最近、日本の食品メーカーの皆様から、「東南アジアや中東など、イスラム教徒が多い国へ自社製品を輸出したい」というご相談を多くいただきます。
その際、必ずと言っていいほど高い壁として立ちはだかるのが「ハラル認証(ハラール認証、HALAL認証)」です。
「ハラル認証って、具体的に何をすればいいの?」「基準が厳しそうで、どこから手をつければいいかわからない」と頭を抱えていらっしゃる事業者様も多いのではないでしょうか。
この記事では、ハラル認証の基本的な考え方、輸出を成功させるために押さえておくべきポイントを、専門用語を極力使わずに、わかりやすく解説します。
ハラル認証という「難しそうな決まりごと」の全体像がすっきりと整理されます。
具体的には、以下のメリットがあります。
1.「何が良くて、何がダメなのか」の判断基準が明確になるため、商品開発や原料選定の無駄がなくなります。
2.輸出先の国ごとに異なるルール(義務化の動きなど)が理解できるため、輸出計画を具体的に立てやすくなります。
3.認証取得までの具体的な流れがわかるため、準備にかかる時間やコストの見通しが立ち、スムーズな海外展開が可能になります。
世界には現在約19億人のイスラム教徒(ムスリム)がいると言われており、これは世界の4人に1人に相当します。この巨大な市場に挑戦するための「ガイドブック」を手に入れましょう。
食品の輸出手続きにくわしい行政書士がわかりやすくお伝えします。
1.「ハラル」と「ハラーム」
まず、一番基本となる考え方を知っておきましょう。
イスラム教には、生活全般において「神によって許されていること」と「神によって禁じられていること」という明確なルールがあります。
このうち、「許されているもの」を「ハラル(ハラール)」、「禁じられているもの」を「ハラーム」と呼びます。
食品を輸出する際、ムスリムのかたが安心して口にできるのは、「ハラル」な食品だけです。
では、具体的に何が「ダメ(ハラーム)」なのでしょうか。
代表的なものは以下の通りです。
①豚に関連するものすべて
(肉だけでなく、豚由来のゼラチンやラード、エキスを含んだ添加物なども一切ダメです)。
②お酒(アルコール類)
③イスラムの教えに従った方法で処理されていないお肉。血液。
ここで注意が必要なのは、この「ハラル」のルールは、単に「豚肉を使っていない」という材料の話だけではないという点です。
「農場から食卓まで」、つまり、原材料の調達から、製造、保管、輸送にいたるまですべての過程で、ダメなもの(ハラーム)と混ざったり、触れたりしてはいけないというルールがあります。
例えば、同じ工場内で豚肉を使った製品を作っている場合、製造ラインを完全に分けたり、洗浄を徹底したりして、「混ざらない工夫」が厳格に求められます。
2.輸出先によって違う
次に大切なのは、ハラル認証には「世界共通のたった一つのマーク」というものは存在しない、ということです 。
輸出先の国や地域によって、ハラル認証の仕組みや重要度が異なります。
代表的な地域の傾向を見てみましょう。
①インドネシア
現在、最も注目すべきなのがインドネシアです。
新しい法律(ハラル製品保証法)により、インドネシア国内で流通する食品にはハラル認証の取得と表示が義務化されることになりました。
輸入品については、現時点では最長で2026年10月17日まで期限が延長されていますが、今後は認証がないと輸出できなくなる可能性が高いため、早めの準備が不可欠です 。
②マレーシア
政府機関(JAKIM)が認証を管理しており、世界で最も基準が厳しい国の一つと言われています。
マレーシアで認められていないマークを勝手につけて販売すると、法律違反として罰則を受けることもあります。
③中東諸国
原則として国内に流通しているものは、すべてハラルであることが前提です 。
そのため、特にお肉や肉関連製品については輸入時に厳しい検査や証明書の提出が求められます。
したがいまして、「どの国に輸出したいのか?」によって、取るべき認証の種類が変わることを覚えておいてください。
日本国内には、これらの外国政府から「うちの国の基準で審査していいですよ」と公認されている認証団体がいくつかあります。
まずは輸出先の国で認められている日本の団体を探すのが、最初の一歩となります 。
3.3つのステップ
「よし、ハラル認証を取ろう!」と決めたら、具体的にどのような手続きになるのでしょうか。
大きく分けて3つのステップがあります。
ステップ①:書類審査
まず、製品に使われているすべての原材料について、ハラルであることを証明する書類(ハラル証明書など)を集めます 。
調味料の中に含まれるごく少量の添加物についても確認が必要になるため、仕入れ先企業の協力が欠かせません 。
ステップ②:現場(工場)の検査
認証団体の検査員(通常、イスラム教の専門家を含む複数人)が実際に工場へやってきます 。
書類通りに原料が使われているか、製造ラインで他の非ハラル製品と混ざる恐れはないか、倉庫での保管状況や従業員の衛生管理は適切か、などが細かくチェックされます 。
ステップ③:登録と更新
審査に合格すると、晴れてハラル認証マークを表示して輸出できるようになります。
ただし、一度取れば終わりではありません。
インドネシアなどの例では、定期的に工場のチェックを受けたり、材料が変わるたびに報告したりする必要があります。
また、インドネシアへの輸出の場合は、取得した認証を現地の輸入業者などを通じて、インドネシアの政府機関(BPJPH)に登録する手続きも必要になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ハラル認証は、決して「日本のメーカーを排除するための嫌がらせ」ではありません。
ムスリムの消費者が安心して買い物をするための、いわば「品質保証の証」です。
ただし、率直に申し上げますと、認証取得には半年から1年程度の時間と、相応のコスト(申請料や工場の改修費など)がかかるのが実情です。
しかし、現在、農林水産省などはハラル認証の取得にかかる経費(分析費やコンサルタント料など)を補助する「輸出先国規制対応支援事業」などのサポートも行っています。
「自社の商品は対象になるのかな?」「この材料はハラルと言えるのかな?」と少しでも不安に思われたら、専門家にご相談されてはいかがでしょうか。
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