これからお酒の製造という新しい事業に挑戦しようとしている経営者のかたはいらっしゃいませんか?
「自分たちの会社でこだわりのクラフトビールを造りたい」「地元の特産品を使った新しいお酒を世に出したい」という素晴らしい夢を持って、新しく株式会社を設立されたかたにとって、最初に立ちはだかる大きな壁が「酒類製造免許」の取得です。
日本でお酒を造るためには、酒税法という法律に基づき、税務署長から免許をもらう必要があります。
この免許がないのにお酒を造ってしまうと、重い罰則(10年以下の懲役または100万円以下の罰金)の対象となってしまいます。
この記事で、3つのことがわかります。
①「何が必要か」が明確になり、無駄な設備投資や時間ロスを防げる。
② 審査で見られる「急所」がわかり、スムーズな事業計画が立てられる。
③免許取得までのスケジュール感がわかり、オープン時期を正確に予測できる。
初めての申請で絶対に外せない大事なポイントを、3つに絞って解説していきます。
お酒の製造免許申請に詳しい行政書士が、かわりやすくお伝えします。
1.4つのハードル
まず最も重要なのは、免許をもらうための「要件」を満たしているかどうかです。
国税庁の審査では、主に「人」「場所」「お金」「技術」の4つの視点から厳しくチェックされます。
① 経営者や役員の「経歴とマナー」(人的要件)
会社そのものは新しくても、経営に携わる役員の皆様のこれまでの経歴が見られます。
例えば、過去3年以内に酒類免許を取り消されたことがないか、税金を滞納していないか、あるいは特定の重い犯罪歴がないかといった点です。
② 製造場の「環境」(場所的要件)
お酒を造る場所が、「取締り上ふさわしくない場所」であってはいけません。
具体的には、製造場と「酒場、旅館、料理店」などが同じ場所にある場合は原則として認められません。
もしレストランでお酒を提供したい場合は、壁や扉などで製造スペースを明確に区切る必要があります。
③ 会社の「経営状態」(経営基礎要件)
新設法人の場合、実績がない分、事業計画の健全性が非常に重要です。
税金を滞納していないことはもちろん、資本金がしっかり確保されているか、赤字が続いて経営が危うい状態にならないかが見られます。
また、今後の納税に備えた担保の提供能力があるのかが審査の対象です。
④ お酒を造る「腕と設備」(製造技術・設備要件)
「造ってみたい」という意欲だけでなく、実際に安全で高品質なお酒を継続して造れる能力があることを証明しなければなりません。
経験のある技術者を雇うか、研修を受けるなどして技術を確保する必要があります。
また、タンクや瓶詰め機などの必要な設備が整っていることも必須です。
2.最低製造数量のルール
次に知っておかなければならないのが、「どれくらいの量を造る予定か」というルールです。
酒類製造免許には「最低製造数量基準」というものがあり、免許をもらった後の1年間で製造する見込みの数量が、一定以上に達している必要があります。
・通常のルール:
年間6キロリットル(6,000リットル)以上
例えば果実酒(ワインなど)を造る場合、原則として年間6キロリットル以上を造る計画でなければ免許は下りません。
これは、750mlのワインボトルに換算すると、なんと年間8,000本分というかなりの量になります。
・「構造改革特区」によるルール緩和:
年間2キロリットル以上
「最初からそんなにたくさんは造れない」という小規模な事業者のための救済措置があります。
それが「構造改革特区」の活用です。
お住まいの地域が地方公共団体によって「特区」として指定されており、その地域の特産物を使ってお酒を造る場合、この基準が年間2キロリットル(ボトル約2,660本分)まで引き下げられます。
新設法人の皆様は、まずは自分たちが「年間どれくらいの規模でお酒を造り、売っていくのか」を、この基準を念頭に置いてしっかりシミュレーションする必要があります。
3.長い道のりとコスト
最後に、実際の手続きの流れと、どれくらいの時間と費用がかかるのかを把握しておきましょう。
① 審査には「4か月」かかる :
申請書類を税務署に提出してから、審査の結果が出るまでの「標準処理期間」は原則として4か月とされています。
書類に不備があって書き直しを求められたり、追加の書類を提出したりする期間は、この4か月には含まれません。
そのため、オープンの半年前には申請の準備を完了させておくのが理想的です。
② 支払う税金(登録免許税)は「15万円」 :
無事に審査を通過し、免許がもらえることになった際、「登録免許税」として免許1件につき15万円を納める必要があります。
これは申請手数料ではなく、免許をもらうための「登録料」のようなものです。
③ 提出する書類は膨大な量になる 申請書だけではなく、以下のような多岐にわたる書類を準備しなければなりません。
・製造場の図面(敷地や建物の配置図)
・事業の概要や収支の見込み
・資金の調達方法を証明する書類
・経営者の履歴書や法人の登記簿謄本
・製造技術を証明する書類
まとめ
いかがでしたでしょうか?
酒類製造許可(免許)の申請は、新設法人の皆様にとって非常にハードルの高い手続きですが、「正しい要件の理解」「適切な数量計画」「余裕を持ったスケジュール管理」の3つを抑えれば、決して不可能なことではありません。
免許を取得した後は、帳簿に製造の事実を細かく記録する義務(記帳義務)や、造ったお酒の量に応じた「酒税」の申告・納付といった義務も始まります。
もし「自分たちのケースでは特区を使えるのか?」「この事業計画で審査に通るのか?」と不安に思われたら、ぜひお気軽にご相談ください。
新しい挑戦が、おいしいお酒となって結実することを心より応援しております。
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