「アメリカへの輸出が決まったけれど、製造は外部のOEM工場に任せている。この場合、FDA登録は誰がやるべきなのか?」
「商品の裏ラベルには『製造者』として自社の名前と住所を載せるけれど、それでも自社を登録しなくていいのか?」
「OEM工場から直接港の倉庫へ運ぶから、自社では荷物に一切触れない。この場合、登録が必要な施設はどこになるのか?」
初めてのアメリカ輸出に挑戦する食品メーカーの経営者様・担当者様として、このような「製造委託(OEM)」特有の疑問に悩まれていませんか?
OEM、つまり「他社の工場に製造を委託すること」は、自社設備なしで商品を作れる便利な方法です。
しかし、アメリカ向け輸出の手続きでは、この仕組みが原因で「誰が何をすべきか」が非常にわかりにくくなります。
アメリカのFDA(連邦食品医薬品局)のルールは非常に厳格です。
FDA、つまりアメリカ政府の食品・医薬品を管理する機関は、「誰の名前がラベルに載っているか」ではなく、「どの施設が実際に食品を扱ったか」を基準に判断します。
もし登録すべき施設が一か所でも漏れていれば、せっかく作った製品がアメリカの港で差し止められ、最悪の場合は破棄されてしまいます。
この記事では、食品のアメリカ輸出手続に詳しい行政書士の視点から、OEM輸出におけるFDA登録の正解と、見落としがちな「倉庫の落とし穴」について詳しく解説します。
これを読めば、法的なリスクを回避して、自信を持ってアメリカ市場へ商品を送り出すための「確かな体制」を整えられるようになります。
【この記事でわかること】
✔ OEM工場(委託先)と自社、どちらがFDA登録の主体となるべきか
✔ 商品ラベルの表記と、FDA施設登録の必要性が「一致しない」理由
✔ 製造工場以外に、通関のために「絶対に登録が必要な施設」の正体
1.結論:OEM先のFDA登録は必須
結論から申し上げます。
貴社がOEMで製造委託を行い、自社では一切食品に触れない場合、FDA登録に関する答えは以下の3点です。
【① OEM委託先(工場):登録が「必須」】
食品を実際に製造・加工・梱包する物理的な施設は、例外なくFDA登録番号(11桁の固有番号)を取得していなければなりません。
【② 貴社(ブランドオーナー):原則として登録は「不要」】
自社の施設で製造・梱包・保管を一切行わないのであれば、商社や販売業者と同様に、施設登録の義務はありません。
【③ 港頭倉庫(保管施設):登録が「必須」】
港頭倉庫とは、輸出前に商品を一時的に預かる港の倉庫のことです。
OEM工場から出荷された製品が船積みを待つために保管されるこの倉庫も、FDAの規制対象となります。
つまり、登録が必要なのは「OEM委託先の工場」と「港頭倉庫」の2か所です。
物理的に食品を扱わない「貴社」の登録は不要というのが、法律上の正解です。
2.概要・手続きの流れ
■ 概要
なぜ「ラベルに名前を載せる自社」ではなく「工場」の登録が優先されるのか、その仕組みを整理しましょう。
・FDA登録は「施設」に対するもの
FDA施設登録の目的は、万が一アメリカ国内で食品事故が起きた際に、その食品が「どの物理的な場所」で扱われてきたかを素早く追跡(トレーサビリティ)することにあります。
トレーサビリティとは、「食品の来歴をたどれる仕組み」のことです。
そのため、書類上の権利者である「販売元」よりも、実際に菌の混入や汚染のリスクがある「製造現場」の情報をFDAは求めているのです。
・ラベルの表記と登録は別問題
食品のラベルには、製造業者・梱包業者・販売業者の名称と住所を記載します。
貴社が「Manufactured for(〜のために製造)」や「Distributed by(〜により販売)」として記載されることは、アメリカの表示規則でも認められています。
しかし、これはあくまで「消費者に責任の所在を示す」ための表示です。
FDAの施設登録データベースとは連動していません。
要するに、「ラベルに名前が載っている=FDA登録が必要」ではない、ということです。
・「保管」という作業も登録義務の対象
FDAのルールでは、食品を「製造」「加工」「梱包」する施設だけでなく、「保管(Holding)する施設」も登録義務の対象に含まれています。
「自社では保管しないから安心」と思われがちですが、注意が必要です。
輸出のために一時的に預ける港頭倉庫が未登録であれば、そこから発送された瞬間に法令違反となります。
■ 手続きの流れ
OEM輸出を安全にスタートさせるための、実務的な4つのステップをご説明します。
