日本酒、焼酎、食品をアメリカに輸出しようと検討する中で、アメリカの輸入者から「FDA登録」や「事前通知(Prior Notice)」という言葉を聞き、何から手をつければよいか戸惑いを感じているかたも多いのではないでしょうか。
この記事では、アメリカ輸出に不可欠なFDA対応の全体像をわかりやすく解説します。
貨物が米国の港や空港で止められるといった致命的なトラブルを未然に防ぎ、輸入者との交渉にも自信を持って臨めるようになります。
【この記事でわかること】
• アメリカ輸出における「FDA食品施設登録」の具体的な義務と方法
• 登録に不可欠な「米国代理人(U.S. Agent)」の役割と選定基準
• 貨物到着前に必須となる「事前通知(Prior Notice)」の期限と手続き
食品の輸出手続きに詳しい行政書士が、わかりやすくお伝えします。
1.食品施設登録と識別番号の準備
まず、日本酒、焼酎や食品をアメリカに輸出する場合、その製造、加工、梱包、または保管を行う施設は、必ず米国食品医薬品局(FDA)へ登録しなければなりません。
アメリカの法律では、米国内で消費される食品、飲料(アルコール飲料を含む)を扱う施設に登録を義務づけています。
この登録は、テロ攻撃や食品由来の疾病が発生した際に、FDAが迅速に情報収集し、施設へ通知を行うために必要なものです。
①登録のポイントとDUNSナンバー
施設登録はインターネットを通じて電子的に申請します。登録料としてFDAに支払う費用は無料です。
ここで最も注意すべきなのが、「固有施設識別子(UFI)」の提出です。
2020年10月以降、登録にはFDAが認める識別番号が必要となり、現在は「DUNS(ダンズ)ナンバー」が唯一の識別番号として認められています。
登録する施設の名称や住所が、DUNSナンバーの登録情報と一文字でも異なると、登録が受理されなかったり、手続きが止まったりする原因になります。
② 2年ごとの更新を忘れずに
FDA登録は、一度行えば永久に有効なわけではありません。
西暦の偶数年(2024年、2026年など)の10月1日から12月31日の間に、登録を更新する義務があります。
この期間に更新を怠ると、年明けに登録が失効(Expired)扱いとなり、せっかく輸出した商品が米国の税関で留置され、輸入が許可されないという事態に陥ります。
2.米国代理人 (U.s. Agent)
日本にある施設を登録する際、必ず指定しなければならないのが「米国代理人(U.S. Agent)」です。
米国代理人は、FDAと日本の施設の間で、日常的な連絡や緊急時の対応を行う窓口としての役割を担います。
①米国代理人の条件と法的効果
米国代理人には、以下の条件を満たす個人または団体を指名する必要があります。
• アメリカ国内に居住しているか、または事業所を持っていること
• 24時間365日、FDAからの緊急連絡に対応できる体制にあること
ここで非常に重要なのは、FDAが米国代理人に対して行った連絡は、日本の施設に対して直接行われたものと同じ法的効果を持つという点です。
例えば、FDAが米国代理人に書類を送付した場合、それは日本の施設に届いたものと見なされます。
そのため、信頼できる相手を米国代理人に選ぶことは、ビジネス上のリスク管理として極めて重要です。
多くの場合はアメリカの輸入業者がこの役割を引き受けますが、その場合、輸入業者が米国代理人としての就任に「同意」する手続き(確認プロセス)を完了させないと、施設登録番号は発行されません。
3.事前通知(prior Notice)
施設登録が完了しても、実際に出荷する際にもう一つ重要な手続きがあります。
それが「事前通知(Prior Notice)」です。
これは、アメリカに到着する貨物の内容を、事前にFDAへ電子的に報告する制度です。
FDAはこの情報を基に、貨物が到着する前にリスクを評価し、検査が必要かどうかを判断します。
①通知の期限を守る
事前通知には、輸送手段に応じた厳格な期限が設けられています。
• 船便の場合: 貨物がアメリカの最初の港に到着する「8時間前」まで
• 航空便の場合: 貨物が到着する「4時間前」まで
貨物の到着後に通知を行っても受理されず、貨物は港で差し止め(拒絶)の対象となります。
また、一度提出した事前通知の内容に変更が生じた場合(例えば製造者が変わった場合など)、修正はできず、以前の通知をキャンセルして新しく提出し直さなければなりません。
その際、新しい通知の時点から再び上記の期限(8時間前など)をカウントし直す必要があるため、到着直前の変更には細心の注意が必要です。
②確認番号を貨物に添える
事前通知がFDAに受理されると、「PN確認番号(Prior Notice Confirmation Number)」が発行されます。
この番号は貨物がアメリカに到着した際、FDAや税関が事前通知の受理を照合する際に必要となります。
スムーズな通関のために、この確認番号を運送業者や輸入者に事前に共有しておきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
FDAへの施設登録と事前通知は、アメリカ市場への「通行許可証」のようなものです。
1. 製造・保管施設の登録を完了し、DUNSナンバーを正確に紐付けること。
2. 信頼できる「米国代理人」を確保し、連絡体制を整えること。
3. 輸送手段ごとの期限を守って「事前通知」を行い、確認番号を取得すること。
この3つのポイントをしっかり押さえておけば、アメリカの輸入者からの質問にも慌てず対応でき、自信を持って輸出ビジネスを進めることができます。
FDA登録は原則としてすべて英語での申請となりますが、一つひとつの手順を正確に進めることで、誰でも完了させることが可能です。
手続きで不安がある場合は、専門の行政書士などに相談し、万全の体制で輸出に臨んでください。
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