「おしゃれなカフェを開いて、店内で出す自家製ケーキをテイクアウトでも販売したい!」
そんな夢を持って開業準備を進めている方から、非常に多くのご質問をいただきます。
その中でも特に多いのが、こんな疑問です。
「飲食店の許可だけじゃダメなの?お菓子を売るための『菓子製造業』という許可も、別に取らないといけないの?」
もし許可が2つ必要だとしたら、保健所の審査基準も厳しくなります。
シンクを増やしたり、壁を作ったりと、内装工事費が大きく膨らむかもしれません。
逆に、「必要だ」と思い込んで余計な設備投資をしてしまうのも、小規模なお店にとっては大きな痛手です。
この記事では、法改正によって新しくなった「営業許可のルール」を、食品営業許可に詳しい行政書士がわかりやすく解説します。
読み終わるころには、あなたのお店に本当に必要な許可がどれなのかがハッキリわかります。
無駄なコストを抑えて、スムーズに開業準備を進めましょう。
【この記事でわかること】
✔ 飲食店が自家製ケーキをテイクアウト販売するときの「許可の正解」
✔ 2つの許可を1つにまとめられる「一施設一許可」という新しい仕組み
✔ テイクアウト販売を始めるときに、衛生管理(HACCP/ハサップ)で気をつけるべき点
1.結論:テイクアウトに製造業許可は原則不要
■ 結論
飲食店営業の許可があれば、自家製ケーキのテイクアウト販売に「菓子製造業」の許可は不要です。
ただし、条件があります。
「作ったその日〜数日以内に食べてもらうことを前提に、お店に来たお客様に直接手渡しで売る場合」に限られます。
要するに、「自分のお店で作って、自分のお店で直接売る」スタイルであれば、飲食店の許可ひとつで、ケーキのテイクアウト販売も認められるということです。
2.概要・手続きの流れ
■ 概要
なぜ以前は「許可が2つ必要」と言われていたのでしょうか?
実は2021年の食品衛生法改正(=食の安全に関する法律の見直し)より前は、自治体によって判断がバラバラでした。
同じ内容のお店でも、地域によっては複数の許可を求められることが頻繁にあったのです。
しかし現在は、事業者の負担を減らすために、ルールが整理されました。
「一施設一許可」という考え方が導入され、実態に合った許可をひとつ取得すれば、それに付随する業務も認められるようになっています。
要するに、「同じ厨房で作ったものを同じお店で売るなら、許可はひとつでいい」というルールです。
ここで重要になるのが、「調理」と「製造」の境界線です。
現在のルールでは、飲食店営業における「調理」の中に、次の考え方が含まれています。
・お店でお客様に飲食させること
・短期間のうちに食べることを前提に、食べられる状態に加工すること
「短期間のうちに消費される」かどうかの判断基準のひとつが、「作った人が消費者に直接手渡しで売る対面販売であること」です。
自分のお店で作ったケーキを、来店したお客様に直接手渡しで売るのであれば、それは飲食店としての「調理の一環」とみなされます。
そのため、別途「菓子製造業」の許可を重ねて取る必要はないのです。
■ 手続きの流れ
ケーキのテイクアウトを含む飲食店を開業する場合の、手続きの全体像をご説明します。
【1. 保健所への事前相談】
まず、改装工事を始める前に、管轄(=お店の住所を担当している)の保健所へ相談に行きましょう。
「店内でコーヒーとケーキを提供し、同じケーキをテイクアウトでも売りたい」と、具体的に伝えることが大切です。
飲食店営業の許可だけで進められることを、この時点で確認しておきましょう。
【2. 飲食店営業許可の申請】
施設の図面と、食品衛生責任者の資格証明書などを用意して申請します。
食品衛生責任者とは、お店の衛生管理を担う責任者のことです。
調理師免許がある方はそのまま兼任できます。
資格がない場合でも、各都道府県が実施する養成講習(1日程度)を受ければ取得できます。
現在の制度では、業種に関わらず守るべき「共通の施設基準」が定められており、これに沿った設備を整える必要があります。
【3. 施設の検査】
保健所の担当者がお店に来て、手洗い設備・冷蔵庫の温度計・区画などが基準を満たしているかチェックします。
【4. 衛生管理計画(HACCP)の作成】
許可を取るだけでなく、すべての飲食店に「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理」が義務付けられています。
HACCPとは、食中毒を防ぐために、食材の仕入れから提供までの各工程で危険なポイントを管理する考え方のことです。
テイクアウトを行う場合は、持ち帰り時の温度管理や消費期限の目安などを盛り込んだ「衛生管理計画」を作成し、日々の実施状況を記録する必要があります。
3.よくあるミス・注意点
① ネット販売や他店への卸売りを始めてしまう
飲食店営業許可だけでケーキを売れるのは、あくまで「自分のお店でお客様に直接販売する場合」に限られます。
次のようなケースは、「菓子製造業」の許可が別途必要です。
・ネットショップで全国に発送する
・近くのスーパーや雑貨店にケーキを卸して販売してもらう
飲食店許可だけでこれらを行うと、無許可営業として行政指導の対象になる可能性があります。
将来的にこうした販売を検討している場合は、最初から専門家に相談することをおすすめします。
② 食品表示(ラベル)を忘れてしまう
お客様に直接手渡しする対面販売であれば、パッケージへの細かいラベル表示(原材料・アレルギーなど)が免除される場合があります。
しかし、あらかじめケーキを箱詰めして陳列棚に並べて売る場合は、食品表示法(=食品のラベルに何を書くべきかを定めた法律)に基づいた正しい表示が必要になることがあります。
テイクアウトのスタイルによって表示の義務が変わるため、事前に確認しておきましょう。
③ テイクアウト用の衛生管理を怠る
店内で食べる場合と違い、テイクアウトは「お客様が持ち歩く時間」が発生します。
特に夏場の生クリームを使ったケーキは、食中毒のリスクが高まります。
HACCPの考え方に基づき、次のようなルールを決めて記録に残すことが重要です。
・「保冷剤をつける」
・「お渡し時に『〇時間以内にお召し上がりください』とお伝えする」
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「自分のお店で焼いたケーキを、来てくれたお客様にお土産として買って帰ってもらう」
この素敵なスタイルを実現するのに、2つの許可を心配する必要はありません。
基本的には「飲食店営業」の許可ひとつで、店内飲食とテイクアウトの両立が可能です。
ただし、「いつかはネットでも売りたい」「他のお店でも扱ってほしい」といった将来の展望がある場合は、最初から「菓子製造業」の基準に合わせた設備を作っておくと、後からの余計な出費を抑えられることもあります。
「自分のお店の場合、どちらの許可を取るのがベストか?」
「将来を見据えた、施設の図面についても相談したい」
そんなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
食品営業許可の専門家である行政書士が、あなたの理想のスタイルに合わせた最短ルートをご提案します。
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