これだけは知っておきたい、食品輸出4つの保険

(※このページは2022年2月5日に更新されました) 

 

 

 

通関業者からの説明に、

「輸出ってこんなに保険あるの?」

 「保険、本当に必要?」

 とお困りではないでしょうか?

 

輸出とは遠い海外に出荷することです。

 

輸送途中も、現地に着いてからも、何が起こるわからないのが海外です。

 

万一のために、保険を掛けることをおすすめしております。

 

この記事でお伝えする食品輸出の4つの保険を、商品の流れ(期間)と保険で組み合わせると、以下のとおりです。

 

工場、保管倉庫、港頭倉庫

↓  

↓ 輸出FOB保険

輸出港(空港)での積込み

↓ 外航貨物海上保険

輸入港(空港)での荷降ろし

↓ 輸出PL保険

消費者

 

このほかに、商品とは別に、品代回収の保険として貿易保険があります。

 

それぞれの保険について、食品の輸出手続に詳しい行政書士がわかりやすくお伝えします。

 

 


輸出FOB保険


輸出FOB保険とは、工場、保管倉庫から積込みまでの輸送中および保管中のリスクを補償する保険です。

 

輸出の建値(価格に、運賃や外航貨物海上保険料を含むか含まないか)にはいくつかあります。

 

主なものとして

FOB(運賃着払い)

CFR(運賃元払い)

CIF(運賃元払い、かつ外航貨物海上保険料元払い)

があります。

 

どの建値であっても、輸出の積込み時までは輸出者が損害のリスクを負います。

この期間のリスクを補償するのが輸出FOB保険です。

 

外航貨物海上保険に比べて、掛けている輸出者は少ないようです。

 

しかし、事故が起きて、「積込み前に」原因があると判断された場合、この保険を掛けていないと保険金が出ない危険性があります。

 

保険期間は、工場、保管倉庫から搬出された時に始まり、船(航空機)に積込まれた時に終わります。

 

保険金額は、通常、インボイス金額(Invoice Value)の110%とします。

 

保険料率は、食品の種類・性質・梱包・輸送方法・輸送期間・保険条件等のリスク実態により保険会社と取り決めます。

 

 


外航貨物海上保険


通常、海上保険と言っておりますが、正式には、外航貨物海上保険といいます。

 

輸出では船や航空機を使いますが、国内輸送と比べて、輸送期間が長くなります。

 

その分、船の沈没・衝突、航空機の墜落といった事故の発生頻度(リスク)も高くなります。

 

これらのリスクを、損害保険会社に転嫁する仕組みが海上保険です。

 

 

輸出では、契約によって、輸出者又は輸入者が保険を掛けます。保険条件も契約で決めます。

 

契約で建値をFOB又はCFRとした場合には輸入者が掛け、CIFとした場合は輸出者が掛けます。 

 

運送時のリスクの種類や大きさを考えて、損害保険会社と補償の範囲などを決めます。

 

行き先によってリスクは異なります。

たとえば、紛争の多い国では、火災、盗難や破損のリスクは格段に高いですよね。

 

ですので、輸出者又は輸入者が、保険会社と相談して、いわば、カスタムメイドで海上保険を掛ける必要があります。

 

海上保険は輸送一回ごとに掛けます。 

 

なお、空輸で保険を掛ける場合も、「海上」保険と呼んでいます。

 

 


海外PL保険


食品の場合、輸出先で健康被害を及ぼす危険性があります。

 

その補償を考えた場合、原因、責任の特定は大切です。

 

しかし、時間がたち、遠く離れていると、特定するのは難しくなります。

 

輸出者、輸入者、どちらの責任かを明確に特定できない場合がほとんどです。

 

当事者間で解決できない場合、最悪、仲裁機関による調停や、裁判になります。

しかし、当事者双方で、時間、費用、労力がかかります。

 

そこで、このような健康被害のリスクを補償するのが海外PL保険(生産物賠償責任保険)です。

 

