「アメリカのバイヤーから突然、ラベルの不備で『輸入警告』になりそうだと連絡が来た……」
「ちゃんと確認していたはずなのに、いったい何がいけなかったのか。
ブラックリストに載ったら、もうビジネスは終わりなのか?」
日本酒をアメリカへ届ける輸出商社の経営者として、今まさに目の前が真っ暗になる思いをされていることと、心からお察しいたします。
アメリカの港で荷物が止まる。
しかも「ラベルの不備」という、一見すると単純な事務ミスに見える理由で、会社が「ブラックリスト(レッド・リスト)」に載る危機。
これは、単なる通関のトラブルではありません。
貴社のビジネスの信頼性を揺るがす、重大な事態です。
この記事では、米国輸出手続の専門家である行政書士の立場から、次の3点をわかりやすく解説します。
【この記事でわかること】
✔「輸入警告(インポート・アラート)」と「ブラックリスト」の仕組みと怖さ
✔ 日本酒のラベル表示で、アメリカの当局が厳しくチェックしている「急所」
✔ もしリストに載ってしまった場合に、解除を目指す具体的な5つのステップ
1.結論:輸入警告リストの解除は可能
■ 結論(最初にお伝えします)
FDA(アメリカの食品・医薬品を管理する連邦政府機関)の「輸入警告リスト」、いわゆる「ブラックリスト(レッド・リスト)」に載ると、貴社の製品はアメリカの港で「自動的に差し止め」の対象になります。
つまり、港に着いた瞬間に、中身を検査されることなく荷物がストップするということです。
ただし、絶望する必要はありません。
「原因の特定」→「ラベルの完全な修正」→「是正したことの証拠提出」→「5回連続で問題のない出荷実績を積む」
この流れを経ることで、リストからの削除(グリーン・リストへの移行)を申請できます。
また、今後は商社側が主導権を握り、仕入先の酒蔵に対してアメリカ特有のラベル規則を徹底させることが、唯一の再発防止策です。
その具体的な方法も、この記事で順を追って説明していきます。
2.輸入警告リストを回避・解除するには
■ 概要
1. 輸入警告(インポート・アラート)とは何か
「輸入警告」とは、FDAが「この食品は法律に違反している」と判断したときに出す、公式の警告文書のことです。
要するに、「この会社の製品は要注意」とFDAが公式にマークをつけるイメージです。
一度このリスト(レッド・リスト)に載ると、企業名・製品名がFDAのウェブサイトで世界中に公開されます。
そして「物理的な検査なしの即時差し止め(DWPE)」の対象となり、荷物は港で自動的にストップします。
2. なぜ「ラベルの不備」でブラックリストになるのか
日本では考えにくいことかもしれませんが、アメリカでは「ラベルの不当表示(misbranded)」は、体に有害な食品と同等の、重い法律違反として扱われます。
日本酒の場合、特に次の点が厳しくチェックされます。
① TTB(酒類・たばこ・税務を管轄するアメリカの政府機関)による規定
・アルコール度数の正確な記載
・政府が定めた飲酒に関する警告文(定型文)の記載漏れ
要するに、「お酒のラベルには書き方に厳格なルールがある」ということです。
② アレルゲンの表示
日本では表示義務がない「大豆」や「小麦」などの成分が微量に含まれている場合(または混入の可能性がある場合)に、英語での表記が漏れているケースがあります。
③ 栄養成分表示(Nutrition Facts)
「Added Sugars(添加糖類)」の記載など、アメリカの最新様式に従っていないと、違反とみなされることがあります。
3. サプライヤー(酒蔵)への説明のしかた
酒蔵に対しては、次のように伝えることが大切です。
「日本の基準では合格でも、アメリカの法律では『違反食品』として扱われる。
一度リストに載ると、二度と輸出できなくなる恐れがある。」
そして重要なのは、これは酒蔵の製造技術の問題ではない、という点です。
「アメリカのルールに合わせた、書類・管理の精度」の問題であることを、丁寧に理解してもらいましょう。
■ 手続きの流れ
リストへの掲載を回避・解除するための実務的なステップを、順番に説明します。
① FDAからの通知書を精査する
拘留の通知(Notice of FDA Action)に記載された「違反コード」を確認し、何が「不当表示」とされたのかを特定します。
まず「何が問題だったか」を正確に把握することが出発点です。
② ラベルを完全に修正し、再承認を受ける
指摘された箇所だけでなく、FDAおよびTTBの最新規則に照らして、ラベル全体を一字一句見直します。
必要に応じて、TTBのラベル承認(COLA)を取り直します。
③ 是正措置の報告書をFDAに提出する
「どのように問題を直したか」をFDAに報告します。
場合によっては、一時的に荷物を引き取ってラベルを貼り替える許可を得るなどの手続きが必要になります。
④ 「問題のない出荷実績」を積み上げる
リスト解除の条件として、「5回連続で違反のない商用出荷」を証明することが一般的に求められます。
各出荷時に、FDA承認の試験機関による検査結果を添付するなど、「もう違反はない」という証拠を地道に積み上げます。
⑤ リスト解除の申請(Petition)を提出する
実績が整ったら、FDAに対して正式に「レッド・リスト」からの削除と、「グリーン・リスト」への掲載を申請します。
3.注意点・よくある失敗例
■ 注意点・よくある失敗例
再発防止のために、サプライヤー管理で押さえておきたいポイントを3つ挙げます。
1.「前回は大丈夫だった」は通用しない
FDAの抜き打ち検査は突然行われます。
「今まではこのラベルで通っていた」という酒蔵の言葉は、正解の証拠にはなりません。
商社として、毎回インボイス(送り状)や事前通知の内容とラベルの内容が一致しているかを、ダブルチェックする習慣を持つことが重要です。
2. FSVP(外国供給業者検証プログラム)を形だけにしない
FSVPとは、「輸入者(商社)が、仕入先の酒蔵がアメリカの安全基準を守っているかを確認する義務」のことです。
要するに、「信頼して買うだけでなく、品質を確認する仕組みを作る義務がある」ということです。
具体的には、酒蔵に次のような書類を英語で提出させ、商社が定期的に評価・保存する必要があります。
・製造工程の説明書
・アレルゲン管理の計画書
・日々の清掃記録
これを怠ると、査察時に商社側の責任が問われ、さらに深刻な輸入禁止措置を受けることがあります。
3. FDAの査察を拒否させない
FDAは日本の酒蔵に直接査察に来ることがあります。
「英語がわからない」「忙しい」という理由でこれを拒否すると、その酒蔵は即座に輸入禁止リストに載ります。
「査察は断れない。断ればビジネスが終わる。」
この認識を、事前に酒蔵とはっきり共有しておくことが必要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
アメリカへの日本酒輸出において、輸入警告は大きな壁です。
しかし、正しいステップを踏めば、突破できない壁ではありません。
✔ 輸入警告に載ると「港での自動差し止め」が始まる、ビジネスの致命傷になる
✔ 解除には「5回連続のクリーンな出荷実績」と、粘り強いFDAへの申請が必要
✔ 今後は商社が主導し、FSVPに基づくラベル・品質管理の徹底をサプライヤーに求める
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当事務所では、輸入警告の回避に向けたラベルの適合性チェックから、是正に向けたアドバイス、さらにFSVPに基づく供給業者管理の仕組みづくりまで、行政書士として専門的にサポートしております。
せっかく見つけたアメリカの販路を、手続きの不備で失わないために。
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