食品メーカーの販売部長さん、海外バイヤーとの交渉がいよいよ契約の段階に入ったのですね。お疲れさまです。
「インコタームズ(INCOTERMS)に基づいた英文の売買契約書を送ってほしい」
そう言われて、戸惑っていませんか?
「インコタームズって、そもそも何?」
「英文の契約書なんて、作ったことがない…」
そんな不安を感じているのは、部長だけではありません。
この記事では、インコタームズの基本を、専門知識ゼロの方でもわかるように整理しました。
読み終えるころには、「自社がどこまで責任を負えばよいのか」を自信を持って判断できるようになります。
予期せぬ費用の発生やトラブルを防ぎ、海外バイヤーとの最終合意に、落ち着いて進めるはずです。
【この記事でわかること】
✔ インコタームズとは何か? 費用・リスク・義務の分担を決める世界共通のルール
✔ 英文契約書に「最新版(2020年版)」と明記すべき理由と、その書き方
✔ インコタームズだけでは決まらない、食品輸出特有の大事な契約項目
1.インコタームズとは
インコタームズとは、国際的な売買取引において、
売る側(輸出者)
買う側(輸入者・バイヤー)
この両者が「どちらが、何を、どこまで負担するか」をあらかじめ決めておくための、世界共通の用語集です。
国際商業会議所(ICC)という国際機関が定めており、世界中の貿易で使われています。
アルファベット3文字の記号(例:FOB、CIFなど)で表され、おもに次の3つを明確にします。
① 義務の分担(誰が何をするか)
荷物の運送を誰が手配するか。保険は誰がかけるか。輸出や輸入の許可はどちらが取るか。こうした役割分担を決めます。
② リスクの移転(万が一のとき、どちらの責任か)
運送中に荷物が壊れたり、紛失したりした場合に、どちらの損害になるか。その「責任が移るタイミングと場所」を明確にします。
③ 費用の負担(誰がいくら払うか)
運賃・梱包費・荷役費、そして食品特有の検査費用などを、どちらが支払うか。
これを事前に決めておかないと、こんなトラブルが起きます。
「そんな費用がかかるとは聞いていなかった!」
「運送中のトラブルはうちの責任ではないはず!」
インコタームズは、こうした言った・言わないの紛争を防ぐための「取り決めの共通言語」です。
2.契約書には「2020年版」と必ず明記する
インコタームズは、時代の変化に合わせて改定されてきました。現在、最も新しく、世界標準として使われているのは「2020年版(Incoterms® 2020)」です。
海外バイヤーから「FOBで」と言われたとしても、契約書に単に「FOB」とだけ書くのはNGです。
なぜなら、旧版(2010年版など)と2020年版では、細かい解釈が異なる場合があるからです。
契約書には、必ず次のような文言を入れてください。
"Trade terms used in this contract shall be interpreted in accordance with Incoterms® 2020 published by the International Chamber of Commerce (ICC)."
(この契約における貿易取引条件は、国際商業会議所(ICC)が定めるインコタームズ2020に従って解釈されるものとする)
「どの版のルールを使うか」を特定することが、英文契約書作成の第一歩です。
また、インコタームズには全部で11種類の条件があります。食品の種類や輸送手段によって、最適なものが変わります。
主な条件は以下のものです。
FOB: 本船渡し在来船・バラ積み輸送
FCA: 運送人渡しコンテナ輸送全般
CIF: 運賃保険料込み売り手が運賃・保険を負担する場合
CPT:輸送費込みコンテナで売り手が運賃を負担する場合
どの条件を選ぶかは、自社の物流体制や、バイヤーとのコスト負担のバランスによって決めることになります。
3.インコタームズだけでは決まらないこともある
ここが非常に重要なポイントです。
インコタームズは、あくまで「配送とリスクの分担」を決めるルールです。貿易契約のすべてをカバーするものではありません。
以下の項目は、インコタームズの対象外です。
・商品の所有権がいつ移転するか
・代金の支払い方法・通貨・タイミング
・契約違反があったときの解決方法(仲裁・裁判など)
・食品の品質基準、異物混入・リコール時の責任分担
・自社ブランドや知的財産の扱い
特に食品輸出では、輸出先国の法律や規制(添加物の基準、残留農薬の基準など)をクリアしていることを、どちらが保証するか。万が一、規制違反が発覚したときに誰が責任を取るか。こうした点も、契約書にしっかり盛り込む必要があります。
インコタームズは「とても便利な部品」です。しかし、それだけで契約書は完成しません。
「英文の売買契約書」には、インコタームズによる配送条件を核心に置きながら、食品メーカーとして守るべき権利と義務を、英文でしっかり盛り込んでいく必要があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
販売部長さん、初めての英文契約書作成は、単なる翻訳作業ではありません。
「自社の利益と権利を守るための、法的な盾を築く作業」です。
「インコタームズの選び方を間違えて、思わぬ費用を負担することにならないか?」
「英文の表現で、自社に不利な条件が紛れ込んでいないか?」
そんな不安を感じたとき、ぜひ専門家を頼ってください。
行政書士は、食品輸出の実務と契約書作成のプロフェッショナルとして、部長の会社のパートナーになります。
✔ バイヤーとの条件交渉へのアドバイス
✔ 自社を守る英文売買契約書の作成・リーガルチェック
✔ 食品輸出に必要な各種証明書の取得サポート
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