初めての海外輸出、商品や価格の合意までこぎつけたとのこと、本当におめでとうございます!
販売部長として、大きな一歩を踏み出されましたね。
しかし、喜びもつかの間、バイヤーから「原産地証明書」を求められて、困惑されているのではないでしょうか。
聞き慣れない書類ですし、バイヤーに確認しても「とにかく必要だ」と言われるばかり……。
じつは、この書類への対応を間違えると、せっかく決まりかけた取引が台無しになったり、後から多額の税金を請求されたりするリスクがあります。
この記事では、貿易手続の専門家である行政書士が、初めて輸出に挑戦する食品メーカーの皆様に向けて、原産地証明書の全体像をわかりやすく解説します。
【この記事でわかること】
✔ バイヤーがなぜ原産地証明書を欲しがるのか、その本当の理由
✔ 種類が多くてわからない!自社が用意すべき証明書の「正解」
✔ 証明書をスムーズに取得するための、具体的な5つのステップ
この記事を最後まで読めば、正しい知識を持ってバイヤーと交渉できるようになります。
さらに、相手国での関税をゼロ(または大幅に軽減)にすることで、価格競争力を高め、取引を安定させることができます。
それでは、大事なポイントを順番に見ていきましょう。
1.どの証明書が必要か
バイヤーが「原産地証明書」と言うとき、実は大きく分けて2種類を指している可能性があります。ここを間違えると、せっかく用意した書類が使い物になりません。
【①「通常の」原産地証明書】
「この食品は日本で作られました」という、いわば"国籍"を証明するだけの書類です。
相手国の法律で義務付けられていたり、契約上の形式として求められたりする場合に使われます。
発行場所:お近くの商工会議所
【②「関税が安くなる」原産地証明書(特定原産地証明書)】
バイヤーが「関税を安くしたい」と考えているなら、間違いなくこちらを求めています。
日本と相手国の間で結ばれた「経済連携協定(EPA)」というルールを利用するための証明書です。
EPAとは、「お互いの国で関税を下げましょう」という国家間の取り決めのこと。
この証明書があれば、相手国でかかる関税がゼロになったり、大幅に安くなったりします。バイヤーにとっては仕入れコストが下がるため、非常に強力なメリットになります。
【まず確認すること】
バイヤーに「関税を安くするための証明書(EPA用)が必要ですか?」と確認してください。
もしそうであれば、次のポイントが重要になります。
2.3つの証明方法
EPAを利用する場合、「誰が証明書を発行するか」が国や協定ごとに決まっています。
ここが混乱の元になりやすい部分です。代表的な3つの形式を紹介します。
【A. 第三者証明制度】
日本商工会議所という公的な機関が、「この商品は間違いなく日本の原産品です」と判定して、証明書を発行してくれる形式です。
対象国の例:タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、マレーシアなど
初めての方には、この形式が最も一般的で、取り組みやすいといえます。
【B. 自己申告制度】
商工会議所などを通さず、輸出者(自社)や輸入者(バイヤー)が自分たちで「これは日本の原産品です」と書類を作成する形式です。
対象国の例:EU、イギリス、アメリカ、オーストラリア、CPTPP(TPP11)など
手続きは早いですが、証拠書類をすべて自社で揃えておく責任が伴います。
【C. 認定輸出者制度】
あらかじめ経済産業大臣から「認定」を受けた会社だけが、自分で証明書類を作れる形式です。
対象国の例:スイス、メキシコ、ペルー、RCEPなど
輸出先の国がどこかによって、A・B・Cのどのルートを通るべきかが決まります。
まずは輸出先の国名を確認することが、最初の一歩です。
3.取得までの5つのステップ
たとえば、バイヤーが「タイに輸出するので、関税が安くなる証明書が欲しい」と言ってきた場合、あなたは「特定原産地証明書」を取得する必要があります。
初めて取り組む方が踏むべきステップは、以下の通りです。
【ステップ1:商品の「分類番号(HSコード)」を特定する】
世界中のあらゆる商品は、6桁の数字(HSコード)で分類されています。
この番号によって、「関税がいくらになるか」「どんな条件を満たせば日本産と認めてもらえるか」が決まります。
注意点:自社が思っている番号と、相手国の税関が判断する番号が異なるケースがあります。バイヤーを通じて、相手国での輸入時の番号を確認してもらうのが確実です。
【ステップ2:関税が本当に安くなるか確認する】
そのHSコードの商品が、EPAによって関税が下がる対象品目かどうかを、税関やJETROのサイトで調べます。
【ステップ3:原材料の産地と加工工程を調べる】
「日本で製造したから日本産」と安易に考えてはいけません。
食品の場合、以下のいずれかのルールを満たす必要があります。
① 完全生産品
日本で収穫した野菜、日本で生まれ育てた牛の肉など、原材料から製品まですべて日本産であること。
② 関税分類変更ルール
外国産の原材料を使っていても、日本での加工によってHSコードが大きく変わればOK。
(例:外国産の野菜を日本で漬物に加工する)
③ 付加価値ルール
日本での加工によって、一定以上の付加価値が生まれた場合。
【ステップ4:企業登録と原産性の判定】
商工会議所のシステムに会社情報を登録します。
その後、「この商品はルールを満たした日本の原産品です」という判定を、システム上で申請します。
【ステップ5:証明書の発給申請】
判定が通ったら、いよいよ証明書の発行を申請します。
発行されたら原本をバイヤーへ送付して、手続き完了です。
■ 忘れてはいけない「5年間の保存義務」
証明書を発行して終わりではありません。その商品が本当に日本産であると判断した根拠資料(原材料の仕入書・製造工程表など)を、発行日から5年間保存しておく義務があります。
後日、相手国の税関から調査が入った際に資料が出せないと、バイヤーが免除されていた関税を遡って支払わされることになり、取引関係に深刻なダメージを与えます。
書類の整備は、取引を守るための「保険」だと考えてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
原産地証明書の手続きは、一度覚えてしまえば貴社の大きな武器になります。
しかし、初めて取り組む際は、HSコードの判定ミスや原材料の確認不足など、思わぬ落とし穴が少なくありません。
「バイヤーから急かされているけれど、書類に不備がないか不安……」
「原材料が多岐にわたる加工食品なので、原産性の確認が複雑で困っている」
そんなときは、貿易契約と手続きに詳しい当事務所へ、お気軽にご相談ください。
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