食品を海外から輸入したところ、税関の手前にある「植物防疫所」からストップがかかり、「植物検疫証明書(フィトサニタリー・サーティフィケート)を提出してください」と言われてしまった——。
「そんな書類、持っていない…」「このままでは荷物が届かないのでは?」と、不安になっているかたは少なくありません。
じつは、令和5年(2023年)の法改正により、植物の輸入ルールは以前よりも大幅に厳しくなっています。
ただし、正しい知識を持って冷静に対応すれば、打てる手はあります。
この記事では、食品輸入の手続きに精通した行政書士が、植物検疫証明書がない場合の対処法を、初めての方にもわかりやすく解説します。
【この記事でわかること】
✔ 植物検疫証明書がないと、具体的にどうなるのか
✔ 証明書を「後から」取得・差し替えできる可能性があるケース
✔ 植物防疫法と食品衛生法の違いと、対象外になれる可能性
1.植物検疫証明書がないとどうなるのか
はじめに、厳しい現実をお伝えします。
日本に植物(野菜・果物・穀物・豆類などの食品を含む)を輸入する場合、輸出国の政府機関が発行した植物検疫証明書を添付することは、植物防疫法で定められた義務です。
証明書がない場合、原則として次のいずれかの処置がとられます。
・廃棄(貨物をその場で処分)
・返送・積み戻し(輸出国に送り返す)
どちらも輸入者にとって大きな損失です。しかも、貨物が保税倉庫で止まっている間も、保管料は日々発生し続けます。
また、植物検疫証明書が必要なのは商業用の大口貨物だけではありません。
国際郵便や手荷物で持ち込む少量の食品であっても、対象となる植物であれば同様に必要です。
まずは「植物検疫証明書がないと輸入は完了しない」という現状を正確に理解したうえで、次のステップに進みましょう。
2.あきらめる前に確認!
手元に植物検疫証明書がないからといって、すぐにあきらめる必要はありません。
輸出国の輸出者(メーカーやサプライヤー)と協力することで、解決できる場合があります。
① 輸出国の政府機関による「差し替え」や「再発行」
国際基準(ISPM 12)によれば、以下のような例外的な状況においては、輸出国の政府機関が証明書を差し替えたり、再発行したりすることが認められています。
・証明書の記載内容に誤りがあった場合
・証明書が紛失・損傷した場合
・送り先(仕向地)が変更になった場合
「証明書は発行したが、送付し忘れた」「書類を紛失した」という場合も、輸出者が現地の政府機関に申請し直すことで、正しい証明書を日本へ送付してもらえる可能性があります。
② 「発送後」に証明書を発行してもらえる条件
原則として証明書は発送前に発行されるものですが、以下の条件をすべて満たす場合に限り、発送後の発行が認められることがあります。
・積荷の安全性が、発送前の時点から保証されていること
・輸出国の政府機関が、発送前に必要な検査(サンプリング・処理など)を完了させていること
つまり、現地の政府機関が「発送前に検査を済ませており、病害虫がないことを確認済み」という記録を保有していれば、後から証明書を発行してもらえる可能性があります。
今すぐ輸出者に連絡し、現地のNPPO(植物防疫機関)に書類の発行や再送が可能か確認してもらうことが最優先です。
3.植物防疫法と食品衛生法の違い
ここで一度立ち止まって、確認しておきたいことがあります。
あなたが輸入しようとしている食品は、そもそも植物検疫の対象になっているでしょうか?
食品の輸入には、主に2つの法律が関わっています。それぞれ、チェックするポイントがまったく異なります。
【チェックする内容】
・植物防疫法:
管轄は農林水産省(植物防疫所)
日本の植物・農業に害を及ぼす病害虫がいないか
・食品衛生法:
管轄は厚生労働省(検疫所)
人が食べて安全か(細菌・残留農薬・添加物など)
生の野菜や果物、穀物などを輸入する場合は、この両方をクリアする必要があります。
一方、「製茶」や「缶詰」のように高度に加工された食品は、植物防疫法の対象外となる場合があります。
輸入しようとしているものが植物防疫法の対象かどうか、まずここを正確に確認することが、トラブル解消への近道です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
時間が経つほど損失は大きくなります。
植物検疫証明書のトラブルは、対応が遅れるほど保管料がかさみ、鮮度も落ち、廃棄リスクが高まります。
対処の優先順位は次のとおりです。
・輸出者にすぐ連絡する(証明書の差し替え・再発行を現地政府機関に依頼)
・輸入品が植物防疫法の対象かどうかを確認する(対象外なら手続きが変わる)
・専門家に相談する(対応方針が判断できない場合)
「輸出者への説明の仕方がわからない」「植物防疫所にどう対応すればいいかわからない」といった場合は、食品輸入の手続きに精通した専門家へご相談ください。
植物防疫所や税関への対応、輸出者へのアドバイスを通じて、あなたの商品を守るためのサポートをいたします。
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