海外から新しい原材料を取り寄せて、自社工場でテストしたい。
そんなとき、まず必要になるのが「少量サンプルの輸入」です。
「サンプルだから、手続きも簡単だろう」
そう思っていると、税関で貨物が止まったり、予想外の費用が発生したりすることがあります。
この記事を読めば、海外の仕入先に対して「どんな書類を、どう準備してもらうか」を、自信を持って指示できるようになります。
無用なトラブルを防ぎ、原材料の評価・検討をスムーズに進めるために、ぜひ最後までお読みください。
【この記事でわかること】
✔ サンプル輸入に必要な書類の全体像
✔ 無料サンプルでも「価格」の記載が必要な理由と書き方
✔ 少量サンプルでも必要になる「検疫」の注意点
1.INVOICE
まず押さえておきたいのが、「インボイス INVOICE(仕入書)」の書き方です。
インボイスとは、品物の名前・数量・価格などを記載した書類で、輸出する国側で作成します。日本でいう「納品書兼請求書」のようなものです。
サンプルの場合、仕入先から「無料で送ります(No Commercial Value)」と言われることがよくあります。
しかし、日本の税関に輸入申告をする際は、たとえ無料であっても「税金を計算するための価格(課税価格)」を決めなければなりません。
価格が書かれていないインボイスでは、税関が税金を計算できず、貨物がそのまま止まってしまいます。
【仕入先への具体的な指示】
インボイスには、以下の3点を盛り込んでもらうよう伝えてください。
① 「無償」と「申告用価格」を両方書いてもらう
「No Commercial Value」(無償)とあわせて、「Value for Customs Purpose Only」(税関申告用の価格)と明記してもらいます。
これにより、「無料で提供しているが、税関手続きのために価格を記載した」ということが、書類上で明確になります。
② 妥当な金額を記載してもらう
価格がつかないサンプルでも、同じような商品の市場価格や製造原価を参考に、現実的な金額を書いてもらう必要があります。
「0ドル」や「0.01ドル」のような極端に低い価格は、税関から「この価格はおかしい」と疑われ、追加の説明書類を求められる原因になります。
③ 通貨の単位をはっきりさせる
米ドル(USD)なのか日本円(JPY)なのかを明記してもらいます。税関では、毎週公示される公式の為替レートを使って日本円に換算します。
2.INVOICE以外の必要書類
サンプル輸入でも、通常の輸入と同じ書類が必要になります。以下の書類が一つでも欠けると、通関手続きが止まってしまいます。
・包装明細書(パッキングリスト)
荷物がどのように梱包されているか、個数や重量を記録した書類です。
・運送状(輸送に使う証明書類)
航空便の場合は「航空貨物運送状(AWB)」、船便の場合は「船荷証券(B/L)」または「海上運送状(SWB)」が必要です。どちらも、輸送業者が発行する、荷物を運んでいることを証明する書類です。
・運賃・保険料の明細
輸入時の税金は、商品の代金だけでなく、日本に届くまでの送料や保険料も合算して計算されます。インボイスにこれらが含まれていない場合は、別途明細の準備が必要です。
【少額サンプルには税金が安くなる特例もある】
サンプルの合計金額が20万円以下の場合、「簡易税率」という簡略化された税率が使えることがあります。
また、一定の条件を満たす無償サンプルであれば、実際の航空運賃を使わず、より安い船便の運賃で計算できる特例があり、税金をおさえられる場合もあります。
コスト削減に直結する話ですので、覚えておいて損はありません。
3.食品衛生法と検疫は別の手続き
食品メーカーとして特に注意が必要なのが、食品衛生法と検疫の違いです。
①食品衛生法の届出:社内検討用なら不要
通常、販売目的で食品を輸入する場合は、検疫所に「食品等輸入届出書」を提出しなければなりません。
しかし、「自社工場での使用を検討するための少量サンプル(社内検討用・試験研究用)」であれば、この届出は不要とされています。
ただし、注意点が2つあります。
・そのサンプルを外部に配ったり、販売したりする場合は届出が必要です。
・税関から「なぜ届出が不要なのか」を確認されることがあります。
あらかじめ「確認願」などの書類を用意しておくと安心です。
②検疫:植物・動物由来の原材料は必ず確認を
食品衛生法の届出が不要でも、原材料の種類によっては「検疫」を受けなければなりません。
・植物検疫(野菜・果物・穀類など)
植物由来の原材料は、たとえ少量サンプルであっても、輸出国の政府機関が発行した「植物検疫証明書(Phytosanitary Certificate)」の添付が必要です。
この証明書がないと、日本の港での廃棄や返送を命じられます。
・動物検疫(肉製品・乳製品などの畜産物)
肉製品などの畜産物も、量に関係なく検査が必要です。輸出国の政府機関が発行する「検査証明書」がなければ、輸入できません。
【仕入先への念押しが成功の鍵】
「日本の検疫を通すために、貴国の政府機関が発行する検査証明書を、必ず荷物に同封してください」これを、サンプルを発送してもらう前に、はっきりと伝えておくことが大切です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
海外原材料の少量サンプル輸入を成功させるために、仕入先には次の3点を必ず伝えてください。
① インボイスには、無償でも「税関申告用の妥当な価格」と通貨を明記すること。
② パッキングリストと運送状を必ず用意すること。
③ 植物・動物由来の原材料には、輸出国の政府機関が発行する「検査証明書」を必ず添付すること。
この準備を怠ると、サンプルが手元に届くまでに多くの時間と手間がかかり、開発スケジュールが大きく遅れてしまいます。
「この原材料は検疫の対象になる?」「インボイスの価格をどう設定すればいい?」
そんなお悩みがあれば、ぜひ一度ご相談ください。複雑な法規制をクリアし、貴社の原材料調達をスムーズに進めるお手伝いをいたします。
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