「アメリカへの輸出商談がまとまりそうだ! でも、商社から『事前通知(Prior Notice)』の準備をと言われた……」
「事前通知って、誰が、いつ、何を報告する手続きなんだろう?」
「もし手続きを間違えて、大切に造った日本酒がアメリカの港で止められたらどうしよう……」
はじめてのアメリカ輸出に挑戦する酒蔵の社長様として、次々と現れる新しい手続きに不安を感じていらっしゃることとお察しします。
アメリカの規制機関であるFDA(連邦食品医薬品局)の規制は非常に厳格です。
その中でも「事前通知(Prior Notice、略してPN)」は、荷物がアメリカに入るための「最後の関門」とも言える、とても大切な手続きです。
この記事では、食品のアメリカ輸出手続きに詳しい行政書士の視点から、事前通知の仕組みを「5つの疑問」に答える形でわかりやすく解説します。
これを読めば、事前通知の全体像がスッキリと理解でき、商社との連携もスムーズに進むはずです。
【この記事でわかること】
✔ 輸送手段(船・飛行機など)によって異なる「通知の締め切り時間」
✔ 酒蔵と輸出商社のどちらが「通知の手続き」をするのか、という役割分担
✔ 通関で荷物を止められないために、酒蔵側が用意すべき「必須情報」のリスト
1.結論:事前通知する項目と期限は決まっている
結論から申し上げます。
・だれが?
法律上は、必要な情報を持っている人であれば誰でも行えます。
ただし、実務上は仲介する輸出商社や、アメリカ現地の輸入業者・通関業者が手続きをするのが一般的です。
酒蔵の社長様が自分でシステムを操作する必要は、通常ありません。
・いつまでに?
荷物がアメリカに到着する「前」に完了させなければなりません。
船なら到着の8時間前まで、飛行機なら4時間前までという厳しい締め切りがあります。
・だれに?
アメリカの政府機関であるFDA(連邦食品医薬品局)に対して通知します。
・どのような方法で?
FDAの専用オンラインシステムを使って、インターネット経由で電子的に通知します。
紙の書類を郵送するわけではありません。
・何を?
製品の種類・数量・到着日時、そして最も重要な「酒蔵(製造施設)の11桁のFDA登録番号」などを通知します。
2.概要・手続きの流れ
■ 概要 ―なぜ、この手続きが必要なのか―
なぜ、荷物が届く前にわざわざ細かな情報を送らなければならないのでしょうか。
この制度は、2002年に制定された「バイオテロ法」という法律に基づいています。
要するに、アメリカ国内の食品の安全を守るための法律です。
万が一、食品に関わる事故やテロの疑いが発生した場合に、「どこで作られ、どこを経由してきた荷物か」をすばやく追跡できるようにするため、事前に情報を届け出ることが義務付けられています。
もし適切な事前通知がないまま荷物がアメリカの港に到着した場合、その日本酒は「通関拒否」や「差し止め(港の倉庫で足止め)」の対象となります。
大切に造った日本酒が、書類の不備だけで港に留め置かれてしまうのです。
■ 手続きの流れ ―5つのポイントを整理―
商社とのやり取りを想定した、実務的な5つのポイントを整理します。
1. 通知を行う主体(だれが?)
法律上は「情報を持っている人」なら誰でも行えますが、実際には輸出商社やアメリカの通関業者が手続きをするケースがほとんどです。
酒蔵側の役割は「自分でシステムを操作して通知する」ことではなく、「商社が通知するために必要なデータを正確に提供する」ことです。
つまり、社長様が担う最大の役割は「正確な情報を用意して渡すこと」です。
2. 通知の締め切り(いつまでに?)
輸送手段によって、FDAが通知を受理していなければならない期限が決まっています。
・海上輸送(船) :到着の 8時間前 まで
・航空輸送(飛行機) :到着の 4時間前 まで
・道路輸送(トラック):到着の 2時間前 まで
・国際郵便 :発送する前(小包に通知確認書を同封)
なお、システムへの入力は到着予定日の15日前(一部のシステムでは30日前)から可能です。
余裕を持って準備することが大切です。
3. 通知の宛先と方法(だれに?どうやって?)
アメリカのFDAへ通知します。
方法は、FDAの「輸入食品事前通知システム(PNSI)」またはアメリカ税関(CBP)のシステムを使って、インターネット経由で行います。
4. 通知する内容(何を?)
商社から提供を求められる主な情報は、以下の通りです。
【製造者の情報】
・酒蔵の11桁のFDA施設登録番号(これが最も重要です)
【食品の詳細】
・FDAが定める製品コード、一般名称、ロット番号
・数量(小さいパッケージ単位からコンテナ単位まで)
【輸送の情報】
・原産国(日本)、出荷国
・到着場所、到着予定日時、輸送会社名
【関係者の情報】
・荷主、輸入業者、最終荷受人の名称と住所
5. 酒蔵側が事前に準備しておくこと
商社から「この情報を出してください」と言われてから慌てないよう、上記の情報を日頃から整理しておくことをお勧めします。
特に11桁の施設登録番号は、すぐに提示できる状態にしておきましょう。
3.よくあるミス・注意点
手続き自体は商社がリードしてくれますが、酒蔵側として特に注意すべき「落とし穴」があります。
① 施設登録番号の期限切れ・更新忘れ
事前通知に使う「11桁の施設登録番号」は、常に有効な状態でなければなりません。
FDAの施設登録は 2年ごと(偶数年の10〜12月)に更新 が必要です。
更新を忘れると、翌年1月1日に番号が無効になってしまいます。
「去年、登録したから大丈夫」という思い込みが、通関トラブルの最大の原因のひとつです。
② 登録情報の「1文字」の違いが引き起こすトラブル
登録されている酒蔵の住所表記が、事前通知やインボイス(送り状)の記載と1文字でも異なると、システム上でエラーとなり、通関が止まることがあります。
また、社名や住所が変わった場合は、変更から 60日以内 に登録情報を修正しなければなりません。
③ サンプル品・ギフトにも通知が必要
「今回は展示会用のサンプルだから、事前通知はいらないだろう」という思い込みは危険です。
サンプル品やギフトであっても、アメリカの方の口に入る可能性がある食品であれば、事前通知は例外なく必要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
はじめてのアメリカ輸出における事前通知は、商社をサポートするための「正確なデータ提供」が成功の鍵です。
・事前通知は、FDAへ「到着前」に電子的に行う法的義務である。
・酒蔵の役割は、有効な「11桁の施設登録番号」と正確な「製品データ」を商社に渡すこと。
・船なら8時間前、飛行機なら4時間前という絶対的な期限を守る。
・2年ごとの更新忘れや、1文字の表記ゆれが通関停止の大きな原因になる。
・サンプル品やギフトにも事前通知は必要。例外はない。
「自社の施設登録が今も有効かどうか調べてほしい」
「商社から求められている情報の英語表記が合っているか確認したい」
「サンプル輸出の事前通知の手順を詳しく知りたい」
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当事務所では、酒蔵様に代わってFDA施設登録の有効性を精査し、不備のない事前通知(Prior Notice)を行うためのデータ整備から、2年ごとの更新管理まで、行政書士として専門的にサポートしております。
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