アメリカでの食品展示会を目前にして、荷物が空港で止まってしまった——。
「空港には着いているのに、なぜ通関が終わらないのか」
「フォワーダー(貨物の手配業者)と連絡が取れない」
こんな状況に陥ったとき、多くの方は「誰が悪いのか」「自分には何ができるのか」がわからず、ただ時間だけが過ぎていく焦りを感じます。
この記事では、食品輸出の手続きを専門とする行政書士の立場から、今すぐ確認すべきポイントを3つに絞ってお伝えします。
【この記事でわかること】
✔ アメリカの通関で書類が不足しているときに確認すること
✔ 「誰が動くべきか」を決める貿易の責任ルールとは
✔ 遅延に対して業者に強く出るための国際ルールの使い方
1.必要書類が届いているか
日本のフォワーダーが「輸出書類に不備はない」と言っていても、安心するのはまだ早いです。
「輸出書類」とは、日本から荷物を送り出すための書類のこと。アメリカに入れるための「輸入書類」とは、別のものです。
アメリカ側で輸入手続きを進めるには、次の書類が必要です。
・インボイス(仕入書)
品名・数量・価格などが記載されたもの
・AWB(エアウェイビル=航空貨物運送状)
航空会社との運送契約書にあたるもの
・パッキングリスト(包装明細書)
荷物の中身と梱包方法の詳細
さらに、食品の場合は「アメリカの食品安全に関する規制」への対応が必要なことがあります。
事前に施設登録や事前通知(FDA届出)が済んでいない場合、通関が止まることがあります。
これらの書類データが、アメリカ側の税関や航空会社に正しく届いていないと、荷物は空港で止まったままになります。
まず日本のフォワーダーに連絡し、「アメリカ側の提携業者に、税関から追加の書類要求が来ていないか確認してほしい」と依頼してください。
2.誰が通関を手配するのか
連絡がうまくいっていない原因のひとつに、「責任の押し付け合い」があります。
国際貿易では「インコタームズ」と呼ばれる取り決めがあり、「どの段階まで売り手が責任を持つか」があらかじめ決まっています。
代表的なものを2つ紹介します。
【DDP(関税込持込渡し)の場合】
売り手(貴社)がアメリカでの輸入通関や関税の支払いまで手配する義務があります。フォワーダーは「最後まで責任を持って動く」契約になっているはずです。
【FCAやCPT(現地渡しや輸送費込み)の場合】
アメリカでの輸入通関は、買い手(展示会の主催者や現地代理店)側が手配する義務になります。
なお、航空輸送なのに「FOB」や「CIF」という船便用の条件を誤って使っているケースも実際にあります。これが混乱の原因になっていることもあります。
まずは、契約書やインボイスに書かれている「インコタームズの条件」を確認してください。
DDPなど貴社が通関まで負担する条件であれば、フォワーダーに対して「契約上、あなたが責任を持って現地業者と連絡を取る義務がある」と明確に伝えることができます。
3.国際条約による損害賠償
荷物の到着から5日が経過し、このまま展示会に間に合わなければ、多大な損失になります。
実は、国際的な航空輸送には「モントリオール条約」というルールがあり、荷物の遅延についても、航空会社は原則として賠償責任を負うと定められています。
賠償の上限は、貨物1kgあたり「19SDR(特別引出権)」という国際単位で計算されます(現在のレートで1kgあたり約2,800円ほど)。
そして重要なのは、「損害を避けるために必要な措置をすべて取った」と航空会社が証明できない限り、責任を逃れることができないという点です。
今回のように「連絡が取れない」「放置されている」状況は、その条件を満たしていません。
フォワーダーや航空会社に対して、次のように伝えてみてください。
「これ以上の遅延は、モントリオール条約に基づく損害賠償の対象になります。展示会に間に合わない場合の損失について、対応策を至急提示してください」
このひと言が、相手を動かす強力なカードになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今すぐやるべき「3つのステップ」です。
ステップ1:インボイスとAWB(航空貨物運送状)の控えを手元に用意する
ステップ2: 日本のフォワーダーに電話し、次の2点を確認する
・「アメリカ側の通関で、食品規制に関する追加書類の要求が来ていないか」
・「インコタームズ上、通関を手配する責任は誰にあるか」
ステップ3:「モントリオール条約の延着(遅延)責任」に言及し、事態の緊急性を相手に伝える
「専門用語が多くて交渉が進まない」「相手に言いくるめられてしまいそうで不安……」
そんなときは、食品輸出の手続きに精通した行政書士がお力になります。フォワーダーとのやり取りのサポートや、書類の法的チェックも承っております。
展示会の成功のために、ぜひ一度ご相談ください。
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