東京海上日動火災保険株式会社 三井住友海上火災保険などが取り扱っています。

 

輸出食品が原因となって発生した健康被害、損害賠償請求に対する示談交渉、訴訟費用等を補償します。

 

輸出先によっては、その国の法令で補償できない場合もあります。

しかし、リスク軽減にはとても心強い保険だと言えます。  

 

 


貿易保険


貿易保険とは、輸出取引で代金を回収できない場合に、損害の一定割合を受け取れる保険です。

 

具体的には、相手国の輸入制限等や、相手の倒産、債務不履行で回収できない場合です。

 

貿易(輸出)の場合、相手は海外にいます。

 日本と違い、海外では不安なこと、不安定なことがいつ起きても不思議ではありません。

 

 

どんなことが起きやすいでしょうか?

 

相手国と相手先(取引先)に分けてみます。

 

1.相手国

クーデタ、テロ、金利、為替相場が大きく変動、輸入制限や外国への送金規制など。

 

2.相手先(取引先)

支払いが遅れている、経営者や担当者が変わったようだが連絡がないなどの信用不安。

 

 

貿易保険では、

1.を「非常危険」=相手国のリスク(カントリー・リスク)

 

2.を「信用危険」=相手方(取引先)のリスク

 

に分けて、それぞれ保険対象としています。

 

 

具体的には、以下の損害を想定しています。

 

・非常危険のため、契約済みの商品を船積み(輸出)できない

 

・非常危険のため、輸出済み代金を回収できない

 

・信用危険のため、契約済みの商品を船積み(輸出)できない

 

・信用危険のため、輸出済み代金を回収できない

 

このような損害について保険金を受け取れるのなら、輸出者は、ひと安心かもしれません。

 

 

一方で、貿易保険をビジネスにしている保険会社は、多大の保険金支払いのリスクを負います。

 

特に、非常危険(カントリー・リスク)については保険金がいくらになるかわかりません。

天文学的な金額になるかもしれません。

 

そこで、保険会社は、「保険金を払える、払えない」の線引きをしています。

具体的には、相手国、相手の会社、契約の内容などについて、一定の基準を設定しています。

 

保険会社がすべての危険(リスク)について保険金を払うわけではないことに注意が必要です。

 

保険会社によっては、貿易保険を、輸出信用取引保険、海外輸出債権保証サービス、売掛保証といったりします。同様の保証内容とご理解ください。

 

公的機関の貿易保険会社と民間の貿易保険会社をご紹介します。

 

 独立行政法人日本貿易保険(NEXI)は、日本政府が100%出資の公的機関です。

 

非常危険(カントリー・リスク)、及び信用危険に対する回収リスク対応を行っております。

 

相手国政府との交渉が必要な場合、その対応もします。

 

メリットは、貿易保険会社の中では、最も充実したサポートをしていることです。

 一方、デメリットは、保険対象とする会社(輸入者)の審査基準が厳しいことです。

 

現地の上場企業くらいの規模でないと保険対象とならないと思われます。

 つまり、大企業向けの保険と言えます。

 

 

つぎに、民間の保険会社には、以下のような会社があります。

 

大企業向けだけではなく、中小企業でも利用可能な幅広いニーズに対応しています。

 

東京海上日動火災保険株式会社

 

イー・ギャランティー株式会社

 

株式会社ラクーンホールディングス

 

リスクモンスター株式会社

 

 

伝統的な海上保険に比べると、貿易保険は後発です。

 しかし、各社注力しているのが貿易保険です。

 サービス内容が今後更に充実すると期待されています。

 

 


まとめ


 いかかでしたでしょうか?

 

まとめますと、以下のとおりです。

 

商品に対する
1.輸出FOB保険

2.外航貨物海上保険

3.輸出PL保険

 

代金支払いに関する

4.貿易保険

 

たしかに保険は費用です。

しかし、健康被害が起こりうる食品輸出については、必要経費と言えるのではないでしょうか?

 

「転ばぬ先の杖」としてご検討されることをおすすめします。

 

 

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