「いよいよ海外進出だ!と意気込んだものの、手続きが複雑すぎて何から手をつければいいかわからない……」
「通関業者に相談したら、検査やラベル作成が必要だと言われた。順番を間違えたら荷物が止まってしまうのでは?」
初めて食品輸出に挑戦する皆様、その不安はまったく当然のことです。
実務では、手続きの順番を一つ間違えただけで、港で荷物が何週間も止められたり、最悪の場合は全量廃棄になったりすることがあります。
この記事では、日本酒とお菓子という2つの品目を例に、日本での船積み準備から米国での通関完了までの「正しい順番」をわかりやすく解説します。
この記事を読めば、迷いなくスケジュールが組めるようになり、最短ルートで商品を海外バイヤーへ届けることができます。
【この記事でわかること】
・日本酒を米国へ輸出するときの、複数の役所をまたぐ手続きの流れ
・日本のお菓子を輸出するときに、最初に確認すべき「成分」と「表示」の注意点
・順番を間違えると取り返しがつかない「実務の鉄則」
1.結論:まず輸出先での準備を終えること
■結論(最初に答え)
食品輸出をスムーズに完了させるための最大のポイントは、「日本側の輸出手続きを始める前に、アメリカ側の輸入要件を100%満たしておくこと」です。
日本の税関を通すこと(輸出通関)は、実はそれほど難しくありません。
問題は、アメリカ側のルールです。
ライセンス取得、施設登録、ラベルの承認など、アメリカ側の準備が終わっていない状態で船に積んでしまうと、現地で荷物が止まってしまいます。
しかも、その後の対応に時間とお金がかかります。
「先にアメリカ側の準備を終わらせてから、日本で船積みする」これが、実務の大原則です。
2.実務での流れ・現場のホンネ
品目別に、実際の手続きの流れと現場でよくある勘違いを解説します。
(1)日本酒をアメリカに輸出する場合
アメリカでは、日本酒(清酒)は「ワイン」として扱われます。
このため、アルコール飲料を管理するアメリカ連邦政府の法律(FAA法)による厳しい規制がかかります。
【手続きのフローチャート】
① FDA(アメリカの食品医薬品局)への施設登録
日本の酒蔵が、アメリカのFDAという役所に「うちはこういう工場です」と登録します。
登録すると11桁の番号が発行され、この番号がないと輸出できません。
② アメリカ側の輸入者の確保
アメリカでお酒を輸入するには、TTB(連邦アルコール・たばこ・火器および爆発物取締局)という役所から「輸入基本許可」を受けたパートナーが必要です。
この許可を持つ輸入者を、日本から探して契約しておきます。
③ 成分検査とラベルの承認(COLA)
新しい銘柄を輸出する場合、TTBの研究所で成分を検査することがあります。
その後、ラベルの内容についてもTTBの承認(COLAと呼ばれます)を受けます。
注意点として、日本語で書かれた「お酒は20歳になってから」などの表記は、アメリカのラベル基準に合わないため削除が必要です。
④ 荷揚げする州のルール確認
アメリカでは、州によってお酒に関するルールが異なります。
ニューヨーク州やカリフォルニア州など、実際に荷物を受け取る州のライセンスや倉庫の要件を、
事前に確認しておきます。
⑤ 日本側の輸出通関
酒蔵から保税蔵置場(港や空港にある、通関前の荷物を預ける場所)へ商品を運びます。
インボイス(送り状)などの書類を準備して、日本の税関へ申告します。
⑥ FDA事前通知(Prior Notice)
船がアメリカに到着する前に、出荷のたびにFDAへ「こういう食品を送ります」と事前通知します。
この通知を忘れると、現地で荷物が保留になります。
⑦ アメリカでの輸入申告・関税の支払い
アメリカの税関(CBP)へ申告し、関税と連邦酒税を納付して荷物を引き取ります。
【現場のホンネ】
「純米酒か、アルコール添加酒か」で、アメリカでの税率がまったく変わります。
アルコールを後から添加した清酒は、アメリカでは「蒸留酒」扱いとなり、ワイン扱いより高い税率が課されます。
