「自社で原材料を直接輸入することになったが、万が一検査で不合格になったら、社名が厚生労働省のサイトに載ってしまうと聞いた。会社のブランドに傷がつくのではないか……」
初めての食品輸入プロジェクトを任された食品メーカーの購買部長様、こんにちは。
食品輸入の手続きを専門にサポートしている行政書士です。
食品メーカーにとって、原材料の安定調達と同じくらい大切なのが「企業の信用」です。
厚生労働省のホームページに掲載される「違反事例」には、輸入者の名称、つまり貴社の社名がはっきりと記載されます。
これが取引先や消費者の目に触れることを不安に思うのは、購買責任者として極めて健全な危機管理意識といえます。
しかし、この公表制度には「どのような場合に載るのか」「いつまで載るのか」という明確なルールがあります。
それを正しく理解し、事前に対策を講じることで、安全に輸入ビジネスを進めることができます。
【この記事でわかること】
✓ 社名が公表される基準と「1年間」という期限のルール
✓ 公表を免れるための「すぐに改善する」対応の重要性
✓ 社名を載せないための、輸入前に行う「原材料調査」の鉄則
それでは、詳しく解説していきます。
1.結論:不合格になると輸入者名は公表される
結論からお伝えします。
食品衛生法という法律に基づき、不合格になると輸入者の社名は公表されます。
ただし、「不合格が判明した時点ですぐに改善した」軽微なケースであれば、社名の公表が免除される場合があります。
最も大切なのは、商品が日本に届いてから「運を天に任せて」検査を受けるのではなく——
輸入する前の段階で、日本の基準に合っているかを徹底的に確認しておくことです。
2.概要・手続きの流れ
■ 概要
厚生労働省が「違反事例」を公表する目的は、食品の安全に関わる情報を広く明らかにし、国民の健康を守ることにあります。
【1. 公表される内容】
・輸入者の名称(貴社の社名)と所在地
・輸入した食品の品名、海外の製造者名
・どの法律に違反したか(例:使用が認められていない添加物の検出、農薬の残留基準値超過など)
・貨物への措置(廃棄、海外への送り返しなど)
・違反の原因と、その後の改善内容
【2. 公表の期間】
ここが重要なポイントです。
輸入者の社名については、「1年間に限り」公表されるというルールがあります。
一度載ったら一生消えないというわけではありません。
【3. 公表されないケース(除外規定)】
法律では、「違反が軽微で、直ちに改善が図られた輸入者」については、名称の公表を行わないことができるとされています。
要するに、「すぐに誠実な対応を取った」かどうかが、企業の評価を守る鍵になります。
■ 手続きの流れ
もし検疫所の検査で不合格となった場合、どのような流れで公表に至るのかを確認しましょう。
※検疫所とは:輸入食品の安全性を確認する、厚生労働省の出先機関のことです。
【ステップ1:法違反通知書の交付】
検疫所から「食品衛生法違反通知書」が発行されます。
この時点で、貨物は日本国内への流通が差し止められます。
【ステップ2:原因調査と再発防止策の報告】
検疫所から、違反が起きた原因の調査と、今後の再発防止策を報告するよう求められます。
・海外メーカーへ確認:原材料の確認不足や、日本の基準を知らなかったことが主な原因になります。
・報告書の提出:貴社がどのように改善するかを詳細に記載した報告書を提出します。
【ステップ3:違反貨物の廃棄または積戻し】
不合格となった原材料は、貴社の費用負担で「廃棄」するか「海外へ送り返す(積戻し)」ことになります。
その完了報告も必須です。
【ステップ4:ホームページへの掲載】
ステップ1〜3の情報が整理され、厚生労働省のホームページに順次掲載されます。
前述の通り、社名の公表期間は原則1年間です。
3.よくあるミス・注意点
特に警戒すべき「落とし穴」をまとめました。
【その1:「軽微な違反」を放置する】
書類のちょっとした不備やラベルの軽微なミスであっても、検疫所の指導を無視したり、改善を後回しにしたりすると「悪質」とみなされ、社名が公表されるリスクが高まります。
指摘されたことには、すぐに誠実に対応することが大原則です。
【その2:違反を繰り返す(違反率5%の壁)】
法違反を繰り返す輸入者は、特に厳しく監視されます。
違反率がおおむね5%以上になると、社名の公表だけでなく、「営業の禁止・停止処分」の検討対象となります。
これは企業の存続に関わる事態です。
【その3:海外メーカー任せの事前調査】
「メーカーが大丈夫と言っているから」という理由だけで輸入するのは、非常に危険です。
輸入者は、日本の製造者と同等の責任を負います。
具体的な化学名称が入った原材料表を入手し、自社または専門家が日本の基準に照らし合わせてチェックしなければなりません。
【その4:モニタリング検査中に原材料を使用してしまう】
※モニタリング検査とは:結果が出るまで通関を止めずに進める検査のことです。
この検査の結果が出る前に原材料を工場で使って製品化してしまうと、後から不合格が判明した場合に「全量回収」という最悪の事態になります。
社名公表以上に大きなダメージとなるため、絶対に避けてください。
【実務のアドバイス】
食品商社での勤務経験からお伝えすると、仮に通関を急いでいたとしても、モニタリング検査中は、結果が出るまで絶対に原材料を流通・使用しないことが鉄則です。
全量回収となった場合には、膨大なコストが発生します。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
厚生労働省による「違反事例公表」は、決して貴社をおとしめるための制度ではありません。
日本の食の安全を守るための、透明性確保の仕組みです。
社名の公表を防ぎ、ブランドを守るための最良の防衛策は、以下の3点です。
① 輸入前に、海外サプライヤーから製造工程表と詳細な成分表を取り寄せ、日本の法律への適合性を確認すること
② 不安な品目については、検疫所の「輸入食品相談指導室」で事前に無料相談を受け、アドバイスを得ておくこと
③ 万が一不合格になった場合は、専門家の助言を受けながら「すぐに改善」を行い、誠実な対応を検疫所に示すこと
食品輸入の世界では、「知らなかった」は通用しません。
「取り寄せた英文書類が日本の基準に合っているか判断できない」
「検疫所から改善報告を求められたが、どう書けば評価を守れるか」
「自社の管理体制が、営業停止リスクにさらされていないかチェックしてほしい」
そんなときは、ぜひ食品輸入の手続きに精通した行政書士にご相談ください。
当事務所では、輸入前の成分チェックから、検疫所との交渉、再発防止策の策定サポートまで、一括してご支援しています。
貴社のブランドと安全な原材料調達を守るために、プロの知恵を活用してみませんか?
食品の輸入届出や公表リスクへの対策でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
購買部長様の英断が、貴社の新しい成長の柱となることを心より応援しております。
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