「父が急に倒れたら、この店のお酒の免許はどうなるんだろう……?」
「高齢の父が、知り合いに店を譲ると言い出したけれど、私は継げなくなるの?」
代々続くお酒の小売店を営むご家庭で、このような不安を抱えている方は少なくありません。
お酒の販売には「免許」が必要です。
この免許は、お店の経営者であるお父様が、個人の名義で持っているもの。
実は、免許は自動的に息子さんへ引き継がれるものではありません。
しかし、ご安心ください。
適切な手続きを知っておけば、お父様が大切に守ってきたお店と免許を、しっかりと次世代へつなぐことができます。
この記事を読むことで、万が一の相続のときに慌てずにお店を続ける方法や、生前の事業承継で失敗しないための知識が身につきます。
【この記事でわかること】
✔ 父が他界しても、手続き次第でお店を続けられること
✔「他人に店を譲る」と言われたときの注意点と、息子さんが継ぐためのルール
✔ 将来の不安をなくすための「法人化(会社にする)」という選択肢
1.みなし免許
もし、免許を持っているお父様が亡くなられた場合、その免許は本来、その時点で効力を失います。
「え、では店をすぐに閉めなければならないの?」と思われるかもしれません。
でも、安心してください。
酒税法(お酒に関するルールを定めた法律)には、相続人を守るための「救済措置」が設けられています。
▼「みなし免許」とは?
お父様が亡くなった後、相続人である息子さんが「引き続きお酒の商売をしたい」と考えた場合、所轄の税務署長に対して「遅滞なく(※)」申告を行う必要があります。
※「遅滞なく」とは、「正当な理由がない限り、できるだけ早く」という意味です。明確な期限は定められていませんが、速やかな手続きが必要です。
この申告を正しく行い、息子さんご自身が法律で定められた「欠格事由(後述)」に当てはまらなければ、相続が発生した瞬間からお父様の免許を引き継いだものとみなされます。
これを「みなし免許」と呼びます。
要するに、「相続人がちゃんと申告すれば、免許が一時的に切れることなくお店を続けられる」という特例です。
▼通常の新規申請よりも、ハードルが低い
お酒の免許を一から新しく取得しようとすると、非常に厳しい審査があり、時間もかかります。
しかし相続の場合は、この審査の要件が緩和されているため、比較的スムーズに手続きを進められます。
▼ただし、これに当てはまると継げません(欠格事由)
「欠格事由(けっかくじゆう)」とは、「免許を持つことが認められない事情」のことです。以下に当てはまる場合は、みなし免許を受けることができません。
・未成年である
・過去に酒税法違反などで処罰されたことがある
・現在、別のお店で「酒類販売管理者(お酒の販売を管理する担当者)」に選ばれている
・破産手続きを受けて、まだ復権していない
まずは、ご自身がこれらの条件に当てはまらないか、確認しておきましょう。
2.生前の事業承継
お父様が元気なうちに、「もう引退するから、近所の知り合いに店を譲ろうと思う」と話し出すこともあるかもしれません。
そのとき、息子さんが「自分が継ぎたい」と思っているなら、早めに動くことが大切です。
▼他人への「譲渡」は、そのままではできない
酒類小売業の免許は、他人にそのまま引き渡すことができません。
たとえばお父様が「知り合いのAさんに店を渡す」と決めた場合、Aさんは新しく免許を取り直す必要があります。
そのうえ、お父様は今の免許を事前に取り消す手続きを行わなければなりません。
つまり、「免許ごとそのまま渡す」ことは、基本的にできないのです。
▼息子さんが継ぐなら「承継(しょうけい)」という方法がある
一方、「3親等以内の親族(親・子・兄弟姉妹・祖父母・孫など)」への引き継ぎは、「営業の承継」として認められています。
お父様が生前に引退し、息子さんに店を任せたい場合は、事前に税務署へ相談し、免許の切り替え手続きを進めることになります。
お店を休まずにスムーズに引き継ぐためには、早めの準備と計画が欠かせません。
「他人に譲る」という話が具体的に進んでしまう前に、まず親子でしっかりと将来の経営について話し合っておくことが、お店を守るための第一歩です。
3.法人成り(会社にする)を検討
今はお父様が「個人事業主」として免許を持っていますが、このままでは、将来また相続が発生するたびに複雑な手続きが必要になります。
そこで、今のうちに考えておきたいのが「法人成り(ほうじんなり)」です。
法人成りとは、個人で行っている事業を「会社(法人)」にすること。
そして、免許も会社の名義で取り直すことを指します。
▼法人成りのメリット
免許を「会社」が持つようにすれば、経営者がお父様から息子さんに代わっても、会社そのものが存続している限り、免許を取り直す必要がなくなります(代表者変更の届出などは必要です)。
相続のたびに手続きを繰り返すリスクが、大きく減らせます。
▼法人成りするときの主な条件
個人から法人へ免許を切り替えるには、以下の条件を満たす必要があります。
・今のお店と同じ場所で営業を続けること
・お店が1年以上、休止状態でないこと
・会社の新規免許申請と、お父様個人の免許取消申請を同時に提出すること
少し手間はかかりますが、今のうちに法人化しておくことで、将来の手続き負担やトラブルを大きく減らすことができます。
■あわせて確認!「酒類販売管理者」の選任も忘れずに
免許の手続きと並んで、忘れてはいけないのが「酒類販売管理者(さかるいはんばいかんりしゃ)」の選任です。
酒類販売管理者とは、お酒の適正な販売を管理するために、販売場ごとに必ず1名選ばなければならない担当者のことです。
息子さんがお店を継ぐ際には、「自分が酒類販売管理者になる」と申告書に記載する場面が出てきます。
このとき、選ばれる人は「過去3年以内に酒類販売管理研修を修了していること」が必要です。
まだ受講していない場合は、今のうちに受けておくことを強くおすすめします。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
酒類販売免許の手続きは、書類が多く、専門的な法律の知識も必要です。
「どの申告書を書けばいいの?」
「父が持っている免許の種類が特殊かもしれない……」
そんな不安を抱えたまま放置しておくのが、最大のリスクです。
私は行政書士として、これまで多くの酒販店様の「守るための手続き」をお手伝いしてきました。
「うちは大丈夫かな?」と少しでも気になられたら、まずは現状をお聞かせください。
お父様が守ってきたお店を、次の世代へ。
二人三脚で、大切なお店を未来へつなぐお手伝いをいたします。
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行政書士には守秘義務がありますので、お問い合わせが公開されることはありません。
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