食品メーカーの購買部長のみなさま、
海外から原料を輸入していると、こんな場面に直面することがあります。
「船の到着が遅れた。このままでは工場のラインが止まってしまう——」
航海日数が予想以上にかかり、入港が遅れる。
しかも、港に着いてからも、通関手続きが終わるまでは荷物を動かせない。
このような状況は、製造ラインを抱えるメーカーにとって、まさに死活問題です。
この記事では、輸入手続きを専門とする行政書士の立場から、そのピンチを乗り越えるための制度「BP(ビー・ピー)引取承認制度」をわかりやすく解説します。
最後まで読んでいただければ、通関の完了を待たずに原料を工場へ運び込み、製造ラインを守るための具体的な方法がわかります。
【この記事でわかること】
✔ 輸入許可が出る前に荷物を引き取れる「BP制度」の仕組み
✔ 申請に必要な「担保」の種類と、手続きの具体的な流れ
✔ 食品メーカーがこの制度を活用するときの注意点とリスク管理
1.BP引取承認とは時間の節約
まず、輸入の基本的なルールを確認しましょう。
輸入した貨物は、税関の「輸入許可」を受けるまで、港の保税地域(貨物を一時的に保管するエリア)から動かすことができません。これは法律で定められた原則です。
しかし、この原則を厳守するあまり、貨物を港に長く留め置くことが、ビジネスに重大な支障をきたす場合があります。
そのような事態に対応するために設けられた制度が、輸入許可前貨物引取承認制度(通称:BP=Before Permit)です。
この制度は、正式な輸入許可が出る「前」であっても、一定の条件を満たせば貨物を引き取ることを認める仕組みです。
最大のメリットは、ずばり「時間を節約できること」です。
税関の審査や検査に時間がかかる場合でも、この制度を活用すれば、審査が終わるのを待たずに原料を工場へ直送できます。
しかも、食品メーカーにとって非常に重要なポイントがあります。
税関では「工場の操業等に支障を来す場合」を、BP承認の正当な理由として明確に定めています。
つまり、御社のように「原料が届かないと工場が止まる」という状況は、この制度が想定しているまさにそのケースなのです。
2.担保の準備
BP制度を利用するうえで、絶対に押さえておきたいのが「担保(たんぽ)」の提出です。
税関の立場で考えるとわかりやすいと思います。
輸入許可が出ていない、つまり関税や消費税をまだ納めていない段階で貨物を渡すわけです。
万一、後から税金が払われなかった場合のために、事前に「保証」を求めることは自然なことです。
担保として認められるのは、主に次のものです。
・銀行などが発行する保証書
・金銭
多くの場合は、銀行に依頼して「保証書」を用意するケースが一般的です。
あらかじめ通関業者(税関手続きの専門家)と相談し、納めるべき税額をざっくりと把握したうえで、銀行と連携して準備を進めておくとスムーズです。
「保証書の準備ってどのくらい時間がかかるの?」という点も含め、余裕をもって早めに動き始めることが肝心です。
3.手続きの流れ
「使いたいけど、実際どう進めればいいのかわからない」という方のために、3つのステップで整理します。
ステップ①:必要書類の準備
まず、以下の書類を揃えます。
・輸入許可前貨物引取承認申請書(税関の様式:C-5400)
・仕入書(インボイス)
・担保提供書
インボイスは輸出者から受け取る書類です。担保提供書は、銀行の保証書などとセットで提出します。
ステップ②:税関への申請
書類と担保を税関に提出し、税関長の承認を受けます。
このとき、「なぜ許可前に引き取る必要があるのか」という緊急性の説明が求められます。
食品原料の場合であれば、「工場の操業に支障が出る」という理由を具体的に伝えることで、スムーズな承認が期待できます。
なお、現在はNACCS(ナックス)という国の電子システムを使ってオンラインで申請することもできます。
NACCSとは、税関や港湾に関する手続きを電子的に処理する国の情報システムです。通関業者がこのシステムを操作することが一般的です。
ステップ③:貨物の引き取り
承認が下りれば、輸入許可前であっても貨物を港から搬出できます。
そのまま工場へ向けて原料を出荷することが可能です。
【引き取り後の注意点】
「貨物を引き取って、工場も動き始めた。一安心!」
……と思いたいところですが、BP制度はあくまで「許可前の仮の引き取り」です。手続きが完全に終わったわけではありません。
引き取り後には、以下の点に注意が必要です。
・数量・価格が確定したら税関へ報告する
承認後、貨物の数量や価格が最終的に確定した段階で、その情報を税関に提出し、正式な「輸入許可」を受ける必要があります。
・引き取り後の貨物は「日本の荷物」として扱われる
BP承認を受けた貨物は、法律上「内国貨物(日本の荷物)」とみなされます。そのため、工場ですぐに使用しても問題ありません。
ただし、最終的に関税や消費税を納めなければ、預けていた担保から税金が差し引かれることになります。
・輸入許可が下りないリスクもゼロではない
万が一、最終的に輸入許可が下りなかった場合には、貨物の廃棄や再輸出を求められる可能性もあります。
そのため、この制度は「最初から輸入許可が確実に下りる見込みのある貨物」に使うことが大前提です。許可が下りるか不安な場合は、事前に専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
入港遅延による工場ピンチは、まさに時間との戦いです。
BP引取承認制度を適切に活用すれば、その危機を乗り越える強力な手段になります。
とはいえ、「担保の準備はどう進めればいいのか?」「自社のケースでBP承認が下りるのか?」「書類はどこに相談すればいい?」——実務では、こうした具体的な疑問が次々と出てくるものです。
「今回のようなトラブルを二度と繰り返したくない」
「もっとスムーズな輸入体制を整えたい」
そのようにお考えの購買部長様、ぜひ一度ご相談ください。
当事務所では、輸入手続きのご相談から書類作成のサポートまで、幅広くお手伝いしております。
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