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気をつけたい食品輸入買付けで大事な3つのこと

(※このページは2022年2月8日に更新されました)

  

おもしろい輸入食品を見つけたので、自社で輸入してみたい。

 

「でも、輸入って、めんどくさそう」

「どうしたら輸入できるの」

と、お困りではないでしょうか?

 

食品の輸入は誰でも簡単にできるという印象があるかもしれません。

 

たしかに、サンプル程度でしたら、「確認願い」という特例で個人の趣味の範囲で輸入できます。

 

しかし、ビジネスで食品を輸入しようすると一変します。

 

食品の輸入は、食品業界の「憲法」である食品衛生法を頂点とする法令で、原則、禁じられています。

 

例外として、法令で定めた基準をクリアした食品だけが、輸入を許可される仕組みなのです。

 

日本へは到着したものの、基準をクリアできないと輸入できません。

 

厚生労働省から廃棄または積戻の指示が出ます。

 

また、これらの指示が出ますと、厚生労働省のホームページに公表されます。

 

「違反事例」として、輸入会社名が公表されます。

 

公表されますと、会社のイメージダウンになりかねませんので、注意が必要なのです。

 

公表制度があることからも、食品輸入は「許可制」であることが理解いただけると思います。

 

厚生労働省のホームページの輸入違反事例

 

 

この記事では、長期取引を前提に食品の輸入買付けで気をつけるべき3つのことがわかります。

  

食品商社に35年勤務し、食品の輸出輸入を専門とする行政書士が、わかりやすくお伝えします。 

 


まず、メーカーを知ること


長期的なビジネスをしようと思った時に最初にすべきは、メーカー(仕入先)を調べることです。

国内ビジネスでも同じです。

 

相手を知らなければ、ビジネスできませんよね。

 

でも、「調べるといっても相手は海外だし、どうしたらいいの?」と思われるかもしれません。

 

日本の信用調査会社に依頼することで、概要を知ることができます。

 

ただし、調査費用(概算2~3万円)と日数(2~3週間)はかかります。

 

「なんなら、相手のホームページで十分では?」と思われるかもしれません。

 

しかし、ホームページには、売上高、利益といった財務情報は掲載されていません。

 

誤解を恐れずに言えば、ホームーページには良いことしか書かれていません。

 

長期ビジネスをするうえで、相手が安定的に利益をあげていないと困ります。

 

突然倒産で欠品しては日本の販売先に迷惑をかけてしまいますから。

 

一方、調査会社は、海外の調査会社と提携しています。

相手の国や会社によっては、税務申告の内容まで知ることができます。

 

主な調査会社は次のとおりです。

 

株式会社帝国データバンク

 

株式会社東京商工リサーチ

 

リスクモンスター株式会社

 

 

相手の会社の概要を知ったあとは、日本向けの輸入総代理店が現地にあるかを調べます。

 

輸入総代理店のことは、会社調査書には載っていません。

 

メールや電話で問い合わせる必要があります。

 

輸入総代理店があるなら、「そこにコンタクトしてください」という返答になると思います。

 

すでに輸入総代理店があるようでしたら、そこから「国内」仕入するしかありません。

 

この時点で、自社での輸入はできないと考えてください。

 

一方、ブランド品などでは、代理店を通さない「並行輸入」があります。

 

しかし、食品の場合、輸入通関時に、メーカー発行の証明書が必要となります。

並行輸入では、この証明書は入手できませんので、輸入できません。

 

 

日本向け輸入総代理店がない場合に、自社で輸入できることになります。

 

ただ、相手も、輸入者がどんな会社か知りたいと思っています。

 

代金支払能力は大丈夫か?どのような販路をもっているのか?長期ビジネスできるか?などです。

 

ですので、お互いの会社紹介を重ねることで、信頼関係を深めることが大事です。

  

 


つぎに、商品を知ること


メーカーとの信頼関係を深めた上で、商品データ、価格表を入手して商品選定を行います。

 商品選定の大前提は、輸入したあと、長期在庫にならずに売り切れるか?の見極めです。

 

食品の場合、原則、賞味期限の表示が必要になります。

 

賞味期限とは、消費者が食べ終わる時点までです。

 

御社から消費者に販売するまでの期限ではありません。

 

ですので、賞味期限から消費者での保管期間を逆算して、余裕をもって売り切ることが大切です。

 

賞味期限を過ぎますと、商品価値はゼロになると言っても過言ではありません。

 

賞味期限を過ぎたからといって、食べて健康被害が出るとは限りません。

 

しかし、お客様は賞味期限を過ぎた商品は定価では買いません。

 

 

商品を選んだら、次は商品の中身の調査です。

 

具体的には、使用原材料、添加物、残留農薬が衛生基準をクリアしているかを調べます。

 

衛生基準に照らして、ひとつひとつ確認します。

 

クリアできないと輸入できませんので、慎重にチェックする必要があります。

 

メーカーによっては、輸出先ごとに、その国の基準に合致するように、食品の中身を変えています。

 

ですので、入手した商品データが日本向けなのかも、確認しておく必要があります。

 

ほかの国向けの商品が間違って日本に輸出されてしまうことがあります。

 

そうなると、衛生基準違反で輸入できなくなり、「違反事例」として公表されてしまいます。

  

 


そして、輸入手続きを知ること


 完売できそうだ、中身も問題なさそうだと思っても、まだ、買い付けてはいけません。

念には念を入れます。

 

衛生基準に合致するかを検査する検疫所(厚生労働省の現場機関)で相談することをおすすめします。

 

検疫所では、任意の「事前相談」に応じています。

 

相談は無料ですが、現物サンプルと商品データ(書面)が必要です。

 

相談の申込みは書面で行います。

 

しかし、相談結果の伝達は、口頭のみです。

 

書面でほしいところですが、言質を与えたくないのでしょう、口頭のみです。

 

また、「問題ないと思われる」との結果をもらっても、本貨物の時の「免罪符」にはなりません。

 

本貨物輸入時に、改めて検査を受ける必要があります。

 

相談としては少し物足りないと思われるかもしれません。

 

しかし、違反「予防」の観点でアドバイスいただけますので、事前相談すべきです。

 

「現物サンプルはどのように入手するの?」という疑問が生じるかもしれません。

 

少量(少額)でしたら、国際郵便(EMS)で、上記の「確認願」を利用して 輸入できます。

 

この事前相談後に、やっと買付交渉、契約書作成となります。

 

輸入手続きをまとめますと、次のとおりです。

 

1.仕入先、商品選定

2.在庫とならずに売り切れるか、中身が衛生基準をクリアしているか確認

3.検疫所で事前相談

4.相談で中身が問題ないことを確認後、仕入先と買付交渉、契約

 

面倒だと思われるかもしれませんが、「違反事例」予防のため、行っていただきたいと思います。

 

 


まとめ


いかがでしたでしょうか?

 

買い付け前にすべきことは以下のとおりです。

 

1.メーカー(仕入先)を知ること

 

2.商品を知ること

 

3.輸入手続きを知ること

 

メーカー、商品選定から輸入、事前相談まで、一貫したサポートができる専門家に、「伴走」を依頼されることをお勧めします。

 

 

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