ステップ1:OEM工場の登録状況を確認する
まず、委託先の工場が有効なFDA登録番号(11桁)を持っているか確認します。
確認すべき点は2つです。
①有効期限の確認
西暦の偶数年(2024年、2026年…)の10〜12月に更新(継続宣言)が済んでいるかを確認してください。
②英語表記の一致確認
工場の英語名や住所が、FDAへの登録情報と1文字の狂いもなく一致している必要があります。少しでもずれがあると、照合エラーになります。
ステップ2:港頭倉庫の登録番号を入手する
輸出に使用する港の倉庫がFDA登録済みかを確認し、その11桁の番号を入手します。
輸出時の「事前通知(Prior Notice)」の入力に必要となるためです。
事前通知とは、「この食品をアメリカに送ります」とFDAへ前もって届け出る手続きのことです。
製造工場の番号だけでなく、積み出し倉庫の番号も入力が必要です。
ステップ3:米国代理人の情報を確認する
米国代理人とは、FDA対応の窓口としてアメリカ国内に置く連絡担当者のことです。
OEM工場が登録している場合、その工場が指定している米国代理人の情報も把握しておきましょう。
万が一、工場が査察の対象になった場合や、登録内容の不備が指摘された際の連絡窓口となります。
ステップ4:事前通知(Prior Notice)を正確に入力する
実際に商品を発送する際、取得した「工場の登録番号」と「倉庫の登録番号」を正しくFDAへ通知します。
この入力を誤ると、荷物が港で止められる原因になります。
3.よくあるミス・注意点
OEM輸出において、特に対処を誤るとビジネスに直結する「落とし穴」を3つお伝えします。
【落とし穴1】「ラベルに書いた自社名」で事前通知を出してしまう
最も多い失敗は、事前通知の「製造者(Manufacturer)」の欄に、工場ではなく貴社の情報を入力してしまうことです。
FDAのシステムは、入力された登録番号と、そこに紐づいている工場の英語名称・住所を瞬時に照合します。
番号と名称が不一致であれば「虚偽の通知」とみなされ、アメリカの港で荷物が100%差し止められます。
【落とし穴2】「自社でボトル詰め・ラベル貼りをするだけ」というケース
もし、OEM工場が大袋(バルク)の状態で食品を作り、それを貴社の施設へ運んで、貴社がボトル詰めやラベル貼りを行う場合は注意が必要です。
この場合、貴社が行う作業は「最低限の活動」を超えた「梱包・加工」とみなされる可能性があります。
その場合は「OEM工場」と「貴社の施設」の両方の登録が必要になります。
【落とし穴3】OEM工場の「登録失効」に気づかない
工場側が「登録している」と言っていても、2年に一度の更新を忘れて、年明けに突然失効しているケースが多発しています。
「工場が登録済みと言っていた」だけでは安心できません。
FDAの管理画面(FIS)上で、登録状態が「VALID(有効)」であることを直接目視で確認することが不可欠です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
OEMでのアメリカ輸出は、自社設備なしで身軽に動けるメリットがある反面、他社の登録状況にビジネスの成否が左右されるリスクも抱えています。
この記事のポイントを整理すると、以下の通りです。
・実際に食品を製造するOEM工場は、必ずFDA登録が必要
・自社が物理的に食品を扱わず、倉庫も介さないなら、自社の施設登録は不要
・港の保管倉庫(Holding Facility)の登録番号も必ず確保すること
・事前通知には、ラベル表記ではなく「登録された工場の実名」を入力すること
こういったお悩みはありませんか?
「OEM工場が英語のシステムに詳しくなくて不安だ」
「工場の登録が最新ルールに合っているか、診断してほしい」
「複数の委託先工場の更新期限を、一括で管理してほしい」
当事務所では、貴社に代わって委託先工場のFDA登録状況を精査し、ID・パスワードの管理から、正確な事前通知のためのデータ整備まで、行政書士としてトータルでサポートしております。
せっかくの素晴らしい製品が、手続きの不一致によってアメリカの地を踏めないのは、あまりにももったいないことです。
万全のコンプライアンス体制でアメリカ進出を成功させるために、まずはお気軽にお問い合わせください。
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