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食品輸入で避けられない異物混入クレーム 3つの対策

 

販売先から異物混入クレームの連絡。

 

「またか」と思いながら、始末書の作成と

現品回収に奔走されていないでしょうか?

 

輸入食品でなぜ異物混入はなくならない

のでしょうか?

 

じつは、輸入食品の場合、「異物」の

定義自体が、海外の仕入先メーカーと

一致していない場合が多いのです。

 

つまり、相手は、異物を異物と認めて

いないので、議論すらできないのです。

 

この記事では、輸入食品の「永遠の課題」

である異物混入対策がわかります。

 

輸入食品の仕入、販売に詳しい

食品行政書士が、わかりやすく

お伝えします。

  

 


1.異物クレームとは


たとえば、ファミレスでのできごと。

 

注文したメニューに髪の毛が混入していたら、

お客様は店にクレームします。

 

お店は仕入先の問屋や商社にクレームして、

返品や再発防止を求めます。

 

再発防止が期待できないと、

最悪、取引中止となります。

 

商品が国産品の場合、この流れで

進むことが多いと思います。

 

日本では、人髪も虫も異物です。

 

しかし、輸入品の場合、そうならない

事情があるのです。

 

じつは、海外メーカーは、人髪、虫などの

「柔らかいもの」は、「異物」とは

認めません。

 

一方で、口の中を切るガラスとか、

歯を折るサクランボの種とか、

人体に危害を及ぼすものだけを

「異物」と認めます。

 

つまり、日本と海外で、異物の

「定義」が異なるのです。

 

また異物混入対応の商習慣も異なります。

 

 上の例で言えば、仕入先が輸入者

であった場合、販売先(ファミレス)

からはクレームが提起されます。

 

一方、海外メーカーに対しては

クレームを転嫁できないという

厳しい立場に追い込まれるのです。

 

このギャップが、輸入食品永遠の

テーマである異物混入問題なのです。

 

たとえば、仕入先メーカーと、

契約書で異物を「含まない」ことを

合意したとします。

 

しかし、仕入先メーカーの考えは、

異物とはあくまで人体に危害を与える

「硬質」異物です。

髪の毛、虫といった「軟質」異物は、

異物ではありません。

 

軟質異物まで「異物」に含めようと

すると、仕入先メーカーの合意を

取り付けることができずに、

結果、仕入契約を締結できないと思います。

 

一方、日本の販売先との契約では、

軟質異物を含め「異物を含まない」と

書かない限り、販売できません。

 

輸入者は仕入れて、転売するだけです。

通常、自ら商品を加工することはしません。

 

①仕入先メーカー、②輸入者、③販売先の

三者それぞれの事情があるなかで、

どうしたらよいのでしょうか?

 

3つの対策をお伝えします。

 

 


2.仕入先メーカーとの関係を強化すること


残念ながら、これなら万全!と言える対策は

ありません。

 

しかし、海外の仕入先メーカーに対して、

軟質異物を含めた日本の異物意識を

知ってもらう方法はあります。

 

たとえば、仕入先メーカーに定期的に

来日してもらいます。

 

そして、スーパーなどの販売先の営業部門、

品質部門と異物対策会議を持つことが

有効です。

 

場合によっては、仕入先メーカーの

製造現場の社員を、日本での異物研修の

ために短期間受け入れます。

 

販売先の「声」を実際に聞いてもらうのです。

 

また、反対に、仕入先メーカーを

出張訪問することも有効です。

 

仕入先メーカーの製造現場の社員と一緒に、

製造ラインのどこで、どのような異物が

混入しやすいか、どうしたら防げるかを

考えます。

 

 このようにして信頼関係を強くします。

 

そうすると、「軟質の異物なし」を

保証させるのは無理だとしても、

「努力目標」としてなら規格設定するよと

譲歩させることができるかもしれません。

 

大きな進歩だと言えます。

  

 


3.日本で再選別すること


異物混入クレームが発生してしまった場合、

輸入後、日本で商品を再選別する方法が

あります。

 

商品を開封して、目視、または機械で

異物を選別除去し、再包装します。

 

日本人の目と手は優秀ですし、選別機械も

優秀ですので、高い精度で異物除去が

できます。

 

ただし、商品によっては、再選別が

向かないものもあります。 

 

たとえば、冷凍食品は、いったん

解凍すると商品価値ゼロとなってしまいます。

 

このような商品は解凍して目視選別する

ことはできません。

 

また、小売用に包装された商品は、

開けるわけにはいきませんので、目視選別は

できません。

 

一方、常温品の乾燥フルーツやアーモンド

などのナッツは再選別に向く商品です。

 

留意点としては、選別費用(おもに人件費、

国内配送費)が商品1kgあたり数百円かかる

ことです。

 

この費用をかけても採算が合うかを検討する

必要があります。

 

   


4.特約の損害保険を掛けること


海外メーカーが一生懸命努力しても、

輸入食品の異物混入事故はなくなりません。

 

そこで、損害保険会社では「特約」保険で、

異物混入の損害を補填しています。

 

損害保険会社は、輸送区間の損害に

対して補償するのが原則です。

 

しかし、例外として、補償範囲を

異物混入まで拡大させるのです。

 

具体的には、東京海上日動火災保険などの

損害保険会社と打ち合わせることとなります。

 

ただし、特約はホームページなどで

公開していない保険会社が多いため、

個別に相談することが必要です。

 

 損害事故が発生したときに補償を受けられる

のはありがたいことではあります。

 

 しかし、商売を考えた場合、

「損害保険ありき」と考えるのは

安易だ思います。

 

クレーム事故が起きたときに、お客様が

望むのは代替品です。

 

商売ですので、欠品は起こしたく

ありませんね。

 

損害保険は、どうしても金銭補償の問題が

残ってしまった場合の最後の手段だと

お考えください。

 

  


まとめ


いかがでしたでしょうか?

 

まとめますと、以下のとおりです。

 

1.日本と海外では、そもそも異物の

定義が違う、異物に対する商習慣も違う

 

2.異物クレーム対策として

 1)仕入先メーカーとの信頼関係構築が重要

 2)日本での再選別する方法もある

 3)損害保険は最後の手段

 

 

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