こんにちは。食品や酒類の輸出手続・免許申請を専門としている行政書士です。
観光地で小売店を経営されている皆様、インバウンドのお客様への対応、毎日本当にお疲れさまです。
「近くの酒蔵の美味しいお酒を、外国人観光客の方にもっとお得に買ってもらいたい」
そう思ったことはありませんか?
じつは、日本酒などのお酒を外国人観光客に販売する場合、一般的な「消費税」の免税だけでなく、「酒税(しゅぜい)」——つまり、お酒にかかる税金——まで免税にできる特別な制度があるのです。
この制度をうまく活用すれば、外国人観光客にとっての価格的な魅力がさらに高まり、お店の大きな強みになります。
今回は、この仕組みと導入のポイントを、できるだけわかりやすく解説します。
【この記事でわかること】
✔ 消費税に加えて「酒税」まで免税になる「輸出酒類販売場制度」の概要
✔ 小売店がこの制度を使うために必要な「場所」と「管理体制」の条件
✔ 税務署への申請手続と、最近変わった「電子化ルール」の内容
1.輸出酒類販売場制度とは
まず、この制度の最大のメリットをお伝えします。
それは、外国人観光客に対して「消費税」だけでなく「酒税」も引いた価格で販売できるようになることです。
私たちが普段お店でお酒を買うとき、実は消費税のほかに「酒税」という税金も価格の中に含まれています。
たとえば、ビール350ml缶には約63円の酒税がかかっています(令和8年9月までの税率)。
日本酒にも同じように酒税がかかっています。
この酒税分を免除できれば、外国人観光客にとっては非常に大きなメリットになります。
「消費税だけでなく、酒税まで安くなる」——これが、今回ご紹介する制度の最大の特長です。
この「輸出酒類販売場制度」は、地方創生や日本産酒類のブランド価値向上を目的として導入されました。
いわゆる「酒蔵ツーリズム」を盛り上げるための目玉制度でもあります。
2.小売店が導入するための3つの重要なポイント
「自分の店でもすぐに始めたい!」と思われるかもしれません。
ただし、この制度には酒類を製造している酒蔵との密接な協力が必要です。
大事な順に3つのポイントで説明します。
★ポイント① この制度は本来「酒蔵(製造者)」のためのものである
まず知っておいていただきたいのは、酒税の免税が認められるのは「酒類製造者が、自ら製造したお酒を販売する場合」が原則だということです。
要するに、酒蔵が直接外国人観光客に売るケースを想定した制度なのです。
そのため、小売店がこの制度を利用するためには、単に酒蔵からお酒を仕入れて販売するのではなく、その酒蔵と密接に連携した形をとる必要があります。
★ポイント② 「場所」と「管理の仕組み」に厳しい条件がある
ご自身の小売店を「輸出酒類販売場」として認めてもらうためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
【場所の近さ】
お店が酒蔵(製造場)のすぐ近くにあること。
【同じ税務署の管内であること】
酒蔵とお店が、同じ税務署が担当するエリアにあること。
【一体的な管理】
お店が酒蔵によって管理されており、製造と販売が一体的に行われていると税務署に認められること。
——つまり、酒蔵が経営する直売所のような形であれば許可が下りやすいのですが、完全に独立した別の経営者が運営する小売店の場合、そのままでは酒税の免税販売はできません。
実現したい場合は、その酒蔵の販売場として位置づけるなど、経営上の工夫や酒蔵との契約が必要になる可能性があります。
★ポイント③ 免税で販売できるのは「その酒蔵のお酒だけ」
無事に許可が取れたとしても、お店で扱っているすべてのお酒が酒税免税になるわけではありません。
免税の対象となるのは、その許可を受けた酒蔵が製造したお酒で、かつ製造免許の品目と一致するものに限られます。
要するに、他のメーカーから仕入れたビールや、別の地域の日本酒などは、酒税免税の対象にはなりません。
この点は特に注意が必要です。
3.具体的な手続と最新のルール
条件をクリアできそうな場合、次のような手続を進めることになります。
【手続①】税務署への許可申請
まず、酒蔵の所在地を管轄する税務署長に対して「輸出酒類販売場許可申請書」を提出します。申請にはお店の見取図などの書類が必要です。
また、大前提として、消費税の免税店(輸出物品販売場)の許可を受けているか、または同時に申請する必要があります。
【手続②】免税販売の手続は「完全電子化」されている
令和2年4月から、免税販売の手続は電子化されました。
以前は紙の「購入記録票」を作成していましたが、現在は「酒類購入記録情報」という電子データを、インターネットを通じて国税庁に送信しなければなりません。
このためのシステム対応と、あらかじめ「提供方法の届出書」を税務署に提出しておくことも必須です。
【手続③】お客様への説明義務
免税販売を行う際には、外国人観光客の方に次のことを必ず説明しなければなりません。
・このお酒は、国外へ持ち出すために購入するものであること
・出国の際、税関でパスポートを提示しなければならないこと
・もし出国時にお酒を持っていなければ、免税分の税金を後で徴収されること
・日本国内で飲んではいけないこと(消耗品としての包装も必要です)
さらに、令和8年11月1日からは、制度の運用が変わる予定です。
現在はお店で最初から税抜き価格で購入できる仕組みですが、今後は一旦税込み価格を支払い、帰国時に空港などで払い戻しを受ける「リファンド方式」へ移行することが決まっています。
今後の制度変更にも、引き続きアンテナを張っておく必要がありますね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「酒税も免税」にできるこの制度は、インバウンド需要を取り込む強力な武器になります。
ただ、小売店様にとっては、酒蔵との連携や場所の条件など、クリアすべきハードルがあるのも事実です。
「うちの店の場合はどうなんだろう?」
「近くの酒蔵さんとどう相談すればいい?」
そんなお悩みがあれば、ぜひ当事務所へお気軽にお問い合わせください。
書類の作成から酒蔵様との調整、税務署への申請同行まで、行政書士として全力でサポートします。
インバウンドのお客様に、地元のおいしいお酒を最高の形でお届けできる日を、一緒に目指しましょう。
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