食品メーカーの購買部長のみなさま、こんにちは。
「原材料の到着が2週間も遅れて、工場の操業スケジュールが狂ってしまった」
そんな経験はありませんか?
原因を調べてみると、輸送の途中で荷物が別の船に載せ替えられていた——いわゆる「積み替え」が行われていたことがわかった、というケースが少なくありません。
しかも、事前に何も取り決めていなければ、契約上は「ルール違反ではない」というのが、貿易の世界の怖いところです。
この記事では、「積み替え」による到着遅延を防ぐために、契約書にどう記載すればよいかを、食品の輸入契約に詳しい行政書士がわかりやすく解説します。
【この記事でわかること】
✔ 積み替えを禁止するための「具体的な契約の書き方」
✔ 「直接運送」を義務付けることの重要性
✔ 信用状(L/C)を使う場合に潜む「見落としがちな落とし穴」
■「積み替え」とは何か? まずここから
「積み替え」とは、船積みした港から日本に到着するまでの間に、一度船から荷物を降ろし、別の船に乗せ替える作業のことです。英語では「Transshipment(トランスシップメント)」と呼ばれます。
積み替えが発生すると、次の船のスケジュール待ちが生じるため、到着が大幅に遅れるリスクがあります。
そして重要なのは、事前に取り決めていなければ、運送会社(キャリア)は自社の都合で積み替えを行うことができる、というルールが貿易の世界では一般的だという点です。
つまり「直接来ると思っていたのに、なぜ積み替えを?」という抗議は、通らないケースがほとんどなのです。
だからこそ、契約書への明記が必要になります。
1.契約書に「詰め替え禁止」と書く
まず最初にやるべきことは、契約書または注文書に「積み替え禁止」を明記することで。
英語では次のように記載します。
Transshipment: Not Allowed(積み替え:不可)
これを書くことで、仕入先(輸出者)は必ず「日本への直行便」を手配しなければならなくなります。
逆に言えば、これを書いていないと、仕入先が自社の都合のよい船を自由に選べてしまいます。積み替えが生じても、契約上は問題なし、となってしまうのです。
まず、この一文を必ず入れる——これが第一歩です。
2.直接運送
次に意識していただきたいのが、「直接運送(Direct Transport)」という考え方です。
日本が多くの国と結んでいるEPA(経済連携協定)というルールでは、関税の優遇を受けるための条件として、貨物が「直接運送」されることが原則として求められています。
もし他国を経由して積み替えが行われた場合、その国で不必要な加工がされていないかなど、非常に厳しい証明が必要になります。
この点を仕入先に伝える際は、こんな言い方が有効です。
「関税手続きの都合上、積み替えなしの直接運送(Direct Transport)が必須条件です。」
「単なる希望」ではなく「法的・制度的な必要性」として伝えることで、仕入先も受け入れやすくなります。
今回、EPAを使わない場合でも、「直接運送」というキーワードを契約書に入れておくことで、仕入先が直行便を手配するよう強く促す効果があります。
3.信用状の「例外規定」
もし今回、銀行を通じた「信用状(L/C)」という決済方法を使う場合は、さらに一つ注意が必要です。
ここに、意外と知られていない「落とし穴」があります。
銀行の国際的なルール(UCP600)では、信用状に「積み替え禁止」と書いてあっても、貨物がコンテナに入っている場合に限り、積み替えが記載された書類(船荷証券)を銀行が受理してよい、という例外規定があります。
つまり、普通に「積み替え禁止」と書いただけでは、コンテナ貨物の場合は積み替えが銀行手続き上は許されてしまうことがあるのです。
これを確実に防ぐには、契約書や信用状の条件に、次の一文を追加することが有効です。
「UCP600第20条(c)項を適用除外とする」
これを明記することで、コンテナ貨物であっても例外なく積み替えを禁止でき、銀行も積み替えが記載された書類を受け付けなくなります。
少し専門的な内容ですが、L/C取引をお使いの場合は、ぜひ押さえておきたいポイントです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ポイントを整理すると、次の3つになります。
✔ 「積み替え禁止(Transshipment: Not Allowed)」を契約書に明記する
✔ 「直接運送(Direct Transport)」を条件として盛り込む
✔ L/C取引の場合は「UCP600第20条(c)項の適用除外」まで手当てする
この3点を契約書に盛り込むことで、仕入先は直行便を手配せざるを得なくなります。
工場の操業スケジュールを守るための、確実な一手です。
「英語の契約文をどう作ればいいかわからない」
「仕入先から『航路の事情で積み替えが必要』と言われたら、どう対応すればいいか?」
そんなお悩みがあれば、ぜひ一度ご相談ください。
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