初めての酒類製造免許申請!クラフトビールと地ビール、3つの違いを正しく知ろう

  

「自分たちの手で、こだわりのビールを造りたい!」という夢を持って醸造ビジネスへの参入を検討されている事業者のかたから、こんなご相談をいただきます。

 

「私たちが造りたいのは『クラフトビール』なのですが、世間でいう『地ビール』とは何が違うのでしょうか? 免許を申請するとき、どちらの名前で申請すればいいのですか?」

 

大きな投資を伴う事業の立ち上げだからこそ、法律上の正確な定義や免許の種類を最初に押さえておくことが、スムーズなスタートへの近道です。

 

この記事でわかること

・「クラフトビール」と「地ビール」の法的な正体

・自分の事業に必要な免許の品目(ビールか発泡酒か)の見分け方

・免許申請の最大のハードル「最低製造数量」のルール

 

酒類製造免許の申請に詳しい行政書士が、重要なポイントを3つに絞って解説します。  

 


1.法律に、クラフトビール、地ビールは無い


 

最初に押さえておきたいのは、日本の酒税法に「クラフトビール」も「地ビール」も、一切登場しないという事実です。あくまでも通称・流行語に過ぎません。

 

【「地ビール」誕生の背景】

1994年(平成6年)の酒税法改正により、それまで大手メーカーにしか認められていなかったビールの製造免許が、小規模醸造所でも取得できるようになりました。

この規制緩和を機に全国各地で誕生した小規模メーカーのビールが「地ビール」と呼ばれるようになりました。

 

【「クラフトビール」という呼び名へ】

その後、「手工芸品(Craft)」になぞらえ、製法や原料にこだわった「ビール職人(ブルワー)の手によるビール」という意味を込めて「クラフトビール」という言葉が広く使われるようになりました。

 

つまり「クラフトビールを造りたい」でも「地ビールを造りたい」でも、法律的には同じ「大手以外の小規模醸造所が造る個性的なビール」を指しており、大きな差はありません。

 

 大切なのは次のポイント、「法律上の正式な品目区分」を理解することです。

 


2.ビールか、発泡酒か


 

 たとえ「クラフトビール」と呼ばれる商品であっても、酒税法上の申請では「ビール」と「発泡酒」のどちらに当たるかを厳密に区別しなければなりません。

 

品目を誤ると、使える原料が変わったり、酒税率が変わったりするため、非常に重要な判断です。

 

【「ビール」として認められる条件(酒税法上)】

 

①原料:

麦芽、ホップ、水、および政令で定められた特定の物品(米・麦・とうもろこし・でんぷん・糖類など)のみを使用していること

 

②麦芽比率:

ホップと水以外の原料のうち、麦芽の重量が50%以上であること

 

③副原料の制限:

果実・コリアンダーなどの香味料を使う場合は、その総量が麦芽重量の5%以内であること

 

 

【「発泡酒」として申請が必要になるケース】

 

①麦芽比率が50%未満

 

②酒税法上の「ビール」に認められていない原料(ごま・そば・茶・コーヒーなど)を使用したもの

 

③果実などの副原料が麦芽重量の5%を超えるもの

 

 

最近のクラフトビールシーンでは、地域の特産品を贅沢に使った個性的な製品が増えています。

 

こうした商品の多くは法律上「発泡酒」に分類されますが、消費者の目線ではれっきとした「クラフトビール」として楽しまれています。 

 

どのようなレシピで、どんな個性を表現したいか——それによって申請すべき品目が決まります。

 

レシピが固まったら早めに専門家に確認することをおすすめします。

 


3.最低製造数量という大きな壁


  

新規参入のかたに最も強調してお伝えしたいのが、この「最低製造数量」のルールです。

 

これが酒類製造免許における最大のハードルと言っても過言ではありません。

 

製造免許を受けるには、その製造場で年間どれくらいの量を製造する見込みがあるかを申告する必要があります。

 

この数量が法律で定められた基準に達していないと、免許は下りません。

 

【最低製造数量の基準】

ビールの免許:

年間 60キロリットル(350ml缶 約17万本分)

 

発泡酒の免許:

年間   6キロリットル(350ml缶 約1.7万本分)

 

「ビール」の免許を取得するには、「発泡酒」の10倍の製造量が必要です。

 

初めて醸造に取り組む小規模事業者にとって、いきなり年間60klの製造・販売計画を立てるのは容易ではありません。

 

そのため多くのクラフトビール醸造所が、まずはハードルの低い「発泡酒」の免許からスタートし、設備や販路を拡大しながら事業を成長させていく戦略をとっています。

 

「本当は麦芽100%のビールを造りたいが、最初から年間60klは難しい……」という場合は、あえて発泡酒の免許で申請し、原料に少量の果皮などを加えることで、年間6kl〜という小規模からスタートするという選択肢もあります。

 

事業規模に合わせた賢い入り口の選び方が、長期的な成功につながります。

 

 

製造事業者として知っておくべきことを、3つお伝えします。

 

【製法の基礎知識】

 

ビール造りは、麦芽の粉砕・糖化・麦汁煮沸・酵母による発酵という複雑な工程を経て行われます。

酵母の種類によって「エール(上面発酵・常温に近い温度)」と「ラガー(下面発酵・低温熟成)」に大別され、多くのクラフトビールメーカーは華やかな香りが特徴のエールタイプを得意とします。

 

 

 HACCP(ハサップ)に基づく衛生管理の義務】

現在、すべての食品事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務付けられています。

 

小規模な酒類製造業者であっても、衛生管理計画を作成し、日々の清掃や充填時の温度管理などを記録に残さなければなりません。

 

安全・安心なお酒を届けることが製造者としての責任です。

 

 

【酒税率の改正にも注意】

ビールと発泡酒の税率は段階的に統一される方向にあります。

令和510月にも改正が行われており、常に最新の税制情報を確認しておくことが健全な経営に欠かせません。

  

まとめ


 いかがでしたでしょうか?

 

「クラフトビール」「地ビール」という言葉の響きに惑わされず、まずは次の2点を軸に自身の進むべき道を定めてください。

 

・年間何キロリットル造るのか(60kl6klか)

 

・どのような原料を使うのか(ビールか発泡酒か)

 

酒類製造免許の申請は、場所の要件・経営基礎の確認・技術的能力の証明など、非常に多くの書類と準備が必要です。

 

しかしそのハードルを越えた先には、あなただけの「最高の一杯」を世に送り出す感動が待っています。

 

申請書類の作成や、どちらの免許が自分に合っているかわからない場合は、ぜひ専門家の行政書士にご相談ください。あなたの夢を確実な「形」にするお手伝いをいたします。

 

 

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