価格設定に直結する話なので、輸出を決める前に必ず確認しておきましょう。
(2)日本のお菓子をアメリカに輸出する場合
お菓子の場合、使っている原材料(小麦・米・乳製品など)に応じて、さまざまな「他の法律」が関係してきます。
まずこの確認を最優先に行うことが、実務の鉄則です。
【手続きのフローチャート】
① 食品添加物・残留農薬の適合調査
アメリカには、使ってよい食品添加物の種類が決まっています。
日本では認められている着色料などが、アメリカでは使用禁止になっている場合があります。
この確認を怠ると、現地で「廃棄命令」が出る可能性があります。
② 英語ラベルの作成
アメリカの基準に合わせた英語のラベルを、日本で貼り付けてから輸出します。
栄養成分表示の書き方、アレルギー物質の記載方法など、日本とは異なるルールがあります。
③ FDA施設登録
日本酒の場合と同様に、製造工場をFDAに登録します。
④ 植物検疫証明書の取得(必要な場合)
原材料に未加工の農産物(小麦粉や米粉ではなく、未加工の穀物など)が含まれる場合は、日本の植物防疫所で検査を受け、証明書を取得します。
⑤ 日本側の輸出通関
保税蔵置場に商品を搬入し、必要書類を揃えて申告します。
⑥ FDA事前通知(Prior Notice)
出荷のたびに実施します。日本酒と同様です。
⑦ アメリカでの輸入通関・FSVP
通関の際、アメリカ側の輸入者が「外国供給業者検証(FSVP)」という確認作業を行っていることが求められます。
これはFSMA(食品安全強化法)という法律に基づくもので、「この輸出元の工場は安全か」をアメリカ側が確認する制度です。
3.よくあるミス・注意点
実務でよくあるトラブルを3つ紹介します。
【ミス1】植物検疫証明書の「14日ルール」を超えてしまう(お菓子など)
植物防疫所で検査に合格し、証明書が発行されてから原則14日以内に輸出申告を完了しなければなりません。
物流の遅れでこの期限を過ぎると、せっかく取得した証明書が無効になります。
検査からやり直しになるため、スケジュールには余裕を持たせましょう。
【ミス2】FDA登録の「偶数年更新」を忘れる(日本酒・お菓子共通)
FDA登録は、一度やれば終わりではありません。
偶数年(2024年、2026年……)の10月1日から12月31日の間に更新手続きを行わないと、登録番号が失効します。
失効に気づかずに船積みすると、アメリカの港で荷物が保留となり、多額の倉庫保管料が発生します。
カレンダーに登録して、必ず管理しましょう。
【ミス3】インボイスとFDA事前通知の内容が微妙にズレている(共通)
FDAへの事前通知に入力した内容と、インボイス(送り状)の記載が少しでも違うと、システムエラーで通関が止まります。
特に、製造者名や住所の英語表記は、すべての書類で一字一句同じにそろえておく必要があります。
まとめ・次のステップ
いかがでしたでしょうか?
食品輸出の通関は、「日本のルール」と「アメリカのルール」を組み合わせる作業です。
日本酒もお菓子も、最初にすべきことは、「自社の商品がアメリカの基準(成分・ライセンス・ラベル)を満たしているか」を確認することです。
この確認が終わってから、はじめて日本側の船積み準備を進めます。
こんなお悩みはありませんか?
「うちのFDA登録は今でも有効なのか?」
「このお菓子の成分で、アメリカの税関を本当に通れるのか?」
「複雑な手続きを社内だけで回すのは限界だ……」
そうお感じの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
食品輸出を専門とする行政書士として、フローチャートの作成から、FDA登録・更新の代行、TTBへのラベル申請、輸送業者との連携まで、「初めての輸出」を実務面でサポートいたします。
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