「社長から『輸出に挑戦しろ』と言われたけれど、自社の商品が一体どこの国に売れる(輸出できる)のか、全く見当もつかない……」
販売部長の皆様、そのようなプレッシャーの中で一人悩んでいませんか?
「この食品はこの国に輸出できる」といった一覧表(マトリックス)があれば便利ですが、残念ながら世界中の膨大な規制を網羅した表は存在しません。
しかし、ご安心ください。
この記事を読むことで、「自力で輸出の可否を判断する具体的な方法」をマスターし、社長へ自信を持って進捗を報告できるようになります。
【この記事でわかること】
✔ 輸出の可否を左右する「他法令(たほうれい)」と「相手国の輸入規制」の調べ方
✔ JETROや農林水産省の公式サイトをフル活用する手順
✔ 輸出を成功させるために絶対に欠かせない「3つの証明書」の知識
1.結論:日本と輸出国の法令・基準を調べる
■結論(まず、答えをお伝えします)
食品を輸出できるかどうかを判断するには、次の3段階でチェックをするのが正解です。
① 日本から持ち出せるか
→ 日本国内の法律(他法令)の確認
② 相手国に持ち込めるか
→ 輸出先の国の輸入規制の確認
③ 現地で販売できる規格に合っているか
→ 添加物・残留農薬などの基準の確認
この3つを体系的に調べる方法を知れば、自社専用の「輸出可否マトリックス(どの商品がどの国に輸出できるかを整理した一覧表)」を作ることが可能になります。
2.概要・手続きの流れ
■概要(そもそも「他法令」って何ですか?)
食品の輸出では、税関の手続き(関税法)と同じくらい、いえ、それ以上に重要なルールがあります。
それが「他法令(たほうれい)」です。
要するに、「輸出するときに関税以外で必要になる法律上のルール」のことです。
たとえば、こんな具合です。
・お米を輸出する → 「植物防疫法(しょくぶつぼうえきほう)」という法律が関係します
・ハムやソーセージを輸出する → 「家畜伝染病予防法(かちくでんせんびょうよぼうほう)」が関係します
日本の税関は、これらの法律に基づいた許可や検査の証明が確認できない限り、輸出を許可しません。
つまり、「日本の法律」と「相手国の法律」、両方をクリアしなければ輸出はできないのです。
■手続きの流れ(4ステップで進めましょう)
販売部長であるあなたが、社内で「輸出可否」を判断するための具体的なステップを解説します。
【ステップ1】JETROの「品目別輸出ガイド」で全体像を掴む
まずは、JETRO(ジェトロ/日本貿易振興機構)のホームページにある「品目別輸出ガイド」をチェックしましょう。
JETROとは、政府が設立した貿易・投資の支援機関です。無料で利用できます。
ここには、主要な品目ごとに、どの国にどのような規制があるかが分かりやすくまとめられています。
まずここを見ることで、「そもそも輸出が禁止されている国」を早い段階で排除できます。
【ステップ2】農林水産省のサイトで詳しく調べる
次に、農林水産省のウェブサイトで、より詳細な条件を調べます。
◎ 農産物(野菜・果物・お茶など)を輸出する場合
→ 植物防疫所(しょくぶつぼうえきしょ)のホームページで、相手国が求めている検疫条件を検索します。
◎ 畜産物(肉製品・乳製品など)を輸出する場合
→ 動物検疫所(どうぶつけんえきじょ)のホームページで、取決めがある国を確認します。
また、放射性物質に関する輸入規制を設けている国・地域も現在一部存在します。この確認も忘れずに行いましょう。
【ステップ3】相手国の「食品の規格・基準」を調べる
日本では普通に使われている食品添加物でも、輸出先の国では禁止されている場合があります。
農林水産省が公開している「各国の食品・添加物等の規格基準」などの資料を参考に、自社商品の原材料が相手国の基準を満たしているかを確認しましょう。
【ステップ4】バイヤーを通じて現地当局に「最終確認」を依頼する
自社での調査には、どうしても限界があります。
商談中のバイヤー(現地の取引先)がいれば、そのバイヤーを通じて現地の税関や当局に「この商品は輸入可能か」を最終確認してもらうのが最も確実です。
このとき、「HSコード(エイチエスコード)」という商品の国際的な分類番号を伝えると、確認がスムーズに進みます。
HSコードにつては、別の記事で解説しています。
3.よくあるミス・注意点
初心者が陥りがちな「3つの落とし穴」をお伝えします。
【落とし穴①】「日本で売れているから、どこでも売れるはず」という思い込み
「日本で安全に販売されているのだから、他の国でも大丈夫だろう」と考えるのは、とても危険です。
残留農薬の基準値や、使用できる着色料などは、国ごとに驚くほど異なります。
事前確認を怠ると、商品が現地に到着してから「全量廃棄(すべて捨てること)」という最悪の事態になりかねません。
【落とし穴②】必要な「証明書」の準備不足
輸出では、商品を送るだけでなく、公的な証明書の提出が求められます。代表的なものを3つご紹介します。
◎ 植物検疫証明書・輸出検疫証明書
害虫や病気を他国に広めないための証明書です。
◎ 衛生証明書
衛生的に認められた施設で製造されたことを証明する書類です。
◎ 自由販売証明書
日本国内で正規に販売されている商品であることを証明する書類です。
これらの取得には、事前に施設の登録や検査が必要なケースもあります。余裕を持ったスケジュール管理が不可欠です。
【落とし穴③】「他法令」の問い合わせ先を間違える
「税関に聞けばなんでも教えてもらえる」と思っている方が多いのですが、注意が必要です。
税関は「他法令に該当するかどうか」の具体的な判断は行いません。
それぞれの担当省庁(農林水産省や厚生労働省など)に直接問い合わせる必要があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
自社商品がどの国に輸出できるかを判断するには、公的なデータベースを活用しながら、日本の他法令と相手国の輸入規制を一つずつ確認していく作業が必要です。
「調べ方はわかったけれど、自社商品の成分が複雑で判断に自信がない……」
「証明書の申請をどこから手をつければいいかわからない」
そんなときは、ぜひ行政書士にご相談ください。
食品輸出の専門家として、複雑な規制の調査代行から、検疫所・税関への書類作成、さらにはEPA(経済連携協定、要するに関税を下げる国際的な取決めのことです)を活用した関税削減のご提案まで、貴社の海外展開を実務面で強力にサポートします。
社長への報告を「できない理由」ではなく「こうすればできる戦略」に変えましょう。
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