月後に海外バイヤーから承諾を取り付けることができました。
5.注意点
■注意点:見積書の期間設定は「長めに」が鉄則
実務上、特に気をつけてほしいのが「見積書の有効期間の設定」です。
1年単位など、一定の長さで設定することをおすすめします。
なぜかというと、海外バイヤーも値上げを受け入れるためには、その先の販売先に対して値上げ交渉をする必要があります。
そのため、承諾までに数ヶ月かかるのは普通のことです。
見積書の有効期間を短くしすぎると、ようやく値上げ交渉がまとまった時点で、もう「次の再交渉」が必要になってしまいます。
そうなると、「この会社はいつも値上げ交渉ばかりしている」という印象を与え、バイヤーとの信頼関係に悪影響が出かねません。
6.行政書士としての視点
■「船積期間」を文書に明確に書く
食品輸出の実務に詳しい行政書士として、特に強調したいのが「船積期間(=実際に船に積み込む時期)の明記」です。
たとえば、6月に受注した分でも、実際の船積みが10月と11月に分かれることがあります。
このとき、今回の値上げが
1)6月受注分すべて(10月・11月船積み分の両方)に適用されるのか
2)6月受注分のうち、10月船積み分だけに適用されるのか
3)6月受注分のうち、11月船積み分だけに適用されるのか
……という点を、契約書や見積書に明確に書いておかないと、後から「そんな話は聞いていない」というトラブルになりかねません。
「受注時期」と「船積時期」は別物です。
この点を丁寧に区分して書くことが大切です。
7.食品商社勤務時代の経験から見た注意点
■「逆ザヤ」は覚悟しておく
私が食品商社に勤めていた頃、最も苦労したのが「逆ザヤ」の処理でした。
逆ザヤとは、こういう状況のことです。
→ 輸送会社には「値上げ後の高い運賃」を支払っているのに、バイヤーへの請求はまだ「値上げ前の古い価格」のまま。
バイヤーとの値上げ合意ができるまでの間は、この「損が出続ける時期」がどうしても発生します。
実務的には、2〜3ヶ月はやむを得ないと割り切ることも必要です。
ただし、短くするための努力も欠かせません。
輸送会社に対して「値上げ開始の時期を少し後ろにずらしてもらえないか」と交渉することも、並行して行いましょう。
まとめ・次のステップ
いかがでしたでしょうか?
海上運賃の上昇から自社の利益を守るために、まず取り組むべき3つのポイントをまとめます。
1)見積書(オファー)には、必ず「有効期限」を具体的に記載する
2)CFR条件の場合、運賃変動を見越したバッファを価格に織り込む
3)受注時期と船積時期の関係を、契約書・インボイス等で明確に区分する
「バイヤーへの値上げ交渉に必要な根拠資料の作り方がわからない」
「運賃リスクを減らすために、今のインコタームズ(貿易条件)を変えるべきか迷っている」
そんなお悩みをお持ちの輸出者の方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
食品輸出の専門家として、見積書・契約書のチェックから、リスクを最小限に抑える貿易条件のご提案まで、幅広くサポートいたします。
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