自社で輸出を試みたものの、言葉の壁や交渉力の問題で足踏みしてしまう。そんなケースは、決して珍しくありません。
そこで注目したいのが、「商社を使う方法(間接輸出)」です。
この方法を使えば、複雑な輸出の手続きはすべて商社にお任せできます。
請求・支払いも日本円で行われるため、為替の心配もほぼ不要です。
つまり、言葉や実務の不安を解消しながら、本来の仕事である「良い商品づくり」に集中できるようになります。
ただし、商社に丸投げするだけでは、なかなか成果は出ません。
この記事では、商社を通じた輸出を成功させるために、ぜひ知っておいてほしい3つのポイントをお伝えします。
食品の輸出手続きを専門とする行政書士として、日頃からメーカー様の海外展開をサポートしている立場から、現場目線でお伝えします。
【この記事でわかること】
✔ 輸出商社を活用するメリットと、注意すべき落とし穴
✔ 海外で売れるための「賞味期限」と「品質管理」のリアルな基準
✔ 商社を本当のパートナーにするための、メーカー側の具体的な準備
1.間接輸出の特性
商社に依頼する前に、間接輸出の特性をきちんと把握しておきましょう。
メリットだけを見て進めると、後から「こんなはずじゃなかった」となりかねません。
①商社を使う主なメリット
・輸出書類の作成(インボイス、パッキングリストなど)を任せられる
・船や航空機の手配もすべておまかせ
・日本円での取引が多く、代金回収や為替のリスクを抑えられる
・海外バイヤーとのトラブル交渉も、商社が間に立ってくれる
②気をつけたいデメリット
・現地での売れ行きや消費者の声が届きにくくなる
・商社の手数料分、現地での販売価格が高くなりやすい
③成功のためのポイント
・商社に「任せきり」にしないこと
担当者とこまめに連絡を取り、現地の販売状況や競合情報を積極的に把握するようにしましょう。
商社は「物流と商流のプロ」ですが、商品の魅力を一番知っているのはメーカー様ご自身です。
その強みを、商社と一緒に活かしていく姿勢が、成功への近道になります。
2.海外基準をクリアする
商社を通じて輸出できたとしても、商品が海外の基準を満たしていなければ、現地の店頭には並びません。
特に「賞味期限」は、多くのメーカー様が最初につまずくポイントです。
①賞味期限は「最低1年以上」が基本:
日本国内では賞味期限6ヶ月の商品でも、海外輸出では「1年以上」を要求されることが一般的です。 なぜかというと、船で輸送して現地の倉庫に届くまでに、約2ヶ月かかることがあるからです。
たとえば、賞味期限6ヶ月の商品を輸出したとします。
倉庫に届いた時点で残りは4ヶ月。
さらに、多くの現地小売店では「賞味期限の半分を過ぎた商品は棚から外す」というルールがあります。
そうなると、実際に販売できる期間は、たった1〜2ヶ月しか残りません。
これでは、商社も販売に困ってしまいます。
②賞味期限を延ばすための対策:
・包材の見直し:
酸素や湿気を通しにくい素材への変更、脱酸素剤の活用を検討する
・水分活性の調整:
配合を変えずに水分活性を下げることで、賞味期限を延ばせる場合がある
③品質管理の取り組みも欠かせない:
「HACCP(ハサップ)」という衛生管理の仕組みをご存知でしょうか?
食品を製造・加工する工程での危害を未然に防ぐための管理手法で、日本でもすでに制度化されています。
海外のバイヤーが取引先を選ぶ際、HACCPへの取り組み状況は重要な判断基準のひとつです。
「建物を改修しないといけないの?」と心配される方もいますが、まずは「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」の徹底から始めるだけでも、品質管理のレベルは大きく変わります。
3.販促ツールの準備
ここが、成否を分ける最も重要なポイントです。
忘れてはいけない事実があります。
「国内の商社には、最終的な販売先への決定権がない」 ということです。
商社の担当者は、現地のバイヤーや小売店に対してあなたの商品を売り込みます。
しかし、商品の魅力を100%伝えるのは、言葉の壁もあって、非常に難しいことです。
だからこそ、メーカー側が「商社が使える販促ツール」を準備することが重要になります。
【用意しておきたいツールの例】
①英語(または現地語)の商品資料:
日本語のカタログだけでは、バイヤーには何も伝わりません。シンプルでよいので、英語版を用意しましょう。
②1分程度の紹介動画:
言葉が通じなくても、製造へのこだわりや食べ方・使い方が一目でわかります。スマートフォンで撮影したものでも十分です。
③レシピや使用事例の提案:
「日本でのベストセラー商品」「現地料理へのアレンジ例」といった情報は、バイヤーが最も喜ぶコンテンツです。
商社の先にいる「本当の買い手」が何を求めているかを考え、彼らが納得できる情報を揃えること。
それができれば、商社も自信を持って提案できるようになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「自社では限界があるから、商社にお願いしよう」という判断は、決して逃げではありません。
プロの力を借りるのは、賢明な経営判断です。
ただし、商社への依頼は「輸出のスタート」であって、「ゴール」ではありません。
今回お伝えした3つのポイント、
✔ 間接輸出のメリット・デメリットを正しく理解する
✔ 賞味期限の確保とHACCPに基づく品質管理
✔ 商社が使える販促ツールをメーカー側で用意する
この準備をしっかり整えることで、商社という強力なエンジンを最大限に活かすことができます。
「今の包材で賞味期限は延ばせるのか?」
「HACCPって、何から始めればいいの?」
こうした疑問や不安は、ひとりで抱え込まないでください。
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