「輸入した冷凍野菜から、基準値を大幅に超える農薬が検出されてしまった。これからどうなるのか?」
冷凍野菜を輸入した事業者様から、このような切実なご相談をいただきました。
食品を輸入する際には「食品等輸入届出書」の提出が義務づけられています。
いわゆる「食品届」です。
この届出後に国の検査が入り、基準違反と判定されると、その食品は日本国内で販売することができません。
このブログでは、実際の事例をもとに、違反が起きた後の対応の流れをわかりやすく解説します。
【この記事でわかること】
・基準値超過と判定された貨物を「廃棄」するまでの具体的な手続き
・厚生労働省のホームページに社名が公表されることで起きる影響
・再発を防ぐための農薬管理と、損害保険による備えの考え方
1.ご相談内容
■ 基準値10倍の残留農薬が発覚
今回のご相談者は、海外から冷凍野菜を輸入されている事業者様です。
貨物が日本の港に到着し、通常どおり食品届を提出したところ、国の計画に基づく「モニタリング検査」の対象となりました。
モニタリング検査とは、国が輸入食品の安全性を確認するために、定期的に実施する抜き取り検査のことです。
今回の検査項目は「残留農薬」でした。
結果は、日本の基準値(ポジティブリスト)の10倍もの農薬が検出。
検疫所から「食品衛生法違反」として通知を受け、国内への流通は一切認められない状況となりました。
選択肢は「廃棄」か「輸出国への積み戻し」の2つだけです。
2.課題
■ 迅速な行政対応と販売先への説明
輸出国へ貨物を送り返す「積み戻し」は、往復の運賃がかかる上に、相手国が受け入れを拒否する可能性もあります。
費用面を考慮し、今回は国内での「廃棄」を選択しました。
残念ながら、貨物の行き先はすでに決まっています。
ここからの課題は、「検疫所・税関への手続き」と「販売先への説明」を、いかに迅速かつ誠実に進めるか、という点に絞られます。
3.対応
■ 報告書の作成から廃棄完了まで
まず、検疫所に対して「事故報告書」を提出しました。
この報告書には、なぜ違反が起きたのか(原因)と、今後どうするか(再発防止策)を記載します。内容が承認されて初めて、廃棄の手続きに進むことができます。
廃棄(滅却)を行うには、あらかじめ税関長の「滅却承認」を得る必要があります。
この承認を取得することで、廃棄する貨物にかかる関税の支払いを免れることができます。
廃棄作業が完了した後は、廃棄業者から受け取る「廃棄物管理票(マニフェスト)」や、作業中に撮影した写真を添えて「措置完了報告」を検疫所に提出し、行政手続きを完了させます。
販売先に対しては、法違反により商品を納品できないことを、書面と対面の両方で誠実に説明しました。
4.結果
■ 金銭的損失と失われた信頼
迅速に手続きを進めたことで、余計な関税を支払う事態は回避できました。
しかし、輸入した野菜はすべて廃棄されたため、商品代金と廃棄費用の全額が損失となりました。
また、販売先の信頼を損なったことも避けられません。
「商品が届かない」という事態は、相手方の仕入れ計画や製造工程にも影響を与えます。
信頼を取り戻すには、長い時間と大きな努力が必要です。
5.注意点
■ 厚生労働省ホームページへの「社名掲載」の影響
食品衛生法に違反すると、厚生労働省のホームページ上の違反事例一覧に、社名・品名・違反内容が掲載されます。
掲載期間は原則として1年間です。
これが公開されると、他の取引先から「うちが買っている別の商品の農薬管理は大丈夫なのか?」という問い合わせが相次ぎます。
この問い合わせ対応が積み重なり、担当部署が疲弊してしまうことが、実際のところ最も大きなダメージになるケースが少なくありません。
6.行政書士としての視点
■ 食品輸入の行政対応は、すべて「文書」で行われます。
口頭でのやり取りだけでは手続きは進みません。
検疫所の担当者と早めに協議し、求められる内容を正確に反映した報告書を速やかに仕上げることが、手続きを長引かせないポイントです。
廃棄を確実に完了させ、次のビジネスへ向けた体制を整えることが、この局面での最優先事項です。
7.食品商社勤務時代の経験から見た注意点
■ 残留農薬の「ドリフト」とは?
残留農薬には「ドリフト(農薬の飛散)」という問題があります。
自社の農地では農薬を使っていなくても、隣の農地から風で農薬が飛んできて付着してしまう現象です。
これを完全に防ぐことは非常に難しいのが現実です。
現地メーカーに対して、出荷前の「ロット別自主検査」を継続的に実施・確認させることが、現実的な対策になります。
■ 損害保険の活用も検討を
「残留農薬基準超過による廃棄」リスクをカバーできる損害保険の特約付保を、検討する価値は十分にあります。
(下記に損害保険会社のホームページのリンクを貼っておきます)
すべての損害を補填できるわけではありませんが、廃棄費用や輸送費の一部がカバーされるだけでも、資金繰りへの影響を大きく和らげることができます。
保険内容と保険料とのバランスを考えながら、ぜひ一度ご検討ください。
まとめ・次のステップ
いかがでしたでしょうか?
今回の事例から伝えたいことは、「違反が起きてからの対応よりも、起こさないための準備がすべて」という点です。
・輸入前に、現地メーカーの農薬管理体制をしっかり確認する
・不合格となった場合のコスト負担や事前検査の実施を、サプライヤーとの契約に盛り込む
・万が一に備えて、損害保険(特約)を検討しておく
「日本の農薬基準をクリアできているか確認したい」
「現地メーカーへの管理指導をどう進めればよいかわからない」
このようなお悩みがある方は、ぜひ一度ご相談ください。
事前の備えが、貴社のブランドと利益を守ることにつながります。
お問い合わせは、下記からお願いします。
24時間以内に回答いたします。
行政書士には守秘義務がありますので、お問い合わせが公開されることはありません。
コメントをお書きください