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食品輸入で避けられない異物混入クレーム 3つの対策

(※このページは2022年2月11日に更新されました)

 

 

 

販売先から異物混入クレームの連絡。

 

「またか」と思いながら、始末書の作成と現品回収に奔走していないでしょうか?

 

輸入食品でなぜ異物混入はなくならないのでしょうか?

 

じつは、輸入食品の場合、「異物」の定義自体が海外の仕入先メーカーと一致していない場合が多いのです。

 

つまり、相手は、異物を異物と認めていないので、議論すらできないのです。

 

この記事では、輸入食品「永遠の課題」である異物混入対策がわかります。

 

輸入食品の仕入、販売に詳しい食品行政書士が、わかりやすくお伝えします。

  

 


異物クレームとは


たとえば、ファミレスでのできごと。

 

注文したメニューに髪の毛が混入していたら、お客様は店にクレームします。

 

お店は仕入先の問屋や商社にクレームして、返品や再発防止を求めます。

再発防止が期待できないと、最悪、取引中止となります。

 

商品が国産品の場合、この流れで進むことが多いと思います。

 

日本では、人髪も虫も異物です。

 

しかし、輸入品の場合、そうならない事情があるのです。

 

じつは、海外メーカーは、人髪、虫などの「柔らかいもの」は、「異物」とは認めません。

 

口の中を切るガラスとか、歯を折るサクランボの種とか、人体に危害を及ぼすものだけを「異物」と認めます。

 

つまり、日本と海外で、異物の「定義」が異なるのです。

 

また異物混入対応の商習慣も異なります。

 

 上の例で言えば、仕入先が輸入者であった場合、販売先(ファミレス)からはクレームを提起されます。

 

一方、海外メーカーに対してはクレームを転嫁できないという厳しい立場に追い込まれるのです。

 

このギャップが、輸入食品永遠のテーマである異物混入問題なのです。

 

仕入先メーカーと、契約書で異物を「含まない」ことを合意したとします。

 

しかし、仕入先メーカーの考えは、異物とはあくまで「人体に危害を与える」硬質異物です。

髪の毛、虫といった軟質異物は異物ではありません。

 

軟質異物まで「異物」に含めようとすると、仕入契約を締結できないと思います。

 

一方、日本の販売先との契約では、軟質異物を含め「異物を含まない」と書かない限り、販売できません。

 

また、輸入者は仕入れて、転売するだけです。

通常、自ら商品を加工することはしません。

 

三者それぞれの事情があるなかで、どうしたらよいのでしょうか?

 

3つの対策をお伝えします。

 

 


1.仕入先メーカーとの関係を強化すること


残念ながら、これなら万全!と言える対策はありません。

 

しかし、海外の仕入先メーカーに対して、軟質異物を含めた日本の異物意識を知ってもらう方法はあります。

 

たとえば、仕入先メーカーに定期的に来日してもらいます。

 

そして、スーパーなどの販売先の営業部門、品質部門と異物対策会議を持つことが有効です。

 

場合によっては、製造現場の社員を日本での異物研修のために短期間受け入れます。

販売先の「声」を実際に聞いてもらうのです。

 

また、反対に、仕入先メーカーを出張訪問することも有効です。

製造現場の社員と一緒に、製造ラインのどこで異物が混入しやすいか、どうしたら防げるかを考えます。

 

 このようにして信頼関係を強くします。

 

すると「異物なし」を保証させるのは無理でも、「努力目標」としてなら規格設定するよと譲歩させることができます。

 

大きな進歩だと言えます。

  

 


2.日本で再選別すること


異物混入クレームが発生してしまった場合、輸入後、日本で商品を再選別する方法があります。

 

商品を開封して、目視、または機械で異物を選別除去し、再包装します。

 

日本人の目と手は優秀ですし、選別機械も優秀ですので、高い精度で異物除去ができます。

 

ただし、商品によっては、再選別の向かないものもあります。 

 

たとえば、冷凍食品は、いったん解凍すると商品価値ゼロとなってしまいます。

 

このような商品は解凍して目視選別することはできません。

 

また、小売用に包装された商品は、開けるわけにはいきませんので、目視選別はできません。

 

一方、常温品の乾燥フルーツとかアーモンドなどのナッツは再選別に向く商品です。

 

留意点としては、選別費用(おもに人件費、国内配送費)が商品1kgあたり数百円かかることです。この費用をかけても採算が合うかを検討する必要があります。

 

   


3.特約の損害保険を掛けること


海外メーカーが一生懸命努力しても輸入食品の異物混入事故はなくなりません。

 

そこで、損害保険会社では「特約」保険で、異物混入の損害を補填しています。

 

損害保険会社は輸送区間の損害に対して補償するのが原則です。

 

しかし例外として、補償範囲を異物混入まで拡大させるのです。

 

具体的には、東京海上日動火災保険などの損害保険会社と打ち合わせることとなります。

 

ただし、特約はホームページなどで公開していない保険会社が多いため、個別に相談することが必要です。

 

 損害事故が発生したときに補償を受けられるのはありがたいことではあります。

 

 しかし、商売を考えた場合、「損害保険ありき」と考えるのは安易だ思います。

 

クレーム事故が起きたときに、お客様が望むのは代替品です。

商売ですので、欠品は起こしたくありませんね。

 

損害保険は、どうしても金銭補償の問題が残ってしまった場合の最後の手段だとお考えください。

 

  


まとめ


いかがでしたでしょうか?

 

まとめますと、以下のとおりです。

 

1.日本と海外ではそもそも異物の定義が違う、異物に対する商習慣も違う

 

2.異物クレーム対策として

 1)仕入先メーカーとの信頼関係構築が重要

 2)日本での再選別する方法もある

 3)損害保険は最後の手段

 

 

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