「日本でいつも通り作っているのに、海外バイヤーから『規格が違う』とクレームが来た」
「品代の支払いを止められてしまったが、何が正解かわからない」
このようなトラブルで頭を抱えていませんか?
食品輸出では、「いつも通り」や「お互いわかっているはず」という感覚が、最大の落とし穴になります。
この記事では、実際にあったご相談事例をもとに、規格書(食品の品質基準をまとめた書類)がなぜ大切なのかを、わかりやすくお伝えします。
【この記事でわかること】
・「従来通り」という言葉が、なぜ代金回収を遅らせるのか
・日本と海外の「基準の違い」を埋めるための、規格書のポイント
・担当者が交代したときに、必ずやっておくべきこと
1.ご相談内容
先日、ある食品輸出者の方から、こんなご相談をいただきました。
「長年取引している海外バイヤーから突然、連絡がありました。『今回の商品は従来と規格が違う。自社工場で使えるか不安なので、品代の支払いを待ってほしい』と言われてしまいました。
規格書(食品の品質基準をまとめた書類)は数年前に取り交わした記憶があります。しかし、その後、自社も相手側も担当者が変わっています。
バイヤーが言う『従来』が、いつの時点の、どの数値を指しているのか、お互いによくわかっていない状況です。どう対応すればよいでしょうか……」
2.課題
■ 規格書が整備されていなかった
今回のケースで、最も大きな問題は何だったでしょうか。
それは、「最新の規格書が整備・共有されていなかったこと」です。
食品輸出の売り契約(輸出者とバイヤーの間で交わす売買の約束)の基本は、「決めた品質のものを、決めた期日に届けて、代金をもらう」ことです。
規格書がない、または古いまま放置されている状態は、どこにゴールポストがあるかわからないまま試合をしているようなものです。
これでは、バイヤーに「品質が違う」と言われたとき、反論できません。
支払いを遅らせる口実を与えてしまいます。
3.対応
■ まず電話、それから文書化
私はご相談者に、次の3つのステップを迅速に行うようアドバイスしました。
【ステップ1】海外バイヤーにすぐ電話する
メールで「いつ払ってくれますか?」と聞く前に、まず電話で「何が問題なのか」を直接確認します。
【ステップ2】問題の項目を特定して、規格書に落とし込む
相手が「違う」と言っている項目(味・色・粘度・菌数など)を具体的に聞き取ります。
そのうえで、現時点での「正しい規格」を改めて文書(規格書)にまとめます。
【ステップ3】現品との照合をバイヤーに依頼する
新しい規格書をバイヤーに送り、「手元の商品と、どの項目が、具体的にどれくらい違うのか」をデータで示してもらうよう依頼します。
4.結果
■ 合意できたが、支払いは1か月遅れに
その後、改めて「規格書合わせ(規格の内容を双方で確認し合うこと)」をすることに合意できました。
品質の基準が明確になったことで、バイヤーも納得して工場での使用を再開しました。
ただし、品代の支払いは、当初の約束から1か月遅れとなりました。
一度「品質に疑問がある」という理由で支払いを止められると、確認作業に時間がかかります。
その間、手元のお金が足りなくなる(キャッシュフローの悪化)リスクがあります。
5.注意点
■「モノサシが違う」ことを知っておく
実務上、大切な認識があります。
「海外と日本では、品質の基準(モノサシ)が違う」ということです。
日本では「言わなくてもわかるだろう」という共通認識が成り立つことがあります。
しかし、海外ではその前提が通じないことがほとんどです。
違うモノサシでお互いの正しさを主張しても、議論は平行線のままです。
商談の早い段階から、具体的な品質基準を文書にまとめ、「共通のモノサシ(規格書)」として合意しておくことが、安全な取引の絶対条件です。
6.行政書士としての視点
■ 法的なリスクもあります
法的な観点から申し上げると、今回のケースは「品質に関する契約不適合責任(約束した品質と異なるものを届けたときの責任)」が問われるリスクがありました。
規格書が整備されていなければ、「意図した品質ではない」というバイヤーの主張に対して、法的に反論する根拠が持てません。
最新の「規格書合わせ」を行い、それを契約書の一部として位置づけることが、自社を守る法的な備えになります。
7.食品商社勤務時代の経験から見た注意点
■ 担当者交代は要注意
私が食品商社に勤務していた頃、最もトラブルが多かったのが「売主・買主ともに担当者が交代した直後」でした。
前任者が引き継ぎをしたつもりでも、規格書や合意内容がどこかへ行ってしまう。
これは貿易の現場ではよくあることです。
担当者が変わったタイミングこそ、手間を惜しまず現地に出向き(またはオンライン会議を行い)、改めて顔合わせと「規格書の再確認」を行ってください。
これが、後々の大きなトラブルを防ぐ、プロの知恵です。
まとめ・次のステップ
いかがでしたでしょうか?
確実に代金を回収するために、まず以下を確認してください。
・社内の規格書が、今の製品と一致しているか、またいつ合意したものかを確認する
・バイヤーとの商談で、新しい規格書を改めて提示し、「最新版」として合意を得る
・担当者が交代したときは、前任・後任・バイヤーの三者で規格書の内容を再確認する
「契約書に品質基準をどう盛り込めばいいかわからない」
「規格書の不備でクレームを受けて、困っている」
そんな不安をお持ちの輸出者の方は、ぜひ一度ご相談ください。
食品輸出の専門家として、契約書の確認から、品質トラブルを未然に防ぐ実務アドバイス、万が一の際の交渉サポートまで、貴社の安全な海外展開を全力でお手伝いします。
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