食品メーカーの販売部長さま、はじめまして。
サンプルが海外バイヤーに好評だったとのこと、本当におめでとうございます。
いよいよ本格的な輸出交渉のスタートですね。
でも、ここで一つ落とし穴があります。
「プロフォーマ・インボイス(仮の見積書)に、決済条件を書き忘れてしまった……」
そんな経験はありませんか?
「決済条件って、何を書けばいいの?」
「どの支払い方法が、うちにとって一番安全なの?」
この記事では、そんな疑問にお答えします。
【この記事でわかること】
✔ 貿易で使われる、主な3つの決済方法とそれぞれのメリット・デメリット
✔ 代金をしっかり回収するための、具体的な対策
✔ 決済方法を選ぶときに、失敗しないためのポイント
【まず知っておきたい】
インコタームズと決済条件は「別物」です
バイヤーから「インコタームズに基づいて条件を出してほしい」と言われた、という方も多いかと思います。
ここで一つ、大切なことをお伝えします。
インコタームズとは、「商品をどこで引き渡すか」「輸送費や保険料をどちらが負担するか」を決める国際的なルールです。
ところが、インコタームズには「どうやってお金を払うか」については、一切定められていません。
だからこそ、「決済条件」を別途、明確に決める必要があるのです。インコタームズを送っただけでは、支払い方法は何も決まっていない。
この点を、まず頭に入れておいてください。
1.決済手段 3つの方法
貿易では、「商品を送ったのに、お金が払われない」というリスクがあります。
これを防ぐために、主に3つの決済方法があります。
① 銀行送金(T/T決済)
国内の「銀行振込」と同じようなイメージです。手続きがシンプルで、現在の貿易取引で最もよく使われています。
▷ 初めての輸出で最もお勧めなのは「全額前払い」です。
商品を作る前、または船に積む前に代金を受け取れば、回収できないリスクはゼロになります。
▷ 反対に、「全額後払い」は要注意です。
商品だけ取られて、送金されないリスクがあるからです。バイヤーとの信頼関係が十分に築けるまでは、避けたほうが無難です。
② 信用状決済(L/C決済)
バイヤーの取引銀行が、「バイヤーの代わりに支払いを保証します」と約束してくれる仕組みです。
▷ メリット:
バイヤーが万一支払えなくなっても、銀行が支払いを保証してくれます。代金を回収できないリスクが、ぐっと下がります。
▷ デメリット:
銀行手数料が高くなります。また、銀行に提出する書類(船荷証券など)は、1文字のスペルミスも許されません。書類に不備があると、支払いが止まってしまいます。
初めての輸出では、この事務負担が大きくなることを覚えておいてください。
③ 荷為替手形決済(D/P・D/A)
銀行を通じて、「書類と引き換えに代金を払ってもらう」方法です。
▷ D/P(支払渡し):
代金を受け取ってから書類を渡します。比較的安全な方法です。
▷ D/A(引受渡し):
「後で払います」という約束だけで書類を先に渡します。輸出者にとってリスクが高いため、信頼関係のある相手との取引に限ることをお勧めします。
初めての輸出なら、まず「T/T決済の全額前払い」を交渉してみましょう。 それが難しい場合は、「L/C決済」を検討するのが定石です。
2.コスト・スピード・手間のバランス
決済方法を選ぶときは、「安全性」だけでなく、次の3つも考えてみてください。
①手数料はどちらが負担するか
銀行送金には、送金手数料や「リフティングチャージ」と呼ばれる費用が発生します。
日本国外で発生する銀行手数料は、バイヤー負担にすることをお勧めします。
契約書やインボイスに「Banking charges outside Japan are for the account of buyer.」と一文入れておくだけで、後のトラブルを防げます。
②輸送方法との相性
航空便で食品を送る場合、スピードが命です。 L/C決済や荷為替手形決済は、銀行経由で書類を送るため時間がかかります。
書類が届く前に商品が到着してしまい、バイヤーが荷物を引き取れない、という事態になりがちです。航空便の場合は、銀行送金(T/T)の前払いが最もスムーズです。
③事務作業の正確さ
L/C決済では、銀行へ提出する書類の正確さが非常に重要です。ミスがあると「ディスクレ(書類不備)」となり、支払いが遅れたり止まったりします。
初めての輸出でL/C決済を選ぶ場合は、専門家のサポートを受けることをお勧めします。
3.貿易保険の活用
どんなに注意しても、防ぎきれないリスクがあります。
たとえば、バイヤーの突然の倒産、相手国での戦争や大規模なデモ、外貨不足による送金規制……。
こういった「自社ではコントロールできないリスク」をカバーしてくれるのが、日本貿易保険(NEXI)の貿易保険です。
中小企業向けには、手続きを簡略化した「中小企業・農林水産業輸出代金保険」もあります。
▷ 支払いが3ヶ月以上遅れた場合や、バイヤーが倒産した場合に、代金の最大95%程度を補填してもらえます。
▷ 後払いにせざるを得ない場合や、取引金額が大きい場合には、この保険の活用を強くお勧めします。
ただし、事前にバイヤーの与信審査(信用調査)が必要ですので、早めに準備を始めてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
バイヤーへの返信で押さえたい3つのポイントです。
・まず「T/T決済の100%前払い」を提案する
→ コストが最も安く、手続きもシンプルです
・難しい場合は「L/C決済」または「前払いと後払いの組み合わせ」を交渉する
・為替リスクを抑えるため、できれば「円建て」での決済を求める
貿易の契約条件は、一度決まると変更が難しいものです。
「英文の書き方がわからない」
「バイヤーとの交渉をどう進めればいいか不安」
「貿易保険の手続きを代行してほしい」
そんなときは、ぜひ専門家にご相談ください。
当事務所では、食品メーカー様の海外進出を、契約書の作成から手続きの代行まで、トータルでサポートしています。
丹精込めて作られた食品が、安全に世界へ届くよう、全力でお手伝いいたします。
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