「輸出は無事に終わった。でも、いつまで待っても品代が送金されてこない……」
せっかく海外進出に成功したと思っても、お金が回収できなければビジネスは成り立ちません。
実は、こうしたトラブルの多くは、輸出時に作成するたった一枚の書類、「INVOICE(インボイス)」の書き方に原因があります。
INVOICEとは、簡単にいうと「品代の請求書」のことです。
税関の手続きにも使う、輸出に欠かせない書類です。
この記事を読むことで、代金の未回収リスクを減らし、バイヤーと対等に交渉するための「請求の基本」を理解できます。
【この記事でわかること】
・代金回収が遅れるINVOICEに共通する、決定的な記載漏れ
・トラブルを未然に防ぐ、商談段階からの「支払期限」の決め方
・食品商社勤務経験を持つ行政書士が伝える、バイヤーとの交渉で押さえるべきポイント
1.ご相談内容
先日、ある食品輸出者の方からこのようなご相談をいただきました。
「初めての食品輸出で、海外のバイヤーへ商品を発送しました。ところが、到着後かなり時間が経っても品代が送金されてこないのです。よく確認してみると、輸出時のINVOICEにある支払期限の欄を空欄のままにしていました……。今さら催促してもいいのでしょうか?」
商品を無事に届けることに集中するあまり、「お金をもらうための手続き」が後回しになってしまったケースです。
2.課題
■ 空欄は「催促ナシ」のメッセージ
INVOICEに支払期限を記載しないのは、決定的なミスです。
INVOICEは、税関の手続きに使われるだけでなく、海外バイヤーにとっては「品代の請求書」としての役割を持っています。
ここに期限が書いていなければ、相手からすれば「ある時払いの催促ナシ」と思われても仕方がありません。
特に海外取引では、日本の「空気を読む」文化は通用しません。
書かれていないことは、約束されていないのと同じなのです。
3.対応
■ まずは「即電話」で合意を
ご相談者には、メールではなく「今すぐ海外バイヤーに電話すること」をアドバイスしました。
メールでの催促は後回しにされがちですが、電話で直接話すことで、こちらの緊急性が伝わります。
その上で、「今回は記載が漏れていたが、本来のルールとしていつまでに支払えるか」をその場で合意し、改めて日付を入れた修正INVOICEを送るよう指示しました。
4.結果
■ 今後のルール化に成功
幸い、今回のバイヤーは悪質な業者ではなく、単に「まだ払わなくていいと思っていた」だけでした。
支払日の最終的な合意はまだ調整中ですが、「今後は必ずINVOICEに支払期限を記載し、その期限を守る」というルールについて、バイヤーと正式に合意することができました。
5.注意点
■ 商談(見積書)の時点が勝負
実務上の重要な注意点は、「INVOICEを作る時になって期限を考えるのでは遅い」ということです。
支払期限は、「販売契約」の一部です。
船積みの直前ではなく、最初の販売見積書を提出する段階から、「船積み後30日以内」などの具体的な期限を明記し、交渉しておく必要があります。
6.行政書士としての視点
■ INVOICEは「世界共通の請求書」
食品輸出に詳しい行政書士としてお伝えしたいのは、「INVOICEは世界共通の請求書である」という自覚を持つことの重要性です。
請求書に支払期限を書くことは、国内取引でも当たり前の「基本」ですよね。
輸出になると、検疫や通関の手続きに目を奪われがちです。
しかし、商売の根幹である「請求」がおろそかになってはいけません。
INVOICEの1行を埋めるだけで、自社を守る根拠が生まれます。
7.食品商社勤務時代の経験から見た注意点
■ 魔の言葉「いつもどおり」
私が食品商社に勤務していた頃、商談でよく耳にしたのが「支払いはいつもどおりで」という言葉です。
これは便利な言葉ですが、実は大きな罠が潜んでいます。
売主であるあなたの「いつもどおり」は1か月先かもしれません。
しかし、買主であるバイヤーの「いつもどおり」は半年先かもしれません。
この認識のズレが、後に大きな金銭トラブルに発展するのを何度も見てきました。
「いつもどおり」を禁句にし、常に「具体的な日付」を数字で残すことが、プロの実務です。
まとめ・次のステップ
いかがでしたでしょうか?
■ 合意を必ず「文字」にする
食品輸出を成功させるために、今日から以下の3ステップを実践してください。
1.商談の初期段階で、具体的な支払期限をバイヤーと決める。
2.INVOICEには、その合意した支払期限を必ず記載する。
3.万が一遅れたら、即座に連絡を取る体制を整える。
「バイヤーとの契約書にどんな支払条件を書けばいいかわからない」
「海外への請求や代金回収の仕組みをイチから構築したい」
そんなお悩みをお持ちの輸出者の方は、ぜひ一度ご相談ください。
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