輸入契約書の「たった一行」で損をしないために
食品メーカーの購買部長のみなさまへ。
「いつもと同じ契約のはずなのに、なぜか荷物が大阪港に届いてしまった……。東京の工場まで陸送する費用で、今月の利益が吹き飛びそうだ」
そんな想定外のトラブルに、頭を抱えていませんか?
実はこのトラブル、契約書のたった一行、「CIF Japanese port」という曖昧な書き方が原因です。
この記事では、食品輸入の手続きを専門とする行政書士が、「なぜこうなったのか」「今できる対処法は何か」「次から同じ失敗をしないためにはどうすればいいか」を、わかりやすく解説します。
【この記事でわかること】
・なぜ「Japanese port」という書き方が危険なのか
・「CIF」という条件で、費用の負担はどこまでなのか
・大阪港に届いてしまったコンテナを、少しでも安く東京へ運ぶ方法
1.港の指定は具体的に
「Japanese port」は使ってはいけない
──港の指定は、必ず具体的な港名で
今回のトラブルの根本原因は、契約書に「CIF Tokyo port」と書くべきところを、「CIF Japanese port」と書いてしまったことです。
「Japanese port」とは、日本のどこかの港、という意味です。海外の仕入先からすれば、日本の港ならどこでも契約どおり、ということになります。
「それなら大阪港のほうが船の便がいいし、運賃も安い」と判断されても、契約上は文句が言えません。
海外の仕入先に落ち度はなく、正当な対応をしたことになります。
貿易の国際ルールである「インコタームズ2020」では、CIFは「指定した仕向港まで、運賃と保険料を売主が負担する」という条件です。
どの港に届けるかは、契約書にはっきり書いておく必要があります。
【対策】
今後は必ず「CIF Tokyo Port, Japan」のように、特定の港名まで明記してください。
「Japanese port」「Korean port」のような曖昧な書き方は厳禁です。
2.費用の境目と責任の境目
──CIFの意外な落とし穴
「CIFなんだから、東京まで運んでもらえるはずでは?」と思われる方も多いかもしれません。
しかし、CIFで売主(仕入先)が負担するのは、「指定した港に届けるまでの運賃と保険料」だけです。今回の場合、大阪港に届いた時点で、売主の費用負担は終わりです。
さらに、もうひとつ重要なポイントがあります。
「危険(リスク)の移転」については、費用の境目よりもさらに早く、「出荷港で船に積み込まれた瞬間」に、売主から買主(あなたの会社)に移ります。
つまり、こういうことです。
・費用の負担 → 大阪港到着まで(売主が負担)
・危険(損害の責任) → 出荷港で船積みされた瞬間から(買主が負担)
大阪から東京への陸送中に、万が一事故が起きたとしても、それはあなたの会社が負う責任です。海外の仕入先には請求できません。
この「費用の境目」と「責任の境目」がずれていることを知っているかどうかで、トラブル発生時の対応の速さが大きく変わります。
3.今できる対処法
では、すでに大阪港に届いてしまったコンテナは、どう対処すればよいでしょうか。
「とにかくトラックで東京まで」と焦るのは禁物です。距離が長いほど、陸送費用はかさみます。
以下の選択肢を比較検討してみてください。
①内航船を使う(国内海上輸送)
大阪港から、国内の船(内航船)に積み替えて東京港まで運ぶ方法です。陸送よりも時間はかかりますが、コストを大きく抑えられる場合があります。スケジュールに余裕があれば、まずこれを検討してください。
②保税輸送(OLT)を使う
大阪で輸入の通関手続きをせず、「外国の荷物」のまま東京まで運んで、東京で通関する方法です。難しそうに聞こえますが、要は「東京の使い慣れた通関業者に、そのまま任せられる」ということです。
手続きの混乱を防ぐ効果があります。
③食品の場合は、検査のタイミングも重要
食品の輸入では、食品衛生法にもとづく検査が必要です。
大阪の税関や検疫所と早めに連絡を取り、検査や手続きの滞留時間をできるだけ短くすることで、工場の操業スケジュールへの影響を最小限に抑えましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回のトラブルの原因は、「Japanese port」という曖昧な一行でした。
契約書の書き方ひとつで、陸送コストや工場の操業スケジュールに大きな影響が出ることがあります。
食品メーカーにとって、原材料の到着が遅れることは、工場の生産ライン停止という最悪の事態にもつながりかねません。
「うちの契約書、この書き方で大丈夫かな?」と少しでも気になった方は、ぜひ一度ご相談ください。
食品輸入を専門とする行政書士として、御社の契約書に「見えないコストリスク」が潜んでいないか、一緒に確認させていただきます。
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