海外バイヤーとの商談で、こんなことを言われたことはありませんか?
「輸入関税を下げたいから、EPA(経済連携協定)の活用に協力してほしい」
「協力したいけれど、具体的に何をすればいいのか分からない……」
「日本でどんな手続きが必要なのか、見当もつかない……」
そう悩んでいるうちに、せっかくの商談チャンスを逃してしまうのは、販売部長として最も避けたい事態でしょう。
この記事を読むことで、EPAを「単なる事務作業」ではなく「強力な営業武器」として使いこなせるようになります。
バイヤーのコスト削減を助けることで、成約率を大きく高めることができます。
まずは、この記事のポイントを整理しましょう。
【この記事でわかること】
✔ EPA活用の大前提となる「原産地」のルールと判断基準
✔ 日本で証明書を取得するための、具体的な3つのステップ
✔「知らなかった」では済まされない、リスクを回避する注意点
1.結論:輸出者が原産地証明書を取得すること
■ まず、結論からお伝えします
EPAを活用して輸出先の関税を下げるために、日本側(輸出者側)がすべきことは、ひとことで言うと次のとおりです。
「その食品が、協定上の『日本産品』であることを証明し、正しい方法で原産地証明書をバイヤーに届けること」
「日本製だから大丈夫だろう」と考えるだけでは不十分です。
協定ごとに決められた細かいルール(原産地規則)をクリアしていることを、客観的な書類で示す必要があります。
2.概要・手続きの流れ
■ そもそもEPAとは何ですか?(概要)
EPA(経済連携協定)とは、特定の国や地域との間で、関税の撤廃や削減を約束する特別な条約のことです。
要するに、「この国どうしで取引するなら、関税を安くしましょう」という約束事です。
バイヤーがEPAの活用を熱望するのは、関税というコストが下がることで、あなたの商品をより安く現地で販売でき、利益を最大化できるからです。
ただし、低い関税率(協定税率)を適用してもらうには、「その商品が本当に日本産であること」を、輸入国の税関に対して証明しなければなりません。
この証明を行う主役は、輸出者であるあなたの会社です。
バイヤーは、あなたの会社から提供される「原産地証明書」がなければ、関税の優遇を受けることができません。
■ 手続きの流れ(3つのステップ)
バイヤーからの要請に迅速に応えるための、具体的な流れを解説します。
【ステップ1】輸出先とのEPAの有無と、関税率を確認する
まず、輸出先の国と日本との間にEPAがあるかどうかを確認します。
令和7年現在、日本は多くの国とEPAを締結しています。
農林水産省の「EPA利用早わかりサイト」を使えば、あなたの商品(HSコード=品目番号)に対して、どれくらい関税が下がるのかを簡単に調べることができます。
【ステップ2】自社商品が「日本産」と言えるかどうかを確認する
ここが最も重要なポイントです。
「原産地基準」といって、EPA上で「日本産」と認められるための条件があります。
要するに、「どこで生まれた商品か」を証明するためのルールのことです。
単に日本で袋詰めしただけでは、日本産と認められない場合があります。
主に、以下のいずれかの基準を満たす必要があります。
①完全生産品
日本国内で収穫された野菜や、日本近海で獲れた魚など、最初から最後まで日本で作られたもの。
②原産材料のみから生産される産品
全ての原材料が、すでに「日本産」と認められているものだけで作られている場合。
③実質的変更基準
外国産の原材料を使っていても、日本での加工によって品目番号(HSコード)が大きく変わったり、特定の重要な工程を経ている場合。
要するに、「日本で十分な加工が行われた」と認められれば、日本産と判断される場合があります。
【ステップ3】正しい方法で「証明書」を準備する
協定によって、証明の方法が2種類あります。
①第三者証明制度
日本商工会議所に申請し、証明書を発行してもらう方法です。
多くの東南アジア諸国とのEPAなどがこの方式を採用しています。
②自己申告制度
商工会議所を通さず、輸出者や生産者が自ら「これは日本産です」と申告書を作成する方法です。
日EU・EPA、日英EPA、CPTPP(環太平洋パートナーシップ協定)などで採用されています。
どちらの方式かは、輸出先の国によって異なります。事前に確認しておきましょう。
3.よくあるミス・注意点
初めてのEPA対応で失敗しないための、実務上の注意点をご紹介します。
注意点① HSコードのずれに気をつける
HSコードとは、世界共通の商品分類番号のことです。
日本側で判断した番号と、バイヤー(輸入国の税関)が判断する番号が一致していないと、せっかく準備した原産地証明書が無効になってしまいます。
必ず事前にバイヤーと番号のすり合わせを行ってください。
注意点② 「証拠書類」の保管義務を忘れない
証明書を発行・作成したら終わり、ではありません。
その商品が本当に日本産であることを裏付ける書類(原材料の構成表や製造工程図など)を、数年間(多くは5年間)保管しておく義務があります。
もし後から輸入国の税関に「本当に日本産か調査する」と言われた際、証拠が出せないと、バイヤーが過去に遡って差額の関税を請求されるという大きなトラブルになります。
書類の保管は、地味ですが非常に重要な作業です。
注意点③ 最終判断は「輸入国の税関」にある
日本でどれだけ完璧に準備しても、最終的に関税を下げるかどうかを決めるのは相手国の当局です。
複雑な加工食品の場合は、バイヤーを通じて現地の税関に「事前教示」(あらかじめ判断をもらう照会制度)を行ってもらうのが最も安全です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
EPAへの対応は、一見すると「バイヤーのための面倒な書類作成」に見えるかもしれません。
しかし、バイヤーにとって「関税がゼロになる」という提案は、商品の味や品質と同じくらい、強力な魅力となります。
EPAをきちんと活用できれば、それ自体が大きな営業の差別化ポイントになります。
「バイヤーから協力を頼まれたけれど、原産地基準の判定が複雑すぎて自信がない……」
「商工会議所への登録や、自己申告書の書き方をイチから教えてほしい」
そんな時は、ぜひ行政書士にご相談ください。
食品輸出の専門家として、複雑な品目別規則の読み解きから、商工会議所への判定依頼、根拠資料の整備まで、「EPA対応できます」とバイヤーに自信を持って答えられるよう、実務全体をサポートいたします